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【読書メモ】心理測定尺度とは何か?:『質問紙調査と心理測定尺度』(宮本聡介・宇井美代子編)

本書の第4章「心理測定尺度の概要」では、基礎的なところから心理測定尺度について解説してくれています。心理測定尺度とは、「人間のある心理的特徴をとらえるための「物差し」」(p.61)のことを指します。心理測定尺度を考える上で最も大事なことは、信頼性妥当性です。最も大事という言い方は言い過ぎかもしれませんが、少なくとも論文では必ず出てくるキーワードです。それぞれに関する説明をまとめてみます。

尺度の信頼性

心理統計初心者の私としては、信頼性といえばクロンバックのαの一択でしょ!という感じなのですが、本書を読むとそんなことはないという基礎的な解説が為されています。

信頼性を推定するためには、繰り返し測定しても安定したデータが得られるかどうかを検討する安定性に関するものがあり、再テスト法や並行テスト法が挙げられます。他方、一貫性(内的整合性)を検討する方法として折半法があり、「可能なすべての折半法を考慮し、一般化した信頼性係数として、クロンバックのα係数を算出する方法」(69頁)があります。つまり、折半法を発展させたものがクロンバックのα係数を算出する方法があるという関係性です。

尺度の統計的妥当性

本書では統計的妥当性を①基準関連妥当性②構成概念妥当性の二つに類別して説明されています。

①基準関連妥当性

基準関連妥当性では、尺度の妥当性を検討するために、外的な基準との関連を検討する。
p.71

基準関連妥当性には、併存的妥当性予測的妥当性があります。併存的妥当性は、ある尺度が測定しようとしている心理的特徴を示す他の外的基準について同じタイミングでの調査で検証される妥当性です。他方の予測的妥当性は、外的基準が同じタイミングではなく将来において存在するかどうかを検証する妥当性です。

②構成概念妥当性

構成概念妥当性では、尺度の妥当性を検討するために、他の心理的特徴との関連を理論的に予測し、実際にデータを収集して、予測通りの関連がみられるかどうか検討する。
p.72

構成概念妥当性には、収束的妥当性弁別的妥当性とがあります。ある尺度が測定しようとしている心理的特徴と他の心理的特徴との関連を理論的に予測する上で両者に関連がある(負の相関も含む)と推定される場合には収束的妥当性の検証を行います。他方、両者の関連がないと推定する場合には弁別的妥当性の検証となります。


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