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チャートの継続・反転パターン

※テクニカル分析で一般的に呼ばれている名称を一部【】で囲っています。
これは良く使われる用語を定義するためであり、他書籍やウェブサイト等で検索をするために用語をはっきりさせることが大切と考え、このようにしています。
しかし名前よりもパターンの形の本質を覚えるほうが遥かに大切となりますので、覚えづらくてもあまり気にする必要はないと考えています。


この記事では継続と反転のパターンについて学習していきます。
継続や反転パターンは非常に重要であり、実際の取引で大いなるチャンスを与えてくれるはずです。

また本稿ではたびたび「出来高」という文字が出てきます。
次回以降に出来高について深堀りしますが、出来高は「どれだけの取引が行われたか?」の取引の数を表し、相場における「力」を表します。
基本的にローソク足1本につき出来高が1つ表示され、この出来高が多ければ多いほど「そのローソク足の値動きが力強く、ダマシでは無い (つまり本物である) 確率が高まる」法則があります。

出来高は自転車で言う補助輪のような役割をし、「単体では意味が薄いが、他のテクニカルや値動き自体と合わせて使うと非常に強力」なものとなりますので、ぜひ覚えていただければと思います。

なお、継続や反転のパターン自体はトレンドが発生していない状態であるため、以下これを「もみ合い」や「保ち合い (たもちあい)」「横ばい」「レンジ」などと表現することがあります。


■チャートの継続パターン

チャートにおける継続パターンは様々ありますが、そもそもトレンドが発生した際には継続が基本となります。

良く、「これは反転のパターンだからトレンドの反対にポジション (建玉) を建てよう!」と意気込む投資家が多く、気づいた時には多くの含み損を抱えるシーンを見かけるため、この「継続が基本」という考え方を言いすぎることは無いでしょう。
ダウ理論でも「トレンドはそれを否定するサインが出るまで続く」とあるように、トレンドに逆らうことは大きな事故につながる要因ともなります。

これから紹介する継続パターン・反転パターンは、それらパターンが完成するまで限られた領域の中で値幅が動くことが多く、この領域を作っている最中は待つことが基本となります。
これら特徴の一つとして、継続パターンは形成する期間が比較的短く、元のトレンドの一時休止という意味合いで短期的・中期的なパターンの分類に入ることが多いです。
対して反転パターンは形成してから実際に反転するまでの時間が長い傾向にありますが、これも「必ずそうなる」とは限らないことに注意したいです。

特に反転パターンにおいて、反転する形を値動きが形成中に突飛なことで継続のパターンに化けることもあり安易な逆張り (トレンドに逆らった建玉を持つこと) は命取りになりやすいです。
もちろん継続パターンが表れても反転する可能性が0とは言えません。
継続パターン・反転パターンは「完成した後に初めて効力を持つ」と認識しておき、慣れないうちは仮に反転するパターンが形作られている時でも慌てず待つことを徹底しましょう。

また反転及び継続パターンは出来高も重要な要素の一つになります。
出来高は市場でどれだけ取引されたかのベンチマーク (指標) となり、出来高が多いトレンドは重要度を増し、そのトレンドが本物であることを裏付けます。(出来高が多ければ多いほど、そのトレンドが続きやすい)
この出来高については次回以降触れていきます。

まずは最もベーシックなものから触れていきます。


◆長方形パターン (レクタングルパターン)

トレンドにおける最も基本的な継続パターンは長方形を描くパターンです。
「もみ合い」「トレーディングレンジ」と呼ばれることもあります。

上昇トレンドの長方形 (レクタングル) パターン
最も基本的だが、抵抗線と支持線に囲まれている領域では継続が確定していない
「この長方形をどちらかに突破した方向に値動きは進む」と覚えるべき

パターンというよりは前回のnoteにおける「水平線とその役割」の章で書いた通り「目立つ高値と安値に水平な線を引き、横ばいに推移する値動き」となり、ほとんどの市場において最も良く見かける形です。

上図では上昇トレンドが目立つ高値を付けた点1から点2に落ち、点1とほぼ同じ高さの点3、点2とほぼ同水準の点4が出てくればそれぞれ平行な線が引けるようになります。
こうすることで長方形パターンが完成します。
(もちろん、これは以前の記事における水平線と全く変わりありません)

なお、上図ではそれぞれの水平線に3回接触していますが、この回数に特に縛りはありません。
(2回であればダブルボトムやダブルトップ、3回であればトリプルトップやトリプルボトムとも言われます。これらは後述します。)

また突破した後は以前の抵抗線まで一時的な下落をすることがありますが、「以前の抵抗線」が「新たな支持線」となり上昇トレンドをサポートすることが多いです。

「否定するサインが出るまでトレンドは続く」を逆に解釈すれば、「否定するサインが出ればトレンドは終わる」となります。
上図の長方形パターンでは、支持線を値動きが下に割った時はもちろん反転パターンとなります。
この長方形パターンは「抵抗線、又は支持線が終値で突破された時、その突破した方向に値動きが進む」と覚えておくと良いでしょう。

下降トレンドでも同じことが言えます。

下降トレンドの長方形パターン

こちらも同じく、基本は横ばい相場からどちらかに突破した方向に向かって取引するのが安全でしょう。
(ローソク足の終値で) 支持線を下に突破した場合は以前の下降トレンドが継続するサインであり、逆に抵抗線を上に突破した際は下降トレンドから反転するサインとなります。

トレンドが継続した際にどれだけ値幅が動くか?
正確には予測できないが、「最低でもここまではいくだろう」の見当は付けられる
長方形の場合はその幅を測り、突破した部分に当てるだけで簡単だ

また突破した後にどれだけの値幅が進むか以前の記事において多少触れましたが、これから紹介する形も含めると「突破する前に値動きが動いた幅の最も大きい場所を、突破した部分からそのまま当てる」と各パターンの (突破後の) 最低目標値が算出されます。
もちろん例外はありますが、トレードにおいてどこで決済すれば良いかの道しるべになるでしょう。

上図を例にトレードする際は、これを継続パターンと見て支持線が明確になった部分で買いを入れ、抵抗線付近で決済売りを入れると横ばい相場でもトレードが可能となります。

この長方形パターンは通常3週間以内に突破 (ブレイク) するとも言われていますが (チャートの表示が日足の場合)、時には何年も長方形の形を保ったままの場合もあります。
しかし長方形の中にいる期間が長いほど、突破後のトレンドが力強いものとなりやすいです。


◆三角形パターン (トライアングルパターン)

【トライアングルパターン】は継続の種類に分類されます。
ある横ばい相場に移行した後、その値幅が徐々に小さくなるのが特徴です。
小さくなった値幅の高値・安値にそれぞれトレンドライン (抵抗線・支持線 を引くとまるで三角形の辺のように見えることから名づけられました。

トライアングルパターンは主に4種類に分かれます。

  • 大きい値幅からだんだんと小さい値幅へ移行する「対称トライアングル」

  • 高値が同水準かつ安値が切り上がる「上昇トライアングル」

  • 安値が同水準かつ高値が切り下がる「下降トライアングル」

  • 天井付近で現れやすい、市場の迷いを表す「拡大トライアングル」

このうち「拡大トライアングル」は反転のパターンとして分類されるため後の章にて触れます。
まずは「対称トライアングル」から見ていきましょう。


  • 【対称トライアングル】 (シンメトリカル・トライアングル)

対称トライアングルはその名の通り、2本の対称的な線が三角形を形成する継続パターンです。

対称トライアングル
継続パターンで良く見られ、高値と安値がそれぞれ真ん中に接近するように動く
3回ずつ線に触れた後どちらかへ突破しやすいが、頂点を過ぎても突破しない場合もある
その時はトライアングルが無効になったと考えるのが妥当

上図では上昇トレンドが点1と点2で一服した後、点3→点4と徐々に高値・安値が中央に近づいています。
これによりそれぞれの高値・安値を結ぶ抵抗線・支持線が展開され、一つのトライアングルを形成することが出来ます。
特徴として「時間が経つほど値幅が狭くなり、突破した後の値動きが大きくなる」傾向が挙げられます。

