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中之島備忘録 令和4年3月31日木曜日

雨があまりにも小ぢんまりと降っているものだから、手に持っていてずっと邪魔だと思っていたはずの傘の、さすのをすっかり忘れていた。もしかすると、本当はさすのが嫌だったので、言い訳の余地を残しておいたのかも知れないとも思う。


そもそも傘をさすのはあまり好きじゃない。
傘をさすくらいなら、ずぶ濡れになったほうが、本当は好き。
でも大人だから。大人になってしまったから。
大人というのは常識と体裁が全てで。自ら支配される道を選んで生きている。
それが私。

だから。


振り返ると、真正面のビルが薄くなっていた。灰色の単色で、今にも消えてしまいそう。

薔薇の赤い葉が、この静かな景色にかろうじて彩りを添える。


傘をひろげると、雨音の軽快なリズムが響きはじめた。耳元に心地よく、もっと早くに傘をさしておけばよかったと思った。

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