給料は麻薬だ。

 ぼくが会社を辞めようと思ったのは、昨年の秋ごろだ。

 しかし、すぐには辞められなかった。進行中のプロジェクトがあったこともあるが、正直な話、ぼくを引き止めていたのは「お金」だった。

 給料は麻薬みたいだ、と思った。

 会社員は、毎月毎月決まった日にお金が振り込まれる。これは得も言われぬ安心感がある。金額の多寡ではない。結果を出しても出さなくても、仮に病気で寝込んだとしても、一定の金額がリズムよく支払われるというところに安心という「中毒性」があるのだ。

 会社を辞めるというのは、この「安心」を断ち切るということだ。実はこれが、メンタル的になかなかしんどかった。

「給料を断ち切ることで、食えなくなるのではないか……」

 貯金がないわけではない。退職金もそこそこ出る。それでも、なぜだか「不安感」はたびたびぼくを襲ってきた。退職を決意してから実際に辞めるまでには、それなりの時間が必要だった。

フローとしての給料か、ストックとしての資産か

 会社を辞めるというのは、給料を断つということだ。これは当然「リスク」である。

 ただ、一方でこうも考えた。

「じゃあ、会社にいつづけたらリスクはないのだろうか?」

 ぼくは「そんなことはない」と思った。経済も不安定だし、業界も、会社もどうなるかはわからない。そんな不確実な状況のなか、自分で稼ぐ力や大した資産もないまま、このまま給料をもらい続けることも「リスク」なんじゃないかと思ったのだ。

 それよりも、一定期間は不安定になるかもしれないが、自分なりに稼ぐ方法を見つけ、力をつけ、ほんとうの「資産」を蓄えること。そのほうが「安心」なのではないか。その考えにシフトしたとき、会社員はむしろ「丸腰」であるように思えてきたのだ。

 会社に所属している限りは「給料」がもらえる。しかし、「権利」や「資産」はあくまで会社のものだ。「フロー」としての給料をもらいつつ、「ストック」は会社に貯まっていく。もちろん個人でSNSができる人は「実績」がストックになるのかもしれないが、「権利」や「資産」はあくまで会社に属する。

 それをどう思うか――。

 ぼくは結局、会社を辞めることを選んだ。これが正解だったかどうかは、まだわからない。しかし、少なくとも「後悔しない選択」ができたことはよかったと思っている。


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竹村俊助/編集者

編集・ライティングのWORDS代表。ダイヤモンド社を経て独立。『佐藤可士和の打ち合わせ』『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平)『段取りの教科書』(水野学)『メモの魔力』『ストロング本能』等の編集・ライティング。WEB時代の伝わる文章について研究してます。ポテトサラダが好き。

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コメント1件

給料について考えたことがなかったので、とても面白いと思いました!安定に安心してしまうと、いつのまにか安定に依存してしまうのかな、そしたらいつか「私のやりたいこと」は心のどっか底に行っちゃって、安定は正しいことだと思い込んじゃいそうで怖いなと思いました。私が大きくなって会社員になっても「私は何をやりたいのか」を自問自答し続けたいなと思いました。
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