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通年計測のススメ

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


そんなこんなで、温熱環境のサポートをしている豊川の誠一建設さんと、OBさん宅にご訪問した。
目的は、通年で温湿度と消費電力を計測するために計測器を設置するためだ。

誠一建設さんはこちら。社員さんはみんな真面目で愚直。好感度抜群です。

住宅は新城市。入居してまだ数カ月。
インターフォンをポチ。
「すいません、温湿度計の設置にきました。」
「はーい、わかりました。」と、奥様。
ややあって、年小のかわいい男の子が出てきた。

そこはかとなく加齢臭のするおっさん三人組に距離を置かず
興味深そうに近づいて見上げてくる。
「いくつなの?」
「4歳だよ。」
人見知りしない子だ。

すいません失礼します。
中に入り温湿度計switch botのセッティングを行った。
セッティングはスマホアプリとの紐づけ。そしてwifiとの紐づけだ。
難しくない。
switch botは以前紹介しているので、そちらを参考にしてほしい。
「温湿度測定」の民主化!
power to the people!!の切り札だと思っている。

スマホで各温湿度計の測定状態が確認できるようになったことを確認し、リビング、2F個室、洗面脱衣所に計測器を設置した。

参考画像 各温湿度計の計測状況をスマホで確認するとこんな感じ。
ちなみに計測データは我が家。


洗面脱衣室に温湿度計を置いた。
二台あるが、むかって右がSwitch bot
元々ある温湿度計と値が違うが、これはSwitch botを設置して間もないから。

今まで私が行ってきた計測は真夏・真冬に1週間~4週間程度行う短期間の計測ばかりだった。
そのほとんどが入居前。
狙いは「住まい手の生活というファクター」がない状態で、
①ちゃんと狙った温度になり
且つ、
②部屋間温度差(空間軸温度ムラ)
③昼と夜の温度差(時間軸温度ムラ)

が小さい状態か。
その上で
④想定通りの消費電力
になっているかを確認するためだった。

これは温熱環境を決める4要素
<断熱×気密×冷暖房×換気>
の設計と施工が正しいものであったかどうかの通信簿となる。
建物として想定のパフォーマンスが出るかどうかの製品テストのようなものだ。
これを繰り返してきたことによって、お客様の満足度の高い、クレームの少ない温熱環境をお届けしてきたという自負がある。

で、今回の測定。
これは年間を通した計測。
そして住まい手さんが実際にそこで生活を営まれる。
前述の建物パフォーマンスを確認する計測とは同じ環境測定でも種類を異にする。

私が年間を通した計測をはじめることにしたのは理由がある。
それがこれだ。

野池さん。
2007年頃(と、記憶している)から、勝手に師事し、何を発言しているか追いかけてきた業界の先達。

その野池さんが、この記事の中で「新しい冷暖房方式」とその①温熱環境と②消費エネルギーについての評価が必要と提起された。
(もっと、議論は多岐にわたるが、私のレセプターが感応した部分が上ね。)

なるほど、そうだと思った。
①温熱環境と②消費エネルギーの測定は建物パフォーマンスを確認する測定としてたくさん行ってきたのは前述の通り。
しかし、野池さんの言う消費エネルギーは生活者がいる住宅での消費エネルギーの事。
これが実際のところどうなんだ?を知るべし、という課題提起ととった。

本当のところ、これは以前から私にとっても課題だった。
しかし、年間通した生活者がいる住宅での消費エネルギーの演算である建築研究所の一次エネ計算が、あまりにも私が過去に行ってきた建物パフォーマンス測定の結果とは乖離しており、「ぬぬぬ、この結果を咀嚼できん。当面、捨て措くとしませう。」とあいなってきた。

野池さんの提言は乖離(近似)しているならちゃんと測定して確認しよう、であり、確かにそうだなと去年の私(野池さんの記事のアップは2022年9月)は思った。同時に、特に冷暖房・換気を得意分野とし、様々な冷暖房・換気方式を実践してきた私には、この未開拓分野を切り開く使命があると思った。

で、冬が来て、春となり、夏来にけらし。
やっと、状況は整い、誠一建設さんと一緒に測定する運びとなったのだ。

新城のそのお宅。
リビング、子供部屋、洗面脱衣所に計測器を設置。
動作も確認。問題なし。

夕ご飯時。
奥さんが忙しそうに夕食の用意をされている。
長居はよくない。
撤収作業をしていると、4歳の子供がプラスチックの銃をもって
おじさん3人組に近づいてきた。
「ばんばんばん!」
至近距離で撃たれ、ハチの巣になった。
ゴッドファーザーのソニー・コルレオーネのように。
「ひぃーやめてぇー!」と、声をあげてそそくさと
家を後にした。

来年の夏の終わり、測定器を回収する時、
また撃たれに来るから、それまで待っててね。

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