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『X』の『物語』は最後に誰を選ぶのか?

WWE『ロイヤルランブル』の余韻が心地よく残っている。
WWEファンにとってはここから『レッスルマニア』までの数週間は毎年なんともいえないワクワクできる良い時期である。更に今年は男子勝者コーディ・ローズの唱える『物語』の終わりへの期待が例年になく高まっている。
コロナ禍を逆手にとったローマン・レインズの4年近く続いた長期政権はセス・ロリンズがレッスルマニア史上初のMITBキャッシュインに成功したWM31からのブロック・レスナーとシールドの10年『物語』の集大成でもある。

コロナ禍の逆手としてWWEはもう一つレッスルマニアを2日続けての開催に踏み切った。もちろんこれはコロナ直前に新日本が行った1・4、5(土日に重なった為)への対抗心もあったとは思うが選手層の厚いWWEにとってはそれ以上にメインを2試合組める利点があるからこそ続けているのだと思う。そしてもし今年も初日が女子によるメインだとすれば。。。遂に日本人レスラーが初日としてもレッスルマニアのメインを張る可能性がある!
昨日の女子ランブル戦を制したベイリーはおそらくSD側の女子王者イヨ・スカイ(紫雷イオ)を指名すると思われる。正直ASUKAとカイリが参戦した際にはここでダメージコントロール内での仲間割れが起きWMでは女子タッグ王座戦として歌舞伎ウォリアーズに対してベイリーのパートナーとしてサーシャ・バンクス(現メルセデス・モネ)が復帰するのか?と期待したが。。。WMメインにイヨが登場する(しかも王者なので最後に入場の可能性も)ならベビーフェース入場曲に戻したベイリーvsイヨで納得である。
しかしである!これ以上に魅力的な女子王座戦のカードも昨日見えてきた。
サプライズ登場の元AEWジェイド・カーギルと今が全盛期とも言える『マミー』リア・リプリーの対戦こそがやや悔しいがレッスルマニアXL初日のメインとしては相応しいのかもしれない。そんな事を考えていた時にレッスルマニア40年『物語』における『X』の存在を思い出してしまったのだ。

昨日も簡単に触れたがレッスルマニアの40年とはヴィンス・マクマホンによる『少年ファン開拓期』の前半10年と『大人になった彼への姿勢(Attitude)期』の後半10年を2回繰り返した『物語』と私は思う。
レッスルマニア1~9までの主役は文句なくハルク・ホーガンであり彼の唱えた『トレーニング、神への祈り、ビタミン摂取』は明らかにそこから何10年も観続けてくれる少年ファンの開拓期でもあった。WM21で初めてWWE王者になってからWM29のロックへのリベンジまで『レッツゴー~』と『~サッ●ス』の狭間をタフに潜り抜けたジョン・シーナは慈善活動『メイクアウイッシュ』を最も多く活動した事でも有名である。シーナについては賛否あって致し方ないと思うが。。。『nWo』のようにチェーン・ギャング復活で大きな波を起こす事もできながら最後まで夢を壊すことをしなかった(できなかった?)時代のレスラーとして同時代を生きた棚橋選手同様にリスペクトしたい。『ピースメイカー』はそんな息抜きが良かったのだ。
さて前半10年と言っておきながら実はヒーローの時代は9年だったとも言える。10年目の年。。。ローマ数字『X』はレッスルマニアにとって10年に一回自然発生?的に起こるヴィンス=権威への反旗の時代なのである。

ヴィンス・マクマホンが大型のマッチョレスラーが好みだったのは有名な話である。逆に言えばどんなに優れたアスリート・テクニシャンであってもそれはヴィンスにとってはあくまで主役としては認めたくない存在だった。
レッスルマニア10年に一度の『X』とはそんなヴィンスの目論見をことごとく跳ね返してきたベストテクニシャンレスラーの為の『物語』だった。
レッスルマニア10本来の主役は前年のサマースラムで王者ヨコヅナをスラムしたヴィンス好みの『次世代ホーガン』レックス・ルーガーの筈だったがMSGの観客はゴリ押しルーガーよりも苦労人ブレット『ヒットマン』ハートを王者に選んだ。レッスルマニア20ではゴールドバーグvsブロック・レスナー(UFC前)というヴィンス好みのド級カードに理由(両者とも離脱確定時点)はあるにせよ大ブーイングが行われメイン後に日本のスーパーJrで活躍もしたクリス・ベノワとエディ・ゲレロのW戴冠をまるで親友の結婚披露宴のようにMSG観客は祝福した。レッスルマニア30は言わずと知れた『イエスムーブメント』の年であった。本来はランディ・オートンvsバティスタがメインの筈だったがそこにダニエル・ブライアンが割り込みあれよあれよと主役の座を奪い去った。ちなみにこの時しばらく離れていたバティスタが復帰即メインのポジションを与えられた事で『情熱を失った』とWWEを離脱したのが昨日PLEに久々復活したCMパンクだった。

