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<快適・省エネ>がゴールです

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。
※㈱ユニソンに以前執筆したコラムを一部修正した内容となっています。
ユニソンのコラムについては以下から。


UA値やC値より大切なこと


昨年末、『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2023』の報告がありました。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://sii.or.jp/meti_zeh05/uploads/ZEH_conference_2023.pdf

その中で(資料P55)、ハウスメーカーと一般工務店の注文住宅のうち48.1%がZEH基準以上の省エネ性能を有しているとの発表がありました。つまり、新築注文住宅のおよそ50%が『断熱等級5』以上の性能を有していることになります。もはや<一定以上の断熱性能は確認してなくても標準搭載されている>と、消費者は考えている状況だろうと思います。
分譲においては未だ6.6%しかZEH基準に達していませんが、2024年4月からスタートする『省エネ性能ラベル』によって、改善されていくのは間違いないと思います。

「断熱が大事、気密が大事、省エネが大事」と本気で語られ始め、工務店の方々が意識しだしたのは21世紀以降ずっとそうだと思いますが、この10年ぐらいで加速度がついたように感じます。この10年で何があったかな?ぼんやりと、天井を見ながら考えてみました。すると、ヒートショックが社会問題になり、「暖かい家じゃないと体によくない」エビデンスが広く共有され、夏は毎年尋常じゃなく暑くなり、NHKのアナウンサーが「無理をせずエアコンをつけましょう」と呼びかけるようになった状況が思い出されました。(もはや「エアコンのいらない家づくり」は成立しにくい状況です。)また、花粉、PM2.5、黄砂などの汚染物質が室内に入らないように換気が必要に迫られ、さらにコロナ禍でかつてないほどに住宅、非住宅を問わず換気が取りざたされるようになりました。そして、地球温暖化に伴う国際的な省エネの気運や、家計を圧迫する電気代高騰による省エネの要請も喫緊の課題です。
ヒートショック、熱中症、空気質(花粉症、コロナ)、地球温暖化、電気代、このような社会状況すべてが住宅の快適性と省エネ性につながっています。そして、これらは「住宅選びをする際の大事なニーズ」へと急激にランクアップされていったように思います。

じわじわと変わってくれれば、着実に学びながら対応できたのに・・。
そんな嘆き節が聞こえてきますが、時代は待ってくれないようです。
ここで時代に「対応した感じ」になる戦略として採用されているのが「数値アゲアゲ戦略」です。とにかくUA値C値など、分かりやすい数値を上げていこう、という戦略です。
なるほど、UA値C値は評価軸が一本道で定まっているので、アゲアゲは可能です。C値に至っては「今回の気密測定はC値0.06cm2/m2でした!」といった、もうこれ以上なんともならない<涅槃>と呼べるレベルでの競争すら起きているように感じます。

しかし、この「アゲアゲ」は何のためでしょうか?どういった根拠に基づいてUA値を上げていったのでしょうか?UA値0.46w/m2kからUA値0.34w/m2kに上げたとして、それで住まい手にどんな便益がもたらされるのか検証されているのでしょうか?C値が0.1cm2/m2になった時、ちゃんとレンジフードファンの対策を行っているでしょうか?なんとなく「シューズクロークにパイプファンを設置」といった事を行ってないでしょうか?
急激なニーズの変化に対して、「アゲアゲ」をもって対策とする、というスタンスはある種の思考停止なのではないかと思います。

本質とは<快適と省エネ>
それでは思考停止ではない方法とはなんでしょうか?それはニーズにちゃんと向き合うということです。お客様のニーズは<快適・省エネ>です。それは具体的にこのように表現することができます。

「1月1日の午前5時、脱衣所は15℃を下回らない、年間の冷暖房費用は40000円程度。そのような快適で財布にやさしい住まいを皆さんに約束します。」

これを打ち出すことがニーズに向き合うことであり、熱環境についての本質です。UA値C値などのスペックはこの本質を実現するためのパラメータでしかありません。実際にHEAT20ではG1~G3というグレードが設定されていて、UA0.56~0.26(6地域)とUA値で語られることがほとんどですが、実際は「UA値はあくまで目安、室温(NEB)、エネルギー(EB)を満たすことを目指す」と明確に明記されています。

この場合、室温(NEB)が<快適>を、エネルギー(EB)が<省エネ>を表します。
やはり、最終ゴールはUA値ではなく<快適・省エネ>なのです。

 ではUA値C値ではなく、<快適・省エネ>を目指すには具体的にどのような方法論をとればよいのでしょうか?実は私の本業はその方法論を工務店・ビルダーさんと一緒に実践することにあります。現在、私は1年単位で工務店・ビルダーさんとタッグを組み、以下の3つを実現する取り組みを行っています。

  1. 温熱環境コンセプト作り

  2. 実践編

  3. 温熱のプロ社員育成

①は工務店・ビルダーさんの住宅商品の温熱環境を決定する4要素<断熱・気密・冷暖房・換気>を見直し、どのような<快適・省エネ>をお客様に提供するのかを決める「商品開発」のフェイズです。
②はみんなで決めた商品を実際に建ててみて、各種測定し(気密測定、環境測定、消費電力測定など)、評価する実践フェイズです。
③はそのような業務をOJTでこなしながら、社員を「温熱環境がわかる」社員に育て上げるフェイズです。
つまり、「住宅の熱環境について、ちゃんとしたコンセプトがあり、それを実践する能力と社員がいる」会社に育て上げることが私の使命なのです。

(以下コラム省略)

と、いう事で私の現在の本分について触れたコマーシャルな内容へと変化したのでありました。めでたしめでたし。
今回はこれにてご免。


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