またトライアングルの一番値幅が広い、三角形の底辺に近い部分を「ベース 」(土台) と呼び、抵抗線と支持線が交わる部分を「頂点」と呼びます。
この「ベース」は対称トライアングルがどこから始まるかを示すとともに、トライアングルを突破した後に値幅がどこまで行くか?の距離の目安にもなります。

もちろんこのトライアングルがいつでも効くとは限りません。
どこで元のトレンド方向に突破するか?という議論に対しては、おおよそですが「ベースから頂点までの距離の、3分の2 ~ 4分の3 付近で突破することが多い」と言われています。
もし頂点に近づいても突破するそぶりを見せない場合、トライアングル自体の意味合いが薄れていることが多く、この場合は通常の横ばい相場として、トライアングルのベースにおける高値と安値に水平線を引いて判断すると良いでしょう。

上でも少し触れましたが、トライアングルを突破した際にパターン内の最も値幅の広い部分 (ベース) の幅を測定し、突破した点に当てることでおおよその目標値が算出されます。

対称トライアングルの突破時期と目標値の算出
この三角形は突破する時期も大事であり、通常は3分の2~4分の3あたりまでに突破する
対称トライアングルが効かない時
もし頂点に近づいても目立った動きを見せない場合、違うパターンと見るべき
最も確実な方法はベース部分の高値と安値に、新たに水平線を引くこと
(長方形パターンとして扱う)

このように、対称トライアングルは「どのあたりで突破するか」だけでなく「いつ突破するか」もある程度わかるのが強みです。

上図では上昇トレンドですが、トライアングルを上に終値で突破した後に上値を抑える「抵抗線」として働いていた元のトライアングルの線が「支持線」として働きやすいです。
上に突破した後に押し目 (一時的な下落) がやってきても慌てず値動きを観察し、再度上昇していくことを確認すると良いでしょう。

※以後、すべてのパターンにおいて突破した線までの一時的な戻りや押しが見られやすいです※

そしてトライアングル形成時には出来高も重要となります。

上でも述べましたが出来高は市場にどれだけの取引量があるかを記したものであり、出来高が増えるほどその値動きが本物である可能性が高まります (「トレンドが継続しやすい」ことを指します)。

また横ばい相場やトライアングル、その他パターンから上もしくは下に突破する際、出来高が多いほどその突破が本物である確率が高まると言えます。
本物であればあるほど、突破した方向に値動きが継続しやすくなります。

トライアングルと出来高の関係
上昇トレンドの場合、上昇時に出来高が増加し下降時は出来高が減少するのが正しい動き
またトライアングルを進むごとに出来高は徐々に減ることが多い
トライアングルを突破する際は大きな出来高があるとなお良い

上昇トレンドでは値動きが上昇する際に出来高が増加し、値動きが下降する際は出来高が減少するのが通常の動きです。

逆に出来高が減少しながら上昇すると、その値動きがフェイクである可能性が高まり、トレンド転換が近い一つの注意信号となります。

上図をもう少し観察すると、トライアングルの中で値動きが進むごとに出来高の量が相対的に減っています。
ベースの部分では比較的多くの取引があったにも関わらず、頂点へ進むにつれ出来高は減っていきます。
これはすべてのもみ合い相場で言えることであり、またどちらかへ突破した際に著しい出来高の増加が見られるのも覚えるべき特徴となります。


  • 【上昇トライアングル】 (アセンディング・トライアングル)

上昇トライアングルは水平な抵抗線 (上辺) と右肩上がりの支持線 (下辺) で構成され、強気のシグナルとなる形です。
対称トライアングルと同様、上昇トライアングルも「ベース」と「頂点」が存在します。

上昇トライアングル
この形が表れたら「相場は強気で上昇する」傾向にある
高値は同水準で収まっているが安値が切り上がるのが特徴
パターン内の高値を終値で上に突破すれば再度上昇する

この上昇トライアングルは基本的に上昇のサインとなります。
ほぼ同じ水準の高値と切り上がる安値によって構成され、時が進むにつれ値幅が減少、出来高も減っていくのが特徴的です。
これは上昇トライアングル内の安値で買う投資家がより積極的であることを示しており、安値がじりじりと高値を追い詰めることである時高値が上へ突破されるケースが多いです。

上昇トレンドの途中であれ下降トレンドが一服した場所であれ、この上昇トライアングルの形を見つけたらまず線を引き、トライアングルの抵抗線を終値で上に突破すれば無事このパターンが完成、その後の上昇トレンドが生まれます。

一つ前の対称トライアングルは継続パターンに入るものの、継続というより中立という表現が正しいでしょう。
すなわち対称トライアングルは継続こそしやすいものの、それぞれの抵抗線・支持線を値動きの終値で突破すれば突破した方向にトレンドが発生します。
仮に上昇トレンドが続いた後に対称トライアングルが発生し、その後下に突破した場合は「トレンドの転換」という事実を受け入れなくてはなりません。

対して上昇トライアングルはほとんどのケースで突破後に上昇するため、以前のトレンドが下降トレンドであってもこの形が出れば上昇する大きなチャンスと言えるでしょう。

下降トレンドの後に上昇トライアングルが発生した例
どの場面でも上昇する可能性が高い
この形を見つければ上昇の大チャンスでもある

対称トライアングルでも説明しましたが、この上昇トライアングルのパターン内部でも出来高は上昇時に増加し、下降時に減少することが望ましいです。
またトライアングルの中を進むほど、出来高は相対的に減少していきます。

上昇トライアングルと出来高の関係
トレンドと同方向には出来高増加、反対方向には出来高減少が望ましい
突破時は大きな出来高があると安心

値動きが抵抗線を上に突破する際、出来高が明らかに増加していることが望ましいです。
以前のnoteにて申し上げた通り、「線が重要性を増す」という意味でも「出来高の増加」と「抵抗線の突破」がセットになるとより強力なサインになります。

突破後の目標算出も同じように、値幅の一番広い部分の幅を測定して突破した地点に当てるとおおよその目安が分かります。

上昇トライアングルの目標値算出
これも同じく、ベースの最も広い部分を測り、そのまま突破した部分に当てる
なお対称トライアングルと違い、若干ベースが内側に (右側に) ずれている

  • 【下降トライアングル】 (ディセンディング・トライアングル)

下降トライアングルは水平な支持線 (下辺) と右肩下がりの抵抗線 (上辺) で構成され、弱気のシグナルとなる形です。

下降トライアングル
この形が表れたら「相場は弱気で下落する」傾向にある
安値は同水準で収まっているが高値が切り下がるのが特徴
パターン内の安値を終値で下に突破すれば再度下降する

この下降トライアングルは原則、下落のパターンとなります。
ほぼ同じ水準の安値と切り下がる高値によって構成され、上昇トライアングルと同じく時が進むにつれ値幅が減少、出来高も減っていくのが特徴的です。
これは下降トライアングル内の高値で売る投資家がより積極的であることを示しており、安値がじりじりと高値によって追い詰められ下に突破することが多いです。

これも上昇トライアングルと同じく、チャートのどこで表れても下落のパターンとなります。
ほぼ同じ水準の安値、切り下がる高値を見つけたらまず線を引き、安値に引かれた水平な支持線を終値が突破すれば下降トレンド入りとなります。

上昇トレンドの後に下降トライアングルが出現した例
この形が出た時点で下落の可能性が高まる
また目標値はベースの部分を測定し、そのまま突破した部分に当てると良い

上図では上昇トレンドの後に下降トライアングルが出現しており、この場合は次に来るトレンドが下落となりやすいです。
継続パターンであり、もちろん下降トレンドの小休憩として下降トライアングルが出現しやすいですが、下降トライアングルが出現した際は以前のトレンドに依存しにくいものであることを知っておくと良いでしょう。

また、ベースにおける幅を測定して支持線を突破した部分に当てるとおおよその目標値が算出されます。
これも他のトライアングルと測定方法は同じになります。

下降トライアングルでは出来高との関係が反対になります。
すなわち上昇トライアングルでは「上昇時に出来高増加」「下降時に出来高減少」でしたが、下降トライアングルでは「下降時に出来高増加」「上昇時は出来高減少」となります。

