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中之島備忘録 令和4年3月23日水曜日

私が近づくと、鳩がふいに鳴きはじめた。喉の奥で押さえつけたような、くぐもった声。怯えているのか怒っているのか、そんな風に見える。


わざと足音を派手にたてる。鳩は鳴くのをやめてくるりと回り、太陽の方に向かって飛んでいった。悪いことをしたような気分になった。


紅い薔薇の芽は、開いて緑色に変容し、いつか見たいじらしい姿はもうどこにもない。


冷たい風が何度も何度も吹きつけて私の身体から体温を奪っていくが、春は裏切ることなく必ずここにやってくるのだと思った。

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