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【論文レビュー】上司がメンバーを褒める効果とは?:上田(2016)

上司による褒める行動を経営学ではコンプリメント行動と呼びます。本論文ではこのコンプリメント行動について、上司自身による行動認識(上司の部下コンプリメント行動)、メンバー側から見た認識(部下コンプリメント行動の認知)、結果としての影響(部下コンプリメントの影響)、の三つに関する測定尺度を開発し、それぞれの関係性を明らかにしています。

上田敬. (2016). 上司の部下コンプリメントとその影響に関する研究. 経営行動科学, 29(2_3), 61-75.

因子分析の結果

冒頭で述べた3つの概念それぞれについて探索的因子分析をされていて、結果としてそれぞれ4因子構造であることを結論づけています。

上司の部下コンプリメント行動

「テレビ番組など他愛ない話題で部下と雑談する」など6設問からなる会話と関心、「部下の仕事の成功を一緒に喜ぶ」など6設問からなる率直肯定、「部下の話を途中でさえぎらずに最後まで聴く」など6設問からなる最後まで聴く、「部下の改善点を指摘するときには、できていることをほめてから改善点を指摘する」など5設問からなる意図的肯定、という4因子構造になります。

部下コンプリメント行動の認知

「あなたの上司は、成果が自分の期待以下の場合に、できている点や良い点を見つけてあなたを認める」など6設問からなる意図的肯定、「あなたの上司は、あなたの話を途中でさえぎらずに最後まで聴く」など6設問からなる最後まで聴く、「あなたの上司は、良い成果が出たときにあなたの成果をほめる」など6設問からなる率直肯定、「あなたの上司は、テレビ番組など他愛ない話題であなたと雑談する」など5設問からなる日常会話、という4因子構造です。

部下コンプリメントの影響

「私は上司に認められていると思う」など6設問からなる信頼承認、「自分の能力に自信がある」など6設問からなる自信、「仕事上の能力を高めたいと思う」など6設問からなる仕事意欲、「今の職場のメンバーは、互いに助け合って協力できると思う」など5設問からなる職場肯定、という4因子構造を明らかにしています。

3つの概念間の関連

3つの概念間の関係性についてSEMで分析した結果図が以下の通りです。

p.71

モデル適合度の数値としては、GFIとAGFIが0.9未満でやや低いのですが、CFIが0.95以上でRMSEAが0.056と十分な値であることと、モデルを構成する変数とを考慮して適合的であると結論づけています。

調査概要

最後に、調査概要について簡単に書いておきます。民間企業3社に勤める管理職443名とそれぞれの部下923名を対象とした質問紙調査を分析したものです。実証研究でのn数の問題はなかなか難しいですね。1,000名はそれぞれ確保されていないものの、上司と部下と双方を見ていることによって良いデータという感じなのでしょう。

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