下降トライアングルと出来高
下降時に出来高が増加していると良い
また下に突破する際は出来高の増加があると安心

こちらも、値動きが支持線を下に突破する時に出来高が明らかに増えていることが望ましいです。


長くなったため、ここで一旦トライアングルについてまとめます。

  • トライアングルには「対称」と「上昇」と「下降」の3種類がある

  • 「対称トライアングル」は抵抗線と支持線が三角形の辺を作るような位置にある

  • トライアングルパターンは原則、時間が進むほど (チャートの右に行くほど) 値幅が狭くなり、出来高が減少する

  • トライアングルはベースから入り頂点へと向かう形が普通であり、三角形内部の 3分の2 ~ 4分の3 ほどの距離を進むとどちらかへ突破しやすい

  • 「対称トライアングル」は多くの場合継続パターンだが、どちらかにブレイクした方についていくことが大切 (必ず継続になるわけではない)

  • 「上昇トライアングル」は高値に引かれる抵抗線がほぼ水平、安値に引かれる支持線が右肩上がりなのが特徴

  • 「下降トライアングル」は安値に引かれる支持線がほぼ水平、高値に引かれる抵抗線が右肩下がりなのが特徴

  • 「対称トライアングル」を突破した後の目標値は、パターン内の一番値幅が広い部分 (ベースとも呼ばれる) の垂直距離を測定し、突破した部分に当てると算出される

  • 「上昇トライアングル」「下降トライアングル」を突破した後の目標値は、パターン内の高値と安値が最初に決まった部分の垂直距離を測定し、突破した部分に当てると算出される

  • チャートのどこで表れても「上昇トライアングル」は「上昇」、「下降トライアングル」は「下降」を表しており、以前のトレンドの方向に依存しにくい


◆ペナントパターンとフラッグパターン

  • 【ペナント】 

ペナントは「三角旗」などと日本語で訳されます。
このペナントは、そのパターンがまるで「三角形の旗」のように見えることから名づけられました。

ペナント (Pennant) と呼ばれる三角旗
画像はコロラド・カレッジより

これは継続パターンの一種ですが対称トライアングルを小さくしたものに似ており、ペナントに入る前に急激な値動きを伴うことが多いです。

ペナントのパターン
急騰から三角持ち合いに入る様がまるで三角旗のよう
パターン前には値動きの急騰・急落があり、ブレイク後も同方向に値動きが急伸する

活発な値動きの中に小休止として見られるペナントは、強い上昇・下落トレンドの中に発生しやすいパターンです。
継続パターンの中でもよほどのことが無い限りトレンド継続しやすく、強いトレンドの中間あたりに位置しやすいのも特徴のひとつです。

ペナントでは値動きの急伸はもちろん、出来高も急増しやすいです。
上図では上昇途中のペナントが紫線で表されていますが、ペナントに入る前の上昇において紺色の出来高も増加しています。
これはそもそもの値動きが非常に強い証であり、「本来はもっと値動きを伸ばしたいけれど少し息継ぎしたい」という相場の声がペナントとして表れています。

ペナント内部は今まで紹介したパターンと同じように出来高は減少し、再度ペナントを突破する際は出来高が増加します。

またペナントは3週間以内に完成されると言われています。
(ローソク足が日足の場合)
いずれにせよ、短期間に値動きがどちらかへ (たいていは元のトレンド方向へ) 突破しやすいという認識で問題ないでしょう。

上図では上昇トレンド中のペナントですが、特に下降トレンド中に現れたペナントは2週間以上続くことはほとんどないと言われるほど、急速に形成され再度急落しやすいです。
こちらも期間はさておき「上昇トレンドより下降トレンド中におけるペナントの完成速度がより速い」との認識が良いと思われます。

ペナントの目標値算出
元のトレンド開始地点からペナントを形成し始めた部分まで測定
次にそれを突破地点に当てれば目標値が算出される

ペナントは目標値の算出が特殊です。
今までは「パターン内の最大幅を測定し、それを突破した部分に当て目標値を出す」やり方でした。
しかしペナントはその強いトレンドの中間点に現れやすいこと、また旗のように見えることから「トレンドが開始した点からペナントが最初に形成された場所までの距離を測定し、その垂直距離を突破した部分に当て目標値を算出する」が良いとされています。

上図ではまさにそれが再現されています。
トレンドが開始した地点はすなわち、横ばい相場での水平線や以前のトレンドラインを突破した地点となります。
水平線を突破し新たな上昇トレンドが始まり次第、一旦押し目が出来た場所でその最大距離を測定します。

その後はペナントを形成したことを確認し、再度同じトレンドの方向に突破した点に測定した線を当てると「どこまで行くか?」の目安になります。


  • 【フラッグ】

ペナントに似たようなパターンにフラッグがあります。
フラッグはそのまま「旗」という意味で、国旗のイメージが代表的だと思われます。

フラッグ (Flag)
国旗などの形
フラッグのパターン
急騰から一時休憩に入る様子がまるで旗 (フラッグ) のよう
ペナントと同様、パターン前に値動きの急変があるのが特徴

フラッグもペナントと特徴は同じです。
唯一、ペナントは形が三角形であるのに対し、フラッグは平行四辺形を描くのが特徴です。
その他、継続パターンの中でも非常に信頼できる形であり、フラッグの前に値動きの急騰や急落があるのが特徴です。
出来高もフラッグ前には急増し、フラッグ内部では出来高が減少フラッグを突破すると出来高が再度増加します。

フラッグも3週間以内に完成されると言われ、特に下落相場ではさらに素早く形作られた後、再度下落していきます。

目標値もペナントと全く同じです。
すなわち「トレンドが開始した点からフラッグが最初に形成された場所までの距離を測定し、その垂直距離をそのまま突破した部分に当て目標値を算出する」となります。

フラッグの目標値算出
元のトレンド開始地点からフラッグを形成し始めた部分まで測定
次にそれを突破地点に当てれば目標値が算出される

◆ウェッジパターン

【ウェッジ】 (Wedge) とは日本語で「楔」(くさび) と訳されます。
このパターンはくさび型と言われるように、トライアングルの発展形として市場によく表れやすいです。

対称トライアングルと似ている形ですが、ウェッジとは違う点として
・パターンの抵抗線と支持線がトレンドと反対方向であること
・一方の線よりも、もう一方の線のほうが急な角度になっている

ことが挙げられます。

ウェッジはトレンドと反対方向に形成されやすいです。
すなわち、突破した後の値動きが「上昇トレンドの時は下降ウェッジ」であり、「下降トレンドの時は上昇ウェッジ」となります。

下降ウェッジ (強気のサイン)
上昇時に下降ウェッジがしばしば見られるが、高値が切り下げても安値は思うように下げない
ついに売り側の投資家は諦め、抵抗線を上に突破することで完成する

このウェッジは1か月~3か月でパターンが完成することが多く、ペナントやフラッグのように「トレンド途中の小休憩」として良く見られます。

上図では下降ウェッジの例を示していますが、下向きの下降ウェッジは基本的に強気を表します。
以前、上昇トライアングルはどこで表れても強気と説明しましたが、ウェッジも同じく下降トレンドの最中に出た場合は上昇トレンドへの転換を示唆する形となります。

底値での下降ウェッジ
下降ウェッジは売りが緩やかになることでどこで表れても強い
またウェッジはしばしば頂点部分までもつれ込むこともある

上図では底値圏での下降ウェッジが表示されています。
抵抗線の角度よりも支持線の角度がより緩やかであり、これは売り圧が弱まっている証拠となります。
またウェッジ内では出来高が徐々に減るのも特徴です (今までのパターンと同じ)。

上昇ウェッジ (弱気のサイン)
こちらも同様、買う投資家が思うように上げられず断念することで下に突破
「抵抗線や支持線の傾きのどちらか鈍い」場合はウェッジを疑う

上昇ウェッジは弱気のサインとなります。
通常は下降トレンド内で発生しやすいですが、値動きの天井圏で出ることもあります。

天井圏で出た場合「これ以上、値動きが上がりたくても上がれない」として買い側の投資家が諦め、徐々にセンチメントが売りに傾きます。
値動きを支えきれなくなった時、ウェッジは支持線を突破することで完成します。

