あなたが待ってくれるから 2
「誰か!!助けて、泥棒!!」
僕は必死にその女性の口を押さえて、声を出させないようにしたが、抵抗されて、僕は気づいたら、その家にあったハサミを手にしてしまった。
僕は必死に静かにしてくれと、ハサミで脅かしたが、女性は怯む事なく、抵抗を続け僕の持ってるハサミを取り上げようとした時、2人が揉みくちゃになりながら、2人で倒れてしまった。
僕は素早く立ち上がったが、女性が起きてこない。ハサミは僕が持っているが、刺さった様子もない。揉みくちゃになった時、テレビ台の角に頭をぶつけてしまったかもしれない……。
「どうしよう……逃げなきゃ……」
僕は焦っていて、玄関がどこにあるか分からず、迷っていた。すると男性の声が聞こえてきた。
「おーい!いないのか!」
声の方に向かってみると、玄関には、さっき車で出かけたおじさんが、帰ってきてしまった。
「やばい……もう終わりだ……」
僕は怖くなり、足音を立てずに静かに、階段で2階に上がった。2階に上がると畳の部屋があり、そこの押入れに隠れる事にした。
隠れてる時、心臓の音がこれでもかと言うぐらいに、バクバク聞こえてきた。
すると一階から、おじさんの叫び声が聞こえた。
「おい!!どうした!!大丈夫か!今救急車呼ぶからな」
僕はどうやって逃げようか考えた。2階から飛び降りるのか、救急車が病院に向かったら、こっそり一階に降りて逃げようか、頭の中はパニックになっていた。
10分ぐらい隠れてると、救急車やパトカーのサイレンが聞こえてきた。僕はもう捕まるんだな。
そう思ってると、何故か押入れの中で、30年間の思い出が走馬灯のように思い出し、由真の事を思い出した。
「もう由真との関係も終わりだ。借金なんかあっても、こんな事しなければ、うまくいってたかもしれない」
僕は腹を括り、一階に降りて行こうと決心した。
その時、階段を数人が登る音が、バタバタ聞こえてきた。
「靴の跡があるぞ!!」
すると畳に靴の跡がついていて、呆気なく僕は、押入れを開けられた。
「何してんだ、お前!一名確保しました!まだ家の中にいるかも知れない!」
僕は数人の警察に掴まれて、パトカーに乗せられた。
名前や電話番号、財布から身分証をとられて、僕は千住警察署に連行された。
警察署に行くと、ガタイの大きい刑事が2人、僕を待っていて、そこから取り調べが始まった。
「なんで、あの家に入ったの?前から計画してただろ?」
「仕事の帰り道たまたま、あの家の前を通ったら、鍵をかけないで、家を出てく所を見かけてしまったので、お金に困り入ってしまいました」
「お前1人でやったのか?共犯もいるだろ?金に困ってるって借金はあるのか?強盗に入った家は初めて行ったのか?」
僕は生まれて初めて逮捕されたので、こんなにも取り調べがキツイとは知らなかった。僕の話す事を全て疑いが入り何も信用される事はなかった。それはそうだよな。毎日ニュースで見てた容疑者に、自分もなってしまったんだから。
「あのおばさん死んでないよな……」
警察の取り調べが3時間ほどで終わり、僕は留置場に入れられる事になった。
荷物検査や裸にされて、体のチェックを隅々までされて、テレビで見ていた檻の中に入れられてしまった。檻の中には、僕と同じ歳ぐらいの人が、腕を組んで座っていた。
「初めまして!何やっちゃったの?俺が見た所、真面目そうに見えるし、万引きとか窃盗関係でしょ?」
僕は黙って、何も話さなかった。
「ちなみに俺は傷害罪。酔っ払って店にいた知らない奴を殴ってやったの。でも俺は執行猶予中だから今回は刑務所かな」
僕はそれを聞いて、この人は刑務所に行くのかと思い、可哀想だなと、僕の話もする事にした。
「実はお金に困り、知らない人の家に入って、おばさんと揉みくちゃになり、ハサミを持って……」
するとその人は、ビックリしてこう言った。
「えっ?強盗かよ?おばさん死んだの?1発懲役だよそれ。顔に似合わず悪い事するねー」
それを聞いた僕は、顔が青ざめていった。法律の事なんて詳しくないし、まさか僕が刑務所なんて夢にも思わなかった。まだこの時は、自分のしてしまった罪の重さが、全く分かっていなかった。
「僕、刑務所行くんですか?」
「当たり前だろ!強盗のように強の漢字が入る罪名は、かなり重いぞ」
僕はその日の夜、布団の中で、朝まで泣き明かした。自分でやった事なのに、今でも自分のした事じゃないみたいだ。
「28番、調べ!!」
今日も朝から取り調べがあり、取り調べ室に行くと昨日の刑事が、パソコンを持って座っていた。
「昨日はよく寝れたか?お前に伝えなきゃいけない事があるんだけど、お前が強盗に入った被害者のおばさん、昨日の23時頃亡くなったぞ」
僕は目の前が真っ白になった。なんて事をしてしまったんだ……。
(つづく)
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