文化国家の子どもたちへ|田辺平学の児童書『世界の家:21のナゾ』を読む
1922年、東京帝大建築学科を卒業した若き建築学者・田辺平学は、同年9月、建築構造学の研究を深めるべくドイツ、イギリス、そしてアメリカへと2年間留学する機会を得ました。日本から遠く離れたドイツの地で田辺は後の人生を大きく変える2つの体験をしたと、後に著書『耐火建築』(資料社、1949年)に書き留めています。
ひとつ目の体験は、留学先でたまたま遭遇した火災現場でのこと。「火事だッ!」と叫び声が上がり、消防車が到着。無事鎮火に至るその一連の光景に田辺は衝撃を受けます。しかし、野