ウェッジの目標値も、ウェッジ内部の最も幅が広い部分の垂直距離を測定し、支持線や抵抗線を突破した地点に当てることで算出されます。

下降ウェッジ完成後の到達目標値
下降ウェッジの抵抗線を上に突破した後の目標値は従来の通り
値幅の最も広い部分を測定し、突破した地点に当てる

続いて反転パターンを見ていきます。


■チャートの反転パターン

ここからはチャートにおける反転パターンを見ていきます。
相場は「継続が基本」ですが、時に反転の兆しを見せることがあります。

反転の兆しを見せる場合、パターンが形成される途中であっても「兆し」であることは変わりないため、中途半端な位置でポジションを持つと時にやけどを負うことになります。

最初のうちは、チャートの反転パターンを「完成まで待つ」ことを意識しながら立ち回ると良いでしょう。


◆反転パターンに関連する共通事項

実際のパターンに入る前に、相場が反転するパターンに共通する事項を整理します。
この共通する事項は反転パターンを見た後もぜひ読み返すことをおすすめします。

【A. 全ての反転パターンは先行するトレンドが必要となる】

「反転パターン」で出てくるそれぞれのチャートの形はすべて、前回のトレンドがあってこそ生きてくるものです。
例えば1年ほど横ばい相場であった時、反転パターンでも最も有名な「三尊パターン」が出現したとします。

三尊パターン (ヘッド・アンド・ショルダーズ) がレンジ相場で現れた例
本来ならばこの後のトレンドが下落だが、以前より方向感のない相場が続いてる
「○○に見える」といったパターンは全体のどこにあるかをしっかりチェックすると良い

上図はまさにその状況を示しています。
長らく横ばい相場が続いており方向感がなくトレンドも発生していませんが、オレンジの四角で囲った部分が反転パターンに見えるとします。

本来であればこのパターン後に下落が来るはずですが、何らかのトレンドが無いためその後も横ばい相場が続いています。
このように、すべての反転パターンはその前にトレンドが発生していることが条件となります。
また反転パターンは目標値の算出とも大きくかかわっており反転する前の値動きのどのあたりまで戻すか?が不明確な場合、その反転パターン自体が疑わしきものになる可能性があります。

もし相場で反転パターンを見つけたら、そのパターンが値動き全体のどこに位置しているかを把握することをおすすめします。

【B. トレンドラインのブレイクはトレンド転換の黄色信号となる】

直接的に反転パターンと関係はありませんが、トレンドラインのブレイク (割ること) はトレンド転換の前触れともなります。
これは以前のnoteにて申し上げましたが、トレンドラインを割ることは必ずしもトレンドが転換するわけではなく、むしろ一時休止の意味合いが強くなります。

トレンドラインのブレイクはあくまでもトレンド転換の黄色信号
上図では上昇ラインを割っているが、すぐさま下落に転じていない
むしろ横ばい相場を経由してトレンド継続することも多い

急激なトレンド転換もありますが、たいていはトレンドラインをブレイクした後に横ばい相場を経由しがちです。
またトレンドラインのブレイクはそのラインの引く場所により反転パターンの完成 (三尊パターンにおけるネックラインの突破など) にもつながるため「どのトレンドライン・支持線・抵抗線を割ればトレンド転換か?」の違いを認識しておく必要があります。

【C. パターンの大きさはその後の値動きの大きさに直結する】

「パターンの大きさ」と呼ぶとき、その大きさは具体的に値幅と時間の広さを指します。
大きいパターンはすなわち「より値幅が縦に広く、時間も横に広い」ことを指します。

継続パターンでも目標値の算出を見てきましたが、パターンが大きければ大きいほど、パターンを突破した後の目標値がより大きくなります。

パターンの大きさはその後の値動きの大きさに直結
上昇トレンド中に長方形の横ばい相場が2つ発生している
前者は小さいパターンだが後者は大きく、目標値もその分大きく期待できる

例えば継続パターンではトライアングルが垂直の高さを基にし、突破後の目標値を測定していました。
上図では前半の長方形パターンが小さく、後半の長方形パターンが大きいために、後半のパターンのほうがより値幅の伸びを期待できることになります。
このように、パターンの大きさはそのままチャンスにつながり、またパターン内の時間が長ければ長いほど、パターン突破後のトレンドが持続しやすいことも知られています。

【D. 底に比べ、天井における反転パターンは短い期間で値動きが荒くなる】

普通、天井は値動きが激しくかつその形成期間が短くなりがちですが、底では値動きが穏やかで長い期間になりがちです。
また上昇トレンド時はゆっくりと値動きが進むのに対し、下降トレンド時は素早く値動きが進みがちです。
その理由は天井や底における投資家心理にあります。

天井の反転と底の反転の違い
天井は「激しく、素早く」、底は「穏やかに、緩やかに」
天井では投資家が殺到、底では閑散としている

株式指数 (ダウ平均やナスダック総合指数など) で考えてみると、天井は「売り抜け局面」に該当します。
(「ダウ理論とトレンドの考え方」をぜひご参照ください)

この売り抜け局面では強い投資家 (機関投資家など) が弱い投資家 (主に個人投資家) に、自らが持っている買いのポジションを明け渡す期間でもあります。
(相場における価格を維持しながらも買いを決済する = 売るにはその買いを貰ってくれる相手が必要となり、今回は弱い投資家がそれに該当します。)

いち早く下落を察した強い投資家はなるべく短期間に、かつ自らのポジションを有利な価格で決済しなければなりません。

そのためには弱い投資家に対して「もっと上がるかもしれない」と思わせて感情的にさせ、乗り遅れる恐怖 (Fear Of Missing Out、FOMO) を芽生えさせることで強い投資家が持っている買いのポジションを代わりに掴ませます。
この過程で弱い投資家は感情的に売買しやすく、それが値動きに現れるという過程を踏みます。

強い投資家が買いをすべて決済し、市場に弱い投資家しかいなくなった市場は上昇トレンドを維持できなくなるため、ひょんなニュースや経済指標、うわさなどで弱い投資家は天井で買ったポジションを手放します。

この光景を見た弱い投資家はさらに買いの決済、すなわち損切りを加速させ、同時に強い投資家の一部は新規で売りのポジションを持つことで急落していきます。
このために下落相場では上昇相場よりも値動きの速度が速くなるという算段です。

ある程度売りが一巡すると、ダメージを受けた弱い投資家は株式市場そのものに対し興味を失います。
この興味が無くなった場面が底打ちしやすく買い場として最も適正です。
強い投資家はその買い場を察知し、ゆっくりと気づかれないうちに買い集めるのです。

買い集める時、なるべく気づかれないよう派手な値動きを形成してはなりません。
このために底では緩やかな値動きになりやすい
のです。

【E. 下降時よりも、反転上昇するパターンは出来高がさらに重要になる】

下降トレンドに入る前、ほとんどのケースで天井が見られます。
この天井から下降トレンドに入る際、必ずしも出来高が増加していなくても問題ないと言われています。

理由の一つに下降トレンド自体、重力で落ちていくような軌道を描いていくことが挙げられます。
そもそも上のDで述べたように、天井から落ちていくときは強い投資家がほとんど逃げている状態です。

弱い投資家が作り上げる出来高は相当なパニックでなければ大きくは増加せず、そこそこの出来高で大きく下落していくことも良く見られます。

一方、底から上昇する際には大きな出来高が必要となります。

これは強い投資家による買いが入るためであり、また重力に逆らうためには力が必要であることを考えれば至極妥当なことです。
もし底から上昇する際に出来高が増えていない場合、そのパターンが疑わしいものになりやすいため注意が必要です。

ペナントでの出来高急増 (再掲)
底値から上昇トレンド入りするにはパワーが必要となる
もし出来高が増加しない上昇であれば、その上げはフェイクかもしれない

◆ダブルボトム・ダブルトップ

【ダブルボトム】と【ダブルトップ】は相場の中で最も一般的な反転パターンです。
最もよく見るパターンであるゆえダマシも多いですが、うまく使えば有用な形であることは間違いありません。

ボトムは「底」を表し、トップは「頂上」を指します。
この底や頂上が2つ (ダブル) あらわれるために呼ばれています。

その名の通り、2つの明確な安値又は高値がほぼ同じ水準に位置することで、その水準が支持線や抵抗線となることで形成されます。
これは以前のnoteでもお話しした水平線をそのまま流用しているものです。
(よく見ると以前のnoteの図はほとんどダブルボトムやダブルトップで構成されています。)

