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組織文化も社会的に構築される!?:出口(2004)論文レビュー

今回は、組織文化をどのように理解するべきかという目的で為されたレビュー論文を取り上げます。

出口将人(2004)「組織文化にかんする根本的問題」『オイコノミカ』40(3・4), 43-60

組織文化はそのテーマ自体が曖昧で捉え難いものです。研究領域としても混沌とした状況であるために、著者は分類を試みています。

組織文化研究を分類する三つの基準

第一は組織観および組織文化観に関する基準です。ここでは、先日取り上げた坂下(2002)と同様に、機能主義的な組織観/組織文化観に依拠した研究群と解釈主義的な組織観/組織文化観に依拠した研究群とに切り分けています。

第二の基準は、データの性質に関する基準であり、定量的なデータか定性的なデータかという分類となります。

第三は研究の目的に関する基準です。組織文化と組織内外の環境との整合関係を明らかにするもの、組織文化の創造・変革のためのモデルや方法論を提示するもの、組織のメタファーとしての組織文化を解釈するもの、というように分かれます。

伝統的な組織文化研究から新しい組織文化研究へ

従来は、機能主義的な組織観/組織文化観を基にした研究群が主流でした。それに対して、解釈主義的なアプローチによる研究がクローズアップされるようになったとされます。その流れにあるものとして二つのものが取り上げられています。

(1)マルチ・パラダイム・アプローチ

マルチ・パラダイム・アプローチはMartin & Meyerson(1987)を嚆矢とするもので、「組織文化のさまざまな側面に注目し、互いに競合するさまざまなパラダイムを適切に使い分け、併用する」ものです。この背景にあるのがBerger & Luckman (1966)の社会構築主義であると指摘されています。

骨太な理論を勉強しておくと、忘れた頃に役立つものですね。以前、まとめたものを(自分の備忘のために)貼っておきます。

Martin & Meyerson(1987)が提示した組織文化に関する三つのパラダイムは以下の図の通りです。組織文化を理解するためにはこれらのパラダイムを全て使わなければならないとされています。

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(2)ツール・キットとしての文化

二つ目はSwidler (1986)により提示されている組織文化をツール・キットとして捉えようとするものです。著者は同論文から「文化とは、そこから行為者が一連の行為を形成するためにさまざまな断片を運び出す『ツール・キット』、もしくはレパートリーのようなもの」という箇所を引用しています。

ただ、社会学的・文化人類学的な意味での文化に関する研究であるため、(1)ほどは浸透していないというのが本論文執筆時の状況のようです。その後にどうなっているかは今後見ていきたいと思います。

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