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ヴィンテージカーのレストモッド工場Kindred Motorworks

 「サステイナブル(持続可能な)」を枕詞にするあれこれが日常の中で増加してきました。サステイナブル食材(合成肉・昆虫食・垂直農園)、サステイナブル素材(バイオプラスチック・リサイクル素材)など、グリーンプレミアム(環境に優しい選択肢を選ぶ際に発生する追加コストや負荷)を惜しまなければ、自分自身の身の回りを「サステイナブルな何か」で固めることができるようになってきました。

 タイトルにある「ヴィンテージ」は、古くても価値が高いものとして車・時計・ファッション・家具(長持ちなのは*アンティークという括り?)等のアイテムと一緒に出てくることが多く、長く使い続けることがサステイナブルのコンテクストにマッチするため、改めて注目度が高くなってきていように感じます。

*ヴィンテージとアンティークの違いは100年というタイムラインを分岐点に、100年前のものはアンティーク。100年たってないもので価値のあるものはヴィンテージと言うらしい。

 「ヴィンテージ」の古着やクラシックカー等をリメイクやレストアして価値を見出す「アップサイクル」という言葉も多く見かけえるようになりました。「リサイクル」の素材を資源の状態まで戻し再構築する手法と違い、「アップサイクル」は、古い素材や廃棄物となるはずだったものの良さを活かします。メッセージ性が強いためアート文脈でも使われることも多くなってきています。

 一つ一つの言葉の定義がフワッとしたまま使われるので、各言葉を再確認しようと思ったら固い感じになってしまいました。要は「サステイナブルな生き方=格好が良い」「古くてもイケてるもの=格好が良い」「アップサイクルなプロジェクト=社会的評価が高くなる」というようなトレンドが今ここにある!のだと思います。このようなことを考えていた時に、ヴィンテージカーを全力でレストアモッドするスタートアップのニュースがあったのでそれを紹介したいがために、固い導入となりました。。。

ヴィンテージカーをレストモッドするKindred Motorworks

kindredmotorworks.com参照

 見た目はレトロなワーゲンバスです。町中で一度話見かけたことはあるであろう可愛いバンです。「フォルクスワーゲン・タイプ2 T1」という名称で1950年から1967年まで製造されていました。中古でもキレイなものあれば300万円以上する現在でも人気のヴィンテージカーです。Kindred Motorworksは、ヴィンテージのワーゲンバスをレストモッドして電気自動車に改造するスタートアップです。

 レストモッドとは、「レストア(修理・修復する)」と「モッド(モディフィケーション・改造する)」を組み合わせた言葉です。「レストア」は、Netflixでレストレーラーを視聴するとそのエッセンスは理解できます。オンボロ自動車がピッカピカになる様子は面白い。しかし、レストアは結局もとの筐体ありきで「修理・修復」するのが基本となります。「モッド」は魔改造的なニュアンスも含むのですが、Kindred Motorworksはヴィンテージカーを最先端の自動車に改造するのを生業としています。自らのブランド名を全面に押し出したKINDRED VW BUSは、強気の$199,000〜と高額であり、2024年度から納品を開始するとのことです。電動自動車化されたワーゲンバスは74kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は320キロ程です。(レストアモッドされたワーゲンバスはこちら

kindredmotorworks.com参照

 Kindred Motorworksでは、「フォルクスワーゲン・タイプ2 T1」オリジナルの11または13ウィンドゥタイプを素材として、全て21ウィンドゥモデルとして製品化しています。アップサイクルなアプローチですね。素材のヴィンテージカーを徹底的に分解し、再構築するプロセスを完全にマニュアル化することで、レストア職人のみに属人化せずに、多くの作業員が対応できるようにしています。レストア作業は基本的に1回きりのプロジェクトが多く、職人の経験値への依存度が高くなってしまいます。レストモッドする車種を限定し、細かく工程を分解して各作業を動画で撮影し、ラインに入る作業員が熟練工でなくとも、Day1から稼働できる程徹底した作業工程マニュアルを作ることに成功しました。

 また、レストアモッドされた自動車はスペックが同じであり、新車のように同一の自動車が大量生産されていきます(もちろん初期のロット数は少ない)。生産した全車両に1年間の保証も提供する点も従来のレストモッドブランドと異なります。とはいえ、レストモッドの難易度は以前高く、Kindred Motorworksは、ワーゲンバス、フォードのブロンコ、シボレーのカマロ2サイズの4種類のみを初期生産ラインとして扱う予定です。

kindredmotorworks.com参照

 Kindred Motorworksの投資家には、ロバート・ダウニーJr.が2020年に立ち上げたFootprint Coalition(ロボティクス技術とナノテクノロジーを活用して地球をきれいにすることを目的とした団体)や、ヴィンテージカー向け保険会社大手のHagerty等が名を連ねています。2021年12月までに累計$20M規模の資金調達を行っています。30名体制のチームを2024年頃までに300人体制まで拡大していくようです。

 日本でも販売してほしいが、KINDRED VW BUSの価格が日本円で約2,800万円($199,00-:$1 = ¥140計算)という点を考えると、非常に悩ましいです。フォルクスワーゲンの新しいバン「ID.Buzz」はバリバリの電気自動車で且つ最新技術が詰め込まれて900万円ほど(€65,000:1€ = ¥140計算)で販売予定とのこと。最先端の新製品の方がヴィンテージよりも安くなる。

フォルクスワーゲンのプレスより

 サステイナブルな生活は格好良いが、グリーンコストが高くなる。そんなことを気にせず環境に優しい人になれるために、まず稼げ!ということでしょうか。もちろん、グリーンコストの低い環境に優しい消費財も多くあるので、できることからやってみるのが基本となるでしょう。

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