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微笑みは記憶の中に

一年とちょっとかけて、人付き合いが苦手なわたしがやっと自分のhomeだと思えるギャラリーを作った。

そして、そのカフェギャラリーがもうすぐ閉店する。

こじんまりとして、静かで、ゆったりと時間が流れていて、わたしはそこで、ギャラリーに飾られている自分の絵を見ながら、チーズケーキとコーヒーをいただくのが好きだった。

とても好きだったのだ。

だから、もうこの空間が、なくなってしまうというのが、なんとなくまだ実感がわかない。

でも、もうすぐ確実になくなってしまう。

昔住んでいた家が、今はもう記憶の中にしかないように。

そこへ描いた絵を持って行けば、オーナーさんが、今度はどんな絵を描いていらしたの?と、嬉しそうに微笑みながら描いた絵を見てくれた。

それがとても嬉しかった。

多分、ある種の避難所だったんだと思う。

多分、わたしは、あそこで水面に出て、息継ぎをしていた。

迷わず、絵を描き続けられるように。

迷っても、また、絵に戻ってこられるように。

絵を描くことは、自分をコントロールすることだ、というのは、わたしの先生の受け売りだけれども、そのコントロールの鍵をわたしはあそこに置いていた。

だから、きっとこんなに動揺しているのだ。

あの場所が消えたら、わたしの鍵はどこにあるのだろう。

また、鍵の預け場所を探さなくてはならない。


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