継続パターンの中で「長方形パターン」がありましたが、これもまさにダブルトップやダブルボトムの発展形となっています。
同じく、トリプルトップやトリプルボトムもこの類に入ります。

ダブルトップの例
2つの山がほぼ同じ水準で揃い、抵抗線を作っている
山の間の安値 (支持線) を下回ればトレンド転換の合図
ダブルボトムの例
2つの谷がほぼ同じ水準で揃い、支持線を作っている
谷の間の高値 (抵抗線) を上回ればトレンド転換の合図

ダブルトップでは2つの山がほぼ同じ水準で位置しますが、その谷の安値を終値で下回り、かつ下落時に出来高が多少なりとも増加していればトレンド転換とみなすことが出来ます。

ダブルボトムでも2つの谷が同じ水準であり、山の高値を終値で上回ればトレンド転換となりますが、上回るときに出来高が増加していることがほぼ必須条件となります。
もし出来高が減少しながらダブルボトムにおける山を越えるのであれば、その値動きはフェイクの可能性がある、という相場からの示唆となります。

値動きの目標値は長方形パターンと全く同じとなります。
すなわち、パターン内の高値と安値の垂直距離を、突破した点にそのまま当てると目標値が算出されます。

このほかにも上で言及した【トリプルトップ】・【トリプルボトム】の形があります。

トリプルトップはほぼ同水準の3つの山で構成されており、ダブルトップにもう一つ山が加わった発展形です。
同じく、トリプルボトムはほぼ同水準の3つの谷で構成されています。

それらの出来高の推移や突破後の目標値も全く変わりありません。
すなわち出来高はパターン内を進むごとに徐々に減少し、突破後の目標値はパターン内の高値と安値の高さを突破地点に当てれば算出されます。


注意点をいくつか挙げます。

  • ダブルトップやダブルボトムは、その形が表れてもすぐにトレンドと反対方向に取引してはなりません。

ダブルトップと勘違いしてはいけない例
これは上昇トライアングルに近く、点3で下に戻ったからと売りを入れると危険
「トレンドは継続が基本」であるのはこのようなことが起きるからだ

これは他のパターンと見間違えることが非常に危険であるためです。
例えば上昇トライアングルとダブルトップを間違えて、上昇トライアングル内で売りのポジションを持ってしまうと取り返しがつきません。

あくまでもダブルトップ・ダブルボトムは「最も基本的なパターン」であり、すべてが反転につながるわけではないことに注意しましょう。

  • 基本的に各支持線や抵抗線は、「終値で超える」ことが条件となります。

ローソク足でダブルトップかどうかを判定する方法
日足 (ローソク足1本 = 1日の値動き) で見る場合、1日だけ突破しても帰ってくることがある
フェイクを防ぐため、2日間突破すれば本物のトレンド開始と見ても良い

さらに終値で超えてもダマシ (フェイク) である可能性は0%でないため、「2日間連続で終値が線を突破する」などのルールを設けると良いでしょう。
このような「フィルター」は様々考えられますが、ある重要な水準を超える時、超えている時間が長いほどトレンドが本物である確率が高まります。

また「1%を超えたらその突破は本物である」など、値幅で決めることも一つの良い基準になります。
そして上昇時は出来高が伴うことも非常に重要であり、終値で重要な線を超え新しいトレンドが始まりそうな場合は「時間や値幅の基準」と「出来高の増加」の両方を確認するとより精度が高まるでしょう。


◆三尊パターン (ヘッド・アンド・ショルダーズ)

反転パターンの中でも最も有名であり、最も信頼度の高い三尊パターン【ヘッド・アンド・ショルダーズ】を紹介します。
三尊パターンは【三尊天井】とも呼ばれています。

ヘッド・アンド・ショルダーズとはその名の通り、パターンの値動きが頭と肩のように見えることから来ています。
通常は左肩・頭・右肩の順番に形成され、両肩よりも頭が高いのが特徴です。

もう少しシンプルに考えてみましょう。
例えば相場が上昇トレンドにある時、ダウ理論では「高値と安値が切り上がる」ことが特徴となります。
この高値と安値が切り上がらなくなった時、三尊の形が表れやすいです。

三尊 = ヘッド・アンド・ショルダーズの例
3つの山があり、真ん中の山は左右の2つの山よりも一つ上に出ている

上図は上昇トレンドにおけるヘッド・アンド・ショルダーズを表しています。
a点 = 左肩c点 = 頭e点 = 右肩を示しています。

a点~c点までは通常通り上昇していますが、次のd点に差し掛かるときにa点の水準で止まらずにb点の近くまで下落しています。
このc点~d点で既に上昇トレンドラインを下抜けており、これは「上昇トレンドが終了した」可能性を指します。
※この時点ではまだ下降トレンドとは言えません!

下落したd点にて上昇トレンドが終了した後、一度e点まで上昇しなおします。
しかし以前の高値であるc点を超えられておらず (これも「上昇トレンドが終了した」合図の一つです)、a点とほぼ同じか少し下の水準でe点が留まることに注目したいです。

その後、b点・d点を結んだネックラインを値動きが下に突破しながらf点まで下落し完成時折ネックラインまでの上への反発 (g点) が発生しますが、通常はそのままさらに下落していきます。

三尊パターンと出来高
ダブルダッシュ (") は値動きと対応する出来高を表す
b点までは明確な上昇トレンドだが、c点から高値更新に対し出来高は減少しており一致しない

ここで出来高との関係も見ていきましょう。

上図は出来高も表したものです。
「出来高が多いトレンドは重要度が高まり、トレンドが本物かつ持続しやすい」という法則がありました。
この三尊パターンでも同じであり、a点からb点までは一般の上昇トレンドの法則である「上昇時に出来高が増加し、下降時に出来高が減少する」に当てはまっています。

問題はa点より高値に位置するc点であり、a点よりも出来高が減少しています。
これは最初の黄信号であり、a点と同程度以上の出来高が観測されないことは「上昇トレンドに勢いが無くなっている」ことを指します。

※ただし、実際の相場では必ずしも出来高が以前の高値よりも増加するわけではありません。
それよりも「値動きがトレンド方向に進む時、出来高が『直前の (1つ前の)』ローソク足よりも増加している」ことが重要となります。
もしc点においてa点より出来高が少なくても、c点に到達した時点での出来高が直前の出来高より増加していれば概ね良しとされています。
ここが多少難しい点ですが、このような細かい議論に固執せず進めます。※

c点から下落したd点では、上昇トレンドラインを下に突き抜けていると共に出来高までc点より増加しています。
ここで投資家は「もしかしたらこれは三尊ではないか?」と疑うようになります。

d点から再度e点まで上昇した際、出来高は明らかに減少しています。
上昇時に増加するはずの出来高が減少しているという事実はまさしく、下落相場での値動きと出来高の組み合わせと同じとなります。
またb点・d点のネックラインが引けることにより、投資家は「ネックラインを下回る動きで出来高が増加すれば下落相場入りする」と判断します。

その後、f点まで下落した際に出来高が増加しています。
またネックラインも下回っていることから、「三尊パターンの完成」及び「下降トレンドにおける値動きと出来高の関係性 (下降時に出来高が増加、上昇時に出来高が減少)」が確認され、ようやく買いよりも売りが優勢になるシーンがやってくるのです。


これら一連の流れをまとめると、

  1. まず、普通の上昇トレンドが発生する。

  2. 出来高の増加と共に左肩が形成され、上昇トレンドライン内で調整される。(a点~b点)

  3. 頭の部分で新たな高値が完成するが、出来高は減少する。(c点)

  4. 左肩の高値の水準を下回り、左肩の安値の水準まで押し目を作る。同時に上昇トレンドラインを下に突破する。(d点)

  5. 右肩としてもう一度上昇するが出来高は少ない。また頭の部分まで到達できていない。(e点)

  6. 右肩完成後、左肩・右肩の両方の安値に引けるネックライン (赤線) を値動きが下に突破し、同時に出来高が増加する。(f点)

  7. 値動きはそのまま下落することも多いが、たまにネックライン近くまでの戻りを見せる。(g点)

