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【読書メモ】統計に苦手意識を持つ人が、統計が得意な人に相談するための本:『統計嫌いのための心理統計の本:統計のキホンと統計手法の選び方』(白井祐浩著)

新入社員の時に、周囲の先輩に相談しようとしても、的を射た質問ができずに、「そこを知りたいわけではなかったんだけどなぁ」という経験を持つ方も多いのではないでしょうか。ある事象を相談するためにはその事象についてある程度知っていないと相談できない、という逆説的な状況は世の中によくあるものです。本書は、心理統計に苦手意識を持っているのだけれども(が故に?)、うまく質問できないなーと思っている方にとって大変参考になる一冊です。

言葉を正しく用いる

私もよくやりがちなのですが、初心者特有の問題として、フワッと理解しているレベルで済ませている言葉を用いてしまうという問題があります。そのため、言葉を誤用してしまったり、適切な文脈ではない言葉を用いてしまうことで、言いたいことが伝わらないという結果に陥ってしまうことがままあります。

本書の第一章では、心理統計における言葉を初歩から具体的に解説してくれています。そのため、正しい言葉を選んで正しく使うようにすることができ、心理統計が得意な方にきちんと伝えることができるようになる確率を高められそうです。

独立変数と説明変数の相違

たとえば、本書にある言葉の説明で面白いなぁと思ったのが独立変数と説明変数との使い分けについてです。正直、本書を読むまでの私は、独立変数=説明変数、従属変数=目的変数、という理解で言葉を用いていました。さっとググってみると私の以前の理解でも合っているようにも思えるので、以下で述べることはどちらが正しいという話ではありません。

本書では、独立変数と従属変数は、実験群と統制群のように異なるグループ間で結果の違いを明らかにするデザインで用いられる変数とされています。それに対して説明変数と目的変数は、因果関係など影響関係の矢印を明らかにするデザインで用いられる変数とのことです。

繰り返しになりますが、独立変数と説明変数は違うのか同じなのかを論議したいのではなく、このような認識で捉えることもできるというレベルで理解しておくと良いかもしれません。さまざまな論文での両者の使い分けを見てみると、私自身は本書での切り分けは納得感があるなと感じました。論文の著者が使う言葉に興味を持って論文を読んでみるのも面白いかもしれません。


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