そして4回目の『X』がレッスルマニアXL(40)である。私は昨年ウィル・オスプレイの新日本離脱が噂された辺りからゾクゾクしていたのだが残念?ながらそれは違った(苦笑)。数年前まではケニー・オメガのWWE移籍でAJvsケニーの実現も期待していたし、或いは昨日のランブル戦でオカダのサプライズ登場があるのならとも思ったが今はそのどれも違うと思う。
前述の過去3回の『Ⅹ』に当てはまる存在はおのずと。。。イヨ・スカイとジェイド・カーギルの関係なのだと今は確信している。レッスルマニア40年『物語』の中でも特に異質だった11~19までは後に『Attitude』と当時WWFが提唱したWCW/nWoとの『マンデーナイトウオー』時代と重なる。私は昨日悩んだ末にこの時代の象徴をザ・ロック(ドゥウェイン・ジョンソン)を選んだがそれは彼が継承者だったからである。スティングやゴールドバーグはホーガンを破り王者になる大舞台を準備されながらもロックのような継承を成し遂げられなかった。その意味での象徴としたが瞬間風速としては文句なく『ストーンコールド』スティーブ・オースティンこそがこの時代のアイコンであった。ロックからシーナへの継承は残念ながら成功とは言えなかった(ハリウッドで期待)がここを強引に繋いでくれたのがアンダーテイカー、ブロック・レスナーからローマン・レインズへの流れだとすれば。。。ストーンコールド的な何かを継承した存在はWM35の女子による史上初のメインに奇跡的にたどり着いたベッキー・リンチだと思う。冒頭で触れたWM31~39までの『物語』と並行しこの時代の主役は『Diva』から脱皮した『Womens Division』の『物語』の集大成でもあるのだ。
ただこれまでの3回と異なるのは絶対権威たるヴィンス・マクマホンが去った事である。『X』は果たしてイヨvsベイリーとリプリーvsカーギルのどちらを『女神』としてメインに選ぶのだろうか。。。

最後にもう一つの『Ⅹ』について触れてこの回を締めたい。
プロレス界において『Ⅹ』とはその瞬間まで隠しておきたい存在を現すことが多い。しかしある瞬間に『X』は別の何かを現すアイコンにもなった。
ここまで語ってきた『X』の集大成として本音を言えばレッスルマニアXLではAJスタイルズに何かを成し遂げて欲しかった。。。というか今ももちろんまだ期待している!それはAJこそが別の意味でもそして10年に1度の『X』も背負った唯一の存在だからである。今回女子ランブル戦にサプライズ参戦したのが他団体『TNA』だったが。。。その団体名『Total Nonstop Action』を最も体現していたのがAJスタイルズであり『X Division』という価値観でもあった。これは藤波さんがMSGから持ち帰ったWWFジュニア王座をタイガーマスク、ダイナマイト・キッド等の『神の時代』を経てライガーさん等のIWGPジュニアに受け継がれた上でWCWやECWに逆輸入されたものが醸成されて出来上がったスタイルでありその価値観はアダム・コール辺りまでのNXT王座に継承され現在それはAEWに流失したのかもしれないし今年のレッスルマニアに『聖杯』としてまだ残されているのかもしれない。話がそちらの『物語』にそれたので戻したい。
否実はつながっている。では『X』の起源とはどこだったのか?それはやはりレッスルマニアX(10)だったのだと思う。それはあの日『X』の扉から最初に登場しホーガン的世界観を一新したオーエン・ハートさんであり、あの日大舞台では初解禁の未知なるラダーマッチでその才能を魅せ付けたHBKショーン・マイケルズとも言える。ここには権利上で貼付できないが是非とも『HBK』『ラダーマッチ』等で画像検索して頂きたい。ラダーからボディプレスで飛ぶHBKさんと『X』が重なったあの瞬間が全ての始まりである。私は Youtubeチャンネルを楽しみにしてるくらいブル中野さんは好きなレスラーだが。。。HOF(WWE殿堂入り)2024 の日本人枠に関しては今年は『X』の始祖とも言える初代タイガーマスクさん或いはJBエンジェルスに譲って頂けると嬉しいのだが。。。

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