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【論文レビュー】異動後における役割説明が社員の適応感を高める!:荒井(2018)

異動の季節ですね。今回は、2018年にWEB公開されているリクルートマネジメントソリューションズさんの「異動決定時のコミュニケーションの効果を探る」という記事を取り上げます。

記事のリンクはこちら↓
https://www.recruit-ms.co.jp/research/study_report/0000000651/

異動が多い=異動に適応しやすくなるという誤解

日本の大企業では、必ずしも社員の現時点での経験や専門性と合致しない部門への定期異動が行われるケースが多くありました。その功罪はここでは問うつもりはありませんが、ジョブ・ローテーションが定常的に行われる環境では、異動が多いなら異動に適応しやすくなるというロジックが成り立っていたような印象があります。

しかしながら、海外でのわりと古い先行研究では異動回数は異動後の適応のしやすさに影響しないというものもあります。

さらに現代においては、専門性の醸成の重要性が謳われるようになり、部門を超えた定期異動を行う企業も減ってきています。そのため、異動を取り巻くコミュニケーションの重要性は高まってきており、本記事は重要な示唆を与えてくれるものなのです。

異動にガッカリしている社員にも対策はある!

異動前の説明や異動後の説明といった組織コミュニケーションが重要だというのは、組織で働いていて異動を経験した方からすると「そりゃそうだよね」というレベルの気づきに留まるでしょう。本記事で興味深いのは、異動後の役割説明による2つの調整効果です。

荒井(2018)

基礎的な統計を学んでいる方には説明不要だと思いますが、上の図は、異動前の活躍見込みが低いと個人で思っている異動者であっても異動後の組織による役割説明がなされると異動後に適応できそう!という感覚を高めることを支援できる、という関係性を明らかにしています。

専門志向の社員に対する異動後の説明も大事!

専門志向性の高い社員は、異動をネガティヴに受け取るということを本記事では明らかにしています。1%水準で異動前と異動後のいずれにおいてもネガティヴな作用を与えていることが明らかになっています。

ところが、異動後に組織から役割説明を行うことが、そのネガティヴな影響を緩和するという調整効果を持つことも明らかになりました。

荒井(2018)

専門性が重視されることで旧来の部門を超えたジョブ・ローテーションが難しくなっている現代においては、この知見は非常に示唆的に思えます。

おまけ

異動に関する読みやすい参考文献としては以下があります。

上の本の私の簡単な感想も載せておきますので、ご関心ありましたらご笑覧ください。


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