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【短期集中連載】ジャニーズカルテル(3)~メディアの犯罪

割引あり

ニューヨークタイムズで最初のジャニーズ記事を入稿すると、ジャニー喜多川氏の写真が必要ということになりました。実は、現在NYタイムズの使っている写真は、噂の真相の故・岡留安則さんから入手したものなんですが、これを手に入れるのに大変苦労しました。

当初はNYタイムズと契約していた共同通信がジャニーさんの写真を貸してくれたんです。ところが、ニューヨークタイムズ本社に写真を電送し、いざ掲載だというときにストップがかかったのです。

突然、共同通信から「理由は言えないが、とにかく弊社の写真を使わないでくれ」と連絡があったのです。納得ができないので理由を糺してもはっきりと答えない。印刷に回す直前で止められないというと、どうしてもというのならば、使ってもいいが、その代わり共同通信のクレジットは絶対に外してくれと変なお願いをされたのでした。

普段だったら、「必ず共同通信のクレジットを入れてくれ」というのに、この時は「共同通信クレジットを外してくれ」「料金もいらない」と懇願されるのです。いったい何が起きているのか、恐ろしいものを感じるというよりも、抑えきれない興味が湧きました。

ニューヨークタイムズは、その社内規定で、クレジット無しの写真を使うことはできません。結局、共同通信の写真はあきらめたんですね。しかし、皮肉なことに、共同通信のこの対応をみて、タイムズ本社ではジャニー喜多川という人物への関心が強まることになります。いったい、ジャニー喜多川という人物はどれほどパワフルな人物なんだ!これは是が非でも記事化しようではないか!ということになってしまったのです。圧力が通じるのは日本のメディアだけで、海外のメディアには逆効果だという良い典型です。

たかが写真の掲載だけで、大手メディアが圧力に屈ってしまうというのは、世界的にも稀なことでした。ましてや先進国の日本で起きていることです。前代未聞の出来事に、ニューヨークタイムズ本社からは、なんとかして写真を手に入れられないのかと私へ直接の依頼が繰り返しあったほどです。

次にアプローチしたのは、朝日新聞でした。当時分社化する前の出版部門でジャニーズの写真を使っていたので、貸してくれと頼みに行ったのです。答えは断じてNOでした。その代わり、朝日新聞による忖度調査が始まります。

当時、ニューヨークタイムズ東京支局は朝日新聞の東京本社の社屋に入っていたのですが、連日のように、役員から編集委員、あるいは営業から編集部門の様々な人たちが、私のもとにやって来て、どこまで取材が進んでいるのか?どんな記事を出すつもりなのか?記事化は止めたほうがいいのではないか?と忠告をしてくれるのです。中には、ジャニーズの取材を止めるのだったら別のスクープの情報源を教えるとか、それはそれは、手を変え品を変え、取材の中止を要請してくるのです。

ニューヨークタイムズは当然ながら、朝日新聞からのすべての申し出を断りました。むしろ、朝日新聞もきちんと報道すべきでは?なんなら協力すると申し出たのです。すると朝日新聞側の回答は驚きのものでした。当時の編集のトップが、はっきりと私にこう言ったのを覚えています。

「ニューヨークタイムズが3回ジャニーズの記事を扱ったら、弊社も取材を開始してもいい」

それは、まったく意味不明の交換条件の提示でした。朝日新聞はジャニーズ事務所の何を担っていたのでしょう。答えはすぐに判明します。直後、朝日新聞はSMAPのメンバーを使って、朝日「新」新聞のキャンペーンを始めたのです。これについても、わかりやすいジャーナリズムの腐敗として、タイムズ本社の関心が高まる理由になりました。

実は、ニューヨークタイムズとしては、朝日新聞の報道に対しての関心は皆無でした。淡々と、記事にする価値のあるものを記事にするだけです。結局、朝日新聞社にはジャニーズ取材などする気はなく、結論からいえば、今回の騒動が起こるまで、ただのひとりもジャニーズ事務所による組織的な児童虐待について、真剣に記事にすることはありませんでした。

朝日新聞による取材妨害の後に起きたのが、フジテレビによる取材スパイ行為でした。これも実に不思議な話でした。ニューヨークタイムズのチームによって行われたのべ50人ほどの当事者や関係者への数か月の取材の結果、いよいよ記事化するという直前になって、実は日本のメディアもジャニーズ事務所の犯罪を知っているだけではなく、共犯関係にあるのではないかという疑念がNYタイムズ本社内で湧き、記事化する前に確認のためのマスコミ調査をすることになったのです。

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