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まずは『G2性能」を標準仕様に!! (ユニソン・コラム再録)

私が以前お世話になった株式会社ユニソンのwebページで住宅の断熱性能に関するコラムを執筆させていただきました。
こちらで再録します。
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以下、コラム内容


「まずはG2性能を標準仕様に!!」

住宅の断熱性能が加速度的に高くなっています。長らく国が示していた断熱の最高等級は4(6地域、UA=0.87w/m2k)だったのに、あれよあれよと等級5,6が誕生し、瞬きをしていたら等級7(6地域、UA=0.26w/m2k)まで整備されました。そして、2025年には断熱完全義務化となり、最高等級だった等級4は最低基準となります。つまり、数年前に工務店から「断熱等級4は最高等級です!」と営業され、まあ、そうなのか、それなら安心か、と家を建てしばらくした2025年には、それが最低基準になっている、という目まぐるしい状況。さらに、HEAT20のG1,2,3という基準や、さらにそれを刻んでG2.5と言ってみたり。めまいがします。これは工務店経営者からすると混乱します。

■HEAT20は<快適と財布への優しさ>が基準
「いったい、どの断熱性能をお客様に訴求したらよいのだろうか?」
実際に私にもそのような問い合わせが数多く届きます。その際の私の回答は「まずはHEAT20のG2性能を標準仕様として用意しましょう。」です。
何故、HEAT20なのか。それはHEAT20がグレード(G1~3のグレード)毎に設定している基準がお施主様の得られる利益としてとても分かりやすいからです。HEAT20が設定している基準は二種類。エネルギー上の利益(EB)とエネルギー以外の利益(NEB)です。EBとは、「どれだけ省エネか」ということですが、つまり、どれだけ財布に優しいか、と言い換えられます。そしてNEB、エネルギー「以外」の利益とは温度環境であり、快適性です。よって、かみ砕いた表現をすると「これぐらいの温度の快適さになって、これぐらい財布に優しい家ならG2ですね。」がHEAT20の基準なのです。(詳細は欄外)
私は常々、住宅業界関係者に対して「住宅における温熱環境の商品価値は<快適で財布にやさしい>しかない。」とお伝えしています。まさにHEAT20が示してくれている基準がその2点であり、とても分かりやすく整理されているのです。
 
■HEAT20≠断熱等級6
 「あれ?HEAT20の基準はUA値じゃないの?」という質問が聞こえてきそうです。確かにUA値による外皮性能水準は示されていますが、よく見ると「あくまで目安」と断っています。目安なので、同じ断熱地域内でも、微妙にG2基準をクリアするUA値が変わります。実はHEAT20ではUA値の補正ができるようになっています。(HEAT20外皮水準地域補正ツールhttp://heat20.jp/regional/calc.html)例えば、同じ6地域でも名古屋市は0.46w/m2kでもG2に「概ね適合」しますが、豊田市は0.44w/m2kでないと「概ね適合」しません。UA値を基準にしている『断熱等級』とはこの点が似ていて、実は思想そのものが大きく違っていたのです。
 
■お施主様に提供するべき価値は何なのか?
 住宅供給者としてお施主様に提供するべき本来的な価値はUA値でしょうか?一部の熱狂的なお施主様でユーチューブ、SNSを見て、「(とにかく)UA値0.26w/m2kの家が欲しい」と熱望される方もいらっしゃると思います。しかし、ほとんどのお施主様が強く求めているのはUA値ではなく、<快適で財布に優しい>住まいのはずです。
 美味しいケーキをお客様に提供したい、と思ったとき、美味しさの基準が「砂糖のg数」でしか示されなかったら、それは乱暴だなと思うはずです。砂糖の数量は美味しさの一要素になり得るでしょうが、それだけで美味しさの価値は決まりません。同様に、<快適で財布に優しい>住まいの基準としてUA値は大事な要素ですが、それを追い求める事が最終ゴールではありません。
 
 <快適さと財布に優しい>住まいという本質を考える上でHEAT20を基準にすべきです。その中でG2グレードは、(私個人の見解も入っていますが、)トイレの暖房便座がいらなくなり、布団から出るのが億劫にならない温度を提供できる水準です。さらに等級4の住まいの暖房エネルギーを50%以上も減らして、その環境を手に入れる事が出来ます。これだけで、随分お客様の満足度は上がると思います。そして、実際に建てて、温度を測ったり、消費電力を測り、お客様の生の声を聞くことによって、なるほどG2グレードの家とはこういう家なのだな、と改めて理解できるはずです。そうなると、「これより快適な住まいってなんだろう?」と自然に発想するはずです。実際さらに上位のレベルは存在し、ヒートショックリスクをなくそうと思うと、室温が18℃を下回らないような家作りをしなくてはいけません。そして、建物性能をさらにあげて、冷暖房・換気計画もしっかり行う必要がでてきます。
 住まい作りの高みに達する、来るべきその時のためにまずはHEAT20のG2グレードを標準仕様にしましょう!


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