となります。

ヘッド・アンド・ショルダーズの例 (再掲)

ここで何点か補足します。

左肩の安値であるb点と右肩の安値であるd点は必ずしも同じ高さである必要はありません。
b点よりd点が多少高くても低くても問題はありません。

左肩の高値であるa点と右肩の高値であるe点は同じくらいの高さか、e点がa点よりも低くなりやすいです。
もしe点がa点よりも明確に高くなる場合、三尊パターンとしては多少疑わしくなります。

e点が明らかにc点に近づく場合、そもそも三尊パターンよりもダブルトップに近づきます。
この場合、c点とe点に挟まれた安値 (d点) を下回ればトレンド転換とみて良いでしょう。

三尊パターンの目標値算出
頂点からパターンの安値をつなぐネックラインまでの垂直距離を測る
それから突破した地点に当てることで目標値が算出される

三尊パターンにおいても、目標値算出の方法は「最も幅の広い部分を測定し、その垂直距離を突破した地点に当てる」方法となります。
これは頂点からネックラインまでの距離にあたり、三尊パターンが完成した後の「最低でも到達するであろう目標値」が導き出されます。

なお、今までで語った目標値はすべて最低でも到達するであろう値幅 (最小目標値) であり反転パターンにおける最大目標値は以前のトレンドの全戻しとなります。
これは以前のnoteでのリトレースメントと呼ばれる考え方につながります。

例えば以前のトレンドが上昇トレンドであり三尊パターンが出て反転した際、最低の目標値は上図の目標値算出で出せますが、最大の目標値は「以前の上昇トレンドの起点」となります。
これは俗に「全戻し」と呼ばれ、全戻しをした後はフラットな目線でいることが大事でしょう (再び上昇トレンドかもしれませんし、さらに下落するかもしれません)。


◆逆三尊 (ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム)

【逆三尊】は底のパターンとして知られており、逆三尊が完成すると上昇する示唆となります。
上にて三尊パターンについて説明しましたが、上下をひっくり返すことで逆三尊パターンが完成します。
三尊と同じく、最初の安値である左肩、一番下に深堀りする頭、そして左肩とほぼ高さが同じである右肩の3つの部位に分かれます。

こちらも三尊パターンでのダウ理論と同じく、「高値と安値が切り下がる」下降トレンドのルールに当てはまらなくなるために上昇する、と考えられています。

逆三尊 = ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトムの例
下向きの3つの谷があり、真ん中の谷は左右の2つの谷よりも一つ下に突き出ている

基本的な流れは向きが逆であること以外、上で述べた三尊パターンと何ら変わりません。
a点~c点までは通常の下降トレンドであり、b点に近づくd点まで上昇することで下降トレンドが終了、その後はa点とほぼ同じ水準のe点が出来上がりb点・d点をつないだネックライン (赤線) を上に抜けることで逆三尊が完成します。

b点・d点の位置はネックラインの傾きを決定しますが、通常はネックラインの角度が右肩上がりなら強気であり、角度が右肩下がりであれば弱気を表します。
(図中は右肩下がりのため弱気を表しています)

ネックライン突破後 (逆三尊の完成後) の上昇の目標値も三尊パターンと同じです。
すなわち、底からネックラインまでの垂直距離を測定し、その距離をそのままネックラインの突破した部分に当てることで算出されます。

逆三尊パターンの目標値算出
底からパターンの高値をつなぐネックラインまでの垂直距離を測る
突破した地点に当てれば目標値が算出される

この逆三尊が出た場合「ここから上へ反発しますよ」という黄色信号でもありますが、三尊パターンと違う点がいくつか挙げられます。

  • ネックラインを上に突破した後、もう一度ネックラインまで下に押してくる確率が高いです。

天井で出現する三尊パターンの場合、ネックラインを下に突破した後、ネックラインまでの戻りが「時おり」発生する、と申し上げました。
三尊パターンでは急激な下落が発生することがあり、ネックラインを下に突破した後の戻りが発生しないことも良く見られます。

一方、底で見られる逆三尊ではネックラインを上に突破した後、ネックラインまでの押しが高確率で発生します。
これは天井から値動きが下落する際は重力のような力で落ちることが多いのに対し、底から上昇する際は大きな力が必要になるためです。

逆三尊のネックラインを上に抜けるパワーはとても大きく (出来高にもそれが表れていますが)、ネックラインまでの一時休憩をはさんで再度上昇するケースが多いです。

  • 逆三尊が完成した後のネックラインを上に突破する時、ほぼ必ず出来高が増加します。

天井で出現する三尊の場合は下落時に重力が働くことはすでに述べましたが、これは出来高にも関係してきます。
出来高は相場にどれだけの取引数があるか?を表していますが、これが多いほどその値動きのパワーが増すことに他なりません。

そもそもの相場における一般原則に繋がりますが、天井から重力が働き下落することと底から重力に逆らって上昇すること、どちらがよりパワーが求められるかはもうお分かりかと思います。
どのような相場でも底からの上昇はパワーが求められるため、出来高がより多くなる傾向にあります。

逆三尊パターンと出来高
ダブルダッシュ (") は値動きと対応する出来高を表す
b点までは明確な下降トレンドだが、c点から高値更新に対し出来高は減少している
f点へ上昇する際は出来高が増加する必要がある

逆三尊も相場原則と同じです。
すなわち底からネックラインを上に突破する際、上昇するパワーは大きく増加する傾向にあります。

出来高が増加せず底値圏から上昇する場合は「その値動きが本物である」確率が低下するため注意が必要です。

また複合型の三尊パターン・逆三尊パターンもあります。
すなわち左肩・右肩が変則的な形をしているケースです。

複合型の三尊パターン (複合型ヘッド・アンド・ショルダーズ)
例えば肩が2つ見えたり、肩の中で小さな三尊パターンが出来ているケース
この場合は肩を1つに見立てたり、肩の三尊と全体の三尊の両方の完成を待つのが良い

上図では三尊 (ヘッド・アンド・ショルダーズ) の左肩が目立つ2つの山で構成されており、また右肩は別の小さな三尊が出来上がっています。

「肩部に目立つ2つの山がある」(どちらを肩として扱えば良いかわからない) ケースでは、2つの距離が近ければ1つとして扱う、遠ければパターンの外側の山を肩として扱う、などの対処が考えられます。

「肩に更なる三尊パターンが発生している」場合ですが、右肩の場合は通常の三尊・小さな三尊どちらも完成した時のみ完成と見る左肩の場合はいっそ1つの山と見る (「肩部に目立つ2つの山がある」と同じ) ことも良いでしょう。

また三尊パターン・逆三尊パターンともに、「片側の肩に2つの山があった場合はもう片方の肩にも2つの山ができやすい」ことも覚えておくべきでしょう。
例えば左肩が上図のように2つの山が出来た場合、右肩も2つの山が形成されやすくなります (上図では右肩が三尊になっていますが本来は対称になりやすいです)。

しかしこちらも、あまり細かく議論すると実際のトレードに支障が出るため「三尊パターンは全体を見て判断する」で特段問題は無いと考えられます。


◆継続パターンとしての三尊・逆三尊

上では三尊パターン・逆三尊パターンが共に反転パターンとして説明されていますが、実は三尊・逆三尊ともに継続パターンとしても出現することがあります。

例えば三尊パターンが完成すれば次のトレンドは「下落」のため、以前の下降トレンドの最中に三尊パターンが出現すれば次のトレンドは下降トレンドのはずです。
同じ理由で、上昇トレンドの途中に逆三尊パターンが出現すれば次のトレンドが上昇トレンドとなり、継続パターンの一つとして見ることができます。

トレンド途中に現れた三尊パターン
天井で出た時と同じように、これは弱気のサインとなる
ネックラインを突破すれば下落継続
または単純に水平な支持線を頭部と右肩部の間の安値に引き、突破したら継続でも良い
トレンド途中に出現した逆三尊パターン
底と同じように、これは強気のサインとなる
ネックラインを突破すれば上昇継続

これらは三尊パターンが「下落」、逆三尊パターンが「上昇」を意味することを知っていれば何ら違和感はありません。
ところでトレンド継続中に現れたこれら三尊パターンのネックラインに注目してみると、おおよそ水平線に似た線となっています。

