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P20 創成期

いったい、私は何の話を聞いているのだろう?

たった一つの質問から人生だの、戦争だの、世界観だの、突発的に話のスケールが広がっているのだ。

このままでは、ビックバンが起きても仕方ない。


「ひとつだけいいですか?」

私は話を整理する為にも、一度この流れを変える必要があった。

全ての話は終わるべき時があるし、新たに始める必要がある時もあるのだ。


「なんや?」


「正直…あの手紙の意味は私には理解できていません。

だから、この答えは、あなたの言う観念,なのかもしれませんが…」


私は話をふりだしに戻した。


「私は…”まだそこにいない”と思います」


彼はじっと私を観ていた。

いいや、彼の視野にたまたま私が入っているといった感じだった。

空気を整えるように少しの間をおいて彼が沈黙を破った。


「わしはアキっていうんや」

私は一瞬、彼が何を言っているのかわからず、混乱した。


「明るいに希望の希でアキや」

そこまで聞いて私は彼が名乗っているのだと理解できた。

ここまできてやっと私はひとつだけ、明希のことを知れたわけだ。


明希は私の答えに対しての答えを示さなかった。

いいや、彼が名乗ったことがある種の答えだったのかもしれない。


「また伺いたいことがあるんですが…」


「なんや?」

「私が”そこ”にたどり着くにはどうしたら良いのでしょうか?」



私はここで初めて理解できた。


言っていた”そこ”というのは

私の人生のことだった。



私は私の人生を生きていなかった。


「そんなことわしが分かるわけがないやん、わしは君の先生でも、神様でもないんやで」

わずかな希望を持って聞いた問いは跳ね除けられた。


「また相手の言ったことで自分を正そうとしとるやろ?

仮にわしがこうしなさいとかアドバイスしたところでそれが君にとっての答えとは限らへんねんで?

道を切り開くどころか、迷う要素が増えるだけや

本当の意味で誰も君を変えるチカラはない

君を変えるのは君の決断や


ええか、

決断なき、変化は変化やない」


その時の彼の話は14歳の私が理解するには早すぎたかもしれない。

いいや、14歳だったからこそ、真面目に聞き入れられたのかもしれない。


それとも、そのタイミングで彼に会い、その話を聞いたことはある種の縁であり、定めであり、宿命だったのかもしれない。


きっと大人になっても時折思い出し、再現し、記憶を棚卸しし、検証するのだろうか。


世界は、奇跡によって成り立っているということを



第一章 終わり




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近日中にここまでの掲載したものを総編集したものを掲載予定です。


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