例えば上昇トレンド途中で現れた逆三尊は、左肩部と右肩部の間の高値がおおよそ同じ水準になります。
これは水平線を引けることに他ならず、必ずしもネックラインにこだわる必要はない、ということが言えます。(長方形パターンに少し似ています)

しかしながら横ばい相場になった時に「一つの山だけ上に出ている」とか「谷が一つだけ下に出ている」と気づくだけで、それが完成した際に強いトレンド継続のサインであると確信が持てるため、知っておいて損はないと思われます。


◆拡大トライアングル (ブロードニング・フォーメーション)

上の継続パターンにて「トライアングルには4つの形がある」と申し上げましたが、ここではその4つ目である【拡大トライアングル】について見ていきます。

拡大トライアングルの例
ほとんどが天井で発生しやすく、その後の下落を示唆する
値幅が広がる様は市場の迷いと混乱を表し、出来高も増加していく

拡大トライアングルはその名の通り、時間が進むごとに値動きが広がっていく (まるで三角形が拡大するような) 動きが特徴であり、よく天井にて見られることが多いです。
チャートパターンとして見る機会は少ないですが、現れた際は弱気のパターンとして扱われます。

そもそも、横ばい相場に移行する際は同じ値幅を行き来するか、収束するかの2択がほとんどです。
しかしこの拡大トライアングルは市場が感情的な動きをしており、特に株式指数ではニュースや要人発言によってこの形が作られることがほとんどです。
そのため通常はパターン内で出来高が減少しますが、こと拡大トライアングルに関しては出来高が増加します。

出来高が増加することは市場参加者が増えていることを意味し、ある時に一気に崩れ、買いのポジションを持っている投資家を損切りに巻き込み更なる下落へと導かれやすいです。
もちろんこの形が発生した後に耐えて再度上昇することもあるため過信は禁物ですが、「市場の方向性が定まらない」この拡大トライアングルは天井の優秀なサインになり得ます。


◆ソーサー型 (ソーサーボトムとソーサートップ)

【ソーサーボトム】は底打ちの形として時折チャートに現れます。
パターン内は緩やかな値動きの推移が特徴であり、その値動きがまるでカップの受け皿であるソーサー (saucer) であるかのように見えるためこう呼ばれます。

ソーサーボトムの一例
上図では下降トレンド後にソーサーが形成されており底打ちのサインとなる
パターン内は掴みどころのない値動きが特徴であり、出来高も減少していく
ソーサーの出口付近では上昇時に出来高が回復し、抵抗線を上抜けたら完成

ソーサーボトムはパターンの内部で取引しようとすると難しく、値幅が少ないなかで不規則な (しかし巨視的に見るとまるでカップの受け皿に見える) チャートを描きながら出来高を減少させていきます。
ある程度進むと再び出来高は回復しやすくソーサーボトムに突入する直前の高値 (もしくはソーサーボトムの中に出来た高値) を超えるとパターン完成とみなされます。

ソーサーボトムは「市場参加者が増減する銘柄」で起きることが多いです。
すなわち個別株での発生確率が高く比較的常に多くの参加者がいる株価指数や為替市場 (FX) では発生しづらいです。

同じ理由で原油やゴールド、銀や銅、プラチナや小麦など、商品市場 (コモディティ) では参加者の増減があるため、個別株の次に見られやすいです。

ソーサーボトムを築いている期間は数か月、時には数年もの長い年月をかけていることが多く、適正なソーサーボトムが完成した暁には非常に強力な上昇トレンドが待っていることが多いです。

これを応用した【カップ・ウィズ・ハンドル】 (取っ手付きカップ) も強力な上昇示唆となります。

取っ手付きカップ (カップ・ウィズ・ハンドル)
先ほどのソーサーボトムに取っ手のようなものが付いた形
取っ手は「ふるい落とし」が行われている証拠
(赤線はカップと取っ手の形を表し、緑水平線は取っ手開始地点の高値を表す)

カップ・ウィズ・ハンドルも個別株で良く見られる形であり、先ほどのソーサーボトムに取っ手 (ハンドル) が付いたもの、という認識で間違いないでしょう。

このカップ・ウィズ・ハンドルの形成は2段階に分かれます。
まずカップ部分でしっかり売り手が少なくなることを確認し、ある時ちょっとした上昇を経て取っ手部分に移行します。
この取っ手部分では出来高が上昇していることが望ましいですが、取っ手部分のエリアではわずかに安値が切り下がる形が望ましいです。

上図では取っ手 (緑水平線が引いてある部分から取っ手が開始します) の領域で安値が切り下がるジグザグが発生していることが見て取れます。
この「取っ手部分で安値が切り下がる」ことは「ふるい落とし」と呼ばれ、一気に上昇する前に弱い買い手を損切りさせることで、強い買い手 (機関投資家やヘッジファンドなど) が更に買い集める局面でもあります。

「ふるい落とし」が行われたあと、取っ手部分の高値を上に突破すると買いの合図となり、通常はここで買う投資家が多いです。

しかし念のため、取っ手付きカップに突入する前の高値 (上図では紫水平線) を上に突破してから買うという選択肢でも問題はありません。

なおカップ・ウィズ・ハンドルのパターンではカップ部分から取っ手部分へと移行する上昇期に、出来高が増加していることが望ましいです。
底から上昇するためには大きなパワー (出来高) が必要だと述べましたが、ここでもその法則が適用されます。


ソーサーボトムを上下に反転させるとソーサートップに切り替わります。

ソーサートップ
ソーサーボトムをそのまま反転させた形
出来高はソーサーボトムと同じ軌跡をたどる

【ソーサートップ】はあまり見る機会がありませんが、上昇トレンドが緩やかに終わり、横ばい相場を経て下降トレンドへと向かうのが特徴です。
出来高の推移はソーサーボトムと非常に似ており、パターンの中央で出来高は減少しやすいです。

ソーサートップの完成には、ソーサートップ突入前の安値に引いた水平線を下に突破する条件が必要となります。

ソーサートップは時折、三尊パターン (ヘッド・アンド・ショルダー) に似てくることがありますが、いずれにせよ「緩やかに上昇トレンドから下降トレンドに向かう」というポイントだけでも押さえると良いでしょう。


◆スパイク型 (V字型) とギャップ (窓) の関係

【スパイク】はV字型とも言われしばしば相場で見られます。
この形は突如として出現しますが、何の前触れもなく発生することが多いです。
また出来高は急増しやすく、急増した出来高と共にトレンドが反転しやすい形です。

スパイク型 (V字型) と呼ばれるパターン
一気に急騰したと思えばすぐに戻ってくる
「いってこい」とも言われ、これは急落時にも起こる

スパイク型は値動きの急騰・急落と共に発生し、市場参加者をだます動きを見せます。
上昇トレンドでは急騰したのちに急落、下降トレンドでは急落したのちに急騰しますが、この急騰・急落から戻ってくるパターンは「ギャップ」と呼ばれるパターンにも深く関係します。


【ギャップ】とは日本語で「窓」と言われ、通常は非常に強い値動きのことを指します。
上図では分かりやすさを優先しスパイク型が連続した線になっていますが、実際のチャートはローソク足で見ることが多いはずです。

このローソク足が「連続しない状況」がしばしば発生しますが、これを「窓」と呼び特に明確な抵抗線や支持線を突破した時に発生する窓は強いトレンドを示します。

「ギャップ」と呼ばれる空間
例えば上昇トレンドの途中にギャップが出現すると強いトレンドとなる
またこのギャップを「埋めない」ことが強いトレンドの継続には重要となる

この窓が発生する状況を「窓開き」と呼び、発生した窓がふさがることを「窓埋め」と呼びます。
そもそも窓は「抵抗線や支持線の拡張版」であり、上図では上昇時に窓が開いたため、この窓が支持線となります (窓のエリアすべてが支持帯)。

ギャップが支持線となった例
上昇トレンド途中に発生した窓が空間ごと支持線 (支持帯) になった
これを埋めてから上昇することもあれば埋めずに上昇することもある
なお埋めた後も下落するようであれば、そのトレンドは弱い

このように「窓を埋めずに更なる上昇を試みる」または「窓を埋めてから再度上昇していく」チャートはいずれも強いトレンドとなります。
(窓を埋めずに上昇する方がより強いトレンドです)
また上昇時に窓を開けることを【ギャップアップ】とも呼びます。

下降トレンド時も同じであり、窓が発生した下降トレンドは非常に強く、時にパニック売りを呼ぶことがあります。(こちらは【ギャップダウン】)

下降トレンド時の窓開け
この窓 (ギャップ) は抵抗帯となり、価格の上昇を阻む
特に下降トレンドはパニック売りなどで値動きが急激に進むことが多い
逆に、窓埋めをした後に上昇するとトレンド転換の可能性が高まる

窓についての基本的な事項を整理したうえで先ほどのスパイクに戻ります。

先ほどのスパイクはあくまでも「値動きが連続した線」のお話でしたが、これでは実際に使うローソク足において解像度が低いためもう少し深堀りします。


上で述べたスパイク、もとい値動きの急変は実際のローソク足において2つのパターン、すなわち《窓を伴う値動きの急変》と《窓を伴わない値動きの急変》に分かれます。

最初に《窓を伴う値動きの急変》について触れます。

窓を伴う値動きの急変は強いトレンドを示唆します。
この窓はトレンドの初期・中期・後期 (トレンドの反転時期) に合わせて役割が異なってきます。

窓を伴う値動きの急変
それぞれ窓の名前が違うが、大切なのはそれぞれの特性を理解すること
また必ずしも3種類のギャップが綺麗に出現するとは限らない

● ブレイクアウェーギャップ (Breakaway gap)

【ブレイクアウェーギャップ】はトレンドの初期に出現し、通常は底固めがしっかりした相場に強いトレンドの開始を告げてくれるサインです。
底固めがしっかりした相場とは横ばい相場であり、限られた範囲を往来した値動きが何らかのきっかけで横ばい相場から離れて強力な上昇や下降をすると、次のローソク足が窓を開けて開始します。

ブレイクアウェーギャップは普通、埋められることなくトレンドが加速していきやすいです。
またギャップを開けたと同時に出来高は増加しますが、出来高が多いほどブレイクアウェーギャップが本物である、つまり埋められずにトレンドが継続していく確率が高まります。

このギャップは窓の役目と同じく「抵抗線」や「支持線」の役割を果たします。

これから出てくるギャップもこの応用形に過ぎません。
しかしブレイクアウェーギャップが上方向に出現し思いきって買ったら、実はダマシの動きでそのまま下に戻ってくるようなこともあるため注意が必要です。

● ランナウェーギャップ (Runaway gap)

【ランナウェーギャップ】は強いトレンドを裏付ける窓を指します。
トレンドの途中に発生し、「まだまだこのトレンドは強い」というローソク足からのサインとなります。
出来高は適度にある状態が普通 (急増する必要は無し)であり、窓の法則の通り、ランナウェーギャップが出現すればその領域は支持線・抵抗線になります。

● エグゾースチョンギャップ (Exhaustion gap)

エグゾースチョンとは「疲労」とか「ガス欠」という意味です。
文字通り、市場が最後の力を振り絞って上昇・下降し、燃料切れを表す状態です。
出来高も増加することが多いです。

【エグゾースチョンギャップ】は「これ以上トレンドが継続できない」示唆でもあり、通常はここから窓を埋めてそのままトレンドが反転または「アイランドリバーサル」と呼ばれる、値動きが連続しない「孤島」が現れることもあります

● アイランドリバーサル (Island reversal)

例えば上昇トレンドでは窓を開けた後、少しの期間横ばい相場に移行し、下方向に窓を再び開けると共にトレンド転換することがあります。
この時、以前のトレンド・以後のトレンドの両方と値動きが連続せず、まるで海に浮かぶ孤島のような形をした領域が出現することがあります。

これを【アイランドリバーサル】と呼び天井では「アイランドリバーサル・トップ」、底では「アイランドリバーサル・ボトム」と呼ぶ投資家もいます。

アイランドリバーサルは強いトレンド転換のサインとなり、完成した場合は高い確率で今までのトレンドの反対側を行くことが知られています。

これら4種類の「窓を伴う値動きの急変」における窓は必ずしも上図のようになるわけではありません。

上図では
「ブレイクアウェーギャップ」→「ランナウェーギャップ」→「エグゾースチョンギャップ」→「アイランドリバーサル」
非常にきれいなトレンド転換をしています。

しかし実際のチャートでは
「ブレイクアウェーギャップ」→「エグゾースチョンギャップ」
途中からトレンド転換に傾いたりすることも多いです。
またアイランドリバーサルも必ず挟むわけではないため、ここで深追いせず「こういうのもあるんだ」くらいの認識で全く問題ありません。

いずれのギャップも名称や順番を覚えるよりそれぞれのギャップの特徴を押さえ、どう対処していくかを考えるために用いるのが良いでしょう。


ここからは《窓を伴わない値動きの急変》について触れていきます。

率直な話、窓を伴わない値動きの急変は相場の世界では日常的に発生します。

そもそも何をもって急変とするか?の議論は非常に難しく、例えば長らく横ばい相場であったものが上昇トレンドに入った時も値動きの急変と言えますが、これは非常に健全な「値動きの急変」でしょう。

ここではそのような値動きの急変よりも、上で述べた「スパイク (V字型)」について説明します。

● クライマックス (Climax)

たまに経済ニュースなどで【セリング・クライマックス】という用語を聞いたことが皆さんもあるかもしれません。
セリング・クライマックスは売りが殺到することを指した言葉であり、出来高が急増し一気に売られた後、売る投資家がいなくなった相場が短期的に反転上昇することを指します。

同じような形で【バイイング・クライマックス】もあります。
すなわち買いが殺到することで一気に値が上昇し、これ以上誰も買わなくなる水準まで上がったところで反転下落する形です。

バイイング・クライマックスの例
一気に上昇した後に出来高の急増を伴い、買い手がいなくなるため価格は反転する
図はヒゲだが、実体でも発生する (値動きの急伸 + 出来高の急増がカギ)
セリング・クライマックスはこれが上下反転するだけ

上図はバイイング・クライマックスの例です。
赤〇は出来高の急増を表しており、対応するローソク足を見ると上ヒゲの陰線が出来ています。
これは値動きが更なる上を目指し激しく動いた後、力尽きて売られた痕跡となっていますが、実際のチャートではヒゲではなく実体での動きでもクライマックスとなり得ます。

また天井のローソク2本に注目してみます。
大きな上ヒゲがまさに出ているローソク足 (青い陰線) が、その直前のローソク足 (赤い陽線) よりも明らかに大きなローソク足となっています。

これを「包み足」(アウトサイド・デイ) と呼び、上昇トレンドの終盤に「新高値を付けながらも、前日の安値より下で引ける」ローソク足が出現すると天井示唆となりやすいです。
青い陰線が、直前の赤い陽線をまるで包んでいるように見えることからこう呼ばれています。

※必ず「包み足」になるわけではなく、あくまでもそういう足があることだけ知っておけばOKです。※

なお、このようなクライマックスは「リバーサル・デイ」とも呼ばれます。

リバーサル・デイは「反転日」と呼ばれており、例えば天井におけるトップ・リバーサルデイは「新高値を付けながらも、前日の終値 (安値ではない) より下で引ける」ことを指します。
(先ほどの包み足と比較すると、前日の「終値」か「安値」の微妙な違いが存在します)

しかしここを突き詰めることは重箱の隅をつつくことに他ならないため、出来高が急増し値動きが急変するクライマックスのみ覚えておけば問題ないと考えられます。

セリング・クライマックスの例
バイイング・クライマックスと同じく、急落しつつも出来高は急増
売り手が市場から一時的にいなくなり、価格はフラっと上がる

以上で主要な継続・反転パターンは終了です。お疲れさまでした。

今回までは分かりやすいように図も併用しましたが、次回以降は実際のチャートを使って参ります (なるべくわかりやすさを重視します)。

次回は出来高についてもう少し詳しく扱いながら、実際の相場で使いやすい「動くトレンドライン」である移動平均線とオシレータについて説明する予定です。

※この記事は加筆訂正することがあります。

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