見出し画像

遊びとデザイン

つい先日子供のダンスの応援に行った時、アイビスペイントをスマホにインストールしてキャタクターを描いている娘が結構綺麗な絵を描いていて、びっくりしたTAKEBONです。その日は夜中までスマホを離さずずっとキャラクターの目とか髪の毛を描いていた娘はパパママに怒られる始末でした。

今回は「遊び」をテーマに少し書かせて頂こうと思います。子供の頃に夢中になってついつい時間を忘れて遊んだ経験は、誰しもがあるのではないでしょうか。でもいつしか大人になるにつれ、自分が衝動的にやりたいことや、夢中になって遊ぶ経験が少なくなっていきます。人間はある時を境に非言語のコミュニケーションから言語によるコミュニケーションが優位になり、感覚的で情緒的な「遊び」という行為自体を意識的にはやらなくなってしまうのではないでしょうか。

私は以前アミューズメントマシンの企画デザインをしていました。そこで交わされる言葉の例を挙げると…

キュピピピ!ガッ…シャーン!みたいな演出にしたいんだよ。
 そうそう。そんな感じ。
 でももー少しガガガを増やしてくれない?」

みたいな会話が演出動画を作る時には頻出していました。擬音語、擬態語だらけのオノマトペ表現です。
当時、常に意識していたキーワードがあります。それはユニーク・インパクト・マジックでした。

遊びのアイデアやデザインの3つの要素


ユニークネスがあるか?
②マジックのような驚きがあるか?
③すごい!と思えるインパクトはあるか?

伊藤穰一さんが提唱するユニーク・インパクト・マジックは遊びの3要素

この3つの評価軸を元にしてアイデアを考え、デザインをしていました。
今考えてもこの指標というのは遊びやゲーミフィケーションシステムなどにそのまま当てはまるものだと思えます。

1.ユニーク性を高める方法

では実際にどのように考えていくかというと、ユニーク性を高める時には、イメージを引き出すためのトリガーを用意していました。どのようなトリガーを用意すると、独自性のあるアイデアが出せるのでしょうか。遊びに関するデザイナーをしている当時は、以下のようなプロセスを踏んでいました。

まずは、基本的な形のバリエーションを足したり引いたりしながら発想を広げます。ここでは割と基本的なフォルムを少しずつ変えながら、特徴的な部分をデフォルメしながらとにかくたくさんのイメージをバリエーション多く出すということをやります。

アイデア発想の展開方法

2.マジックを生む漫画的発想法

そして、漫画表現を駆使して妄想を広げていきます。実際のユーザー体験としてはどのようなシナリオで、どんな演出をするとユーザーに驚きを与えられるのか?を詳細に4コマ漫画のように表現をしたりしていました。
また、マンダラートで絵を描いて拡張的に切り口を整理したりしていました。9つのマスにキーワードを出すのがマンダラートのアイデアだしの仕方ですが、それだとイメージがしにくい部分があるので全てビジュアルでスケッチでイラスト化を行います。
このようにあらゆる方法でイメージをマネージし、コンセプトアイデアを検討しては戻ってということを繰り返していたように思います。

このようなデザインから遊びをアプローチするところから、キャリアを始めたからか、ワクワクするようなアイデアであったり、演出方法が楽しいプロダクトなどを考案することが今でも多い気がします。喜怒哀楽のデザインは右脳をよく使うイメージマネージャーだからこそできる独自スキルだと考えています。

3.「Wow!」と言ってもらえるアイデアになっているか?

遊びのデザイナーは常に、当然の如くインパクトを求められます。ビジュアルインパクトはもちろん、競合他社を圧倒する、凌駕する魅力や強烈なアイキャッチ性を求められるので、どんどん派手になっていきます。広告表現もインパクトある表現開発が求められると思います。「すごい!」は褒め言葉なんですね。インパクトは見た目のインパクトもあれば、心に刺さるインパクトもある気がしています。マーケティングで行うリサーチではユーザーのインサイトを掘り起こして、ユーザー自身も気づいていないようなインサイトに響く広告を打つことでハッとする、そんなインパクトもあると最近は思っています

無印良品のプロダクトデザイナー・ディレクターである深澤直人さんは、あるセミナーで、自分のアイデアを伝えた時に「Wow!」「すごい!」と言ってもらえることが一つの評価軸になると登壇されているセミナーで仰られていました。

多摩美術大学が公開している日常に溶け込むデザインとは?という講義です。無意識のデザインに潜む、集団的無意識の話は、遊びにも通じるデザインの考え方だと思います。

デザイナーは常日頃からイメージを膨らませる遊ぶ訓練をしている

なんらかの楽しさだったり、ワクワク感だったり、面白さみたいなものを生み出す企画者やデザイナーは常に遊んでいるのではないかと思います。単に娯楽にハマっているとか、そういうことではなく、イメージを膨らませるために遊ぶことを普段から発想したり、表現したり、人に伝えたりすることで、鍛えています。その具体的な手法がスケッチです。

認知症予防エクササイズ「コグニサイズ」をゲーム感覚で楽しむアイデアスケッチ

高齢者向けの認知症予防エクササイズを提唱する研究所との共創活動の時に考案したアイデアですが、TVの前で足踏み運動をマットを用いて行うアイデアです。既存のサービスとデバイスを用いて如何に日常の中で違和感なく、遊びながら運動ができるか?を考えていた時のスケッチです。高齢者はスマホとかだと目が弱くなっているのでやりにくい、ならTVだったらいつも見ているものだし、気軽にやれそうと、switchなどのゲーム機器でもFitnessゲームがありますがそれに近いイメージでの連携アイデアを考えてみました。遊んでいると色々な角度からアイデアを出していくことができるようになります。

思いつきという点を線にしていくとなるほどアイデアになる

発想プロセスの図解

アイデアを考案する時に人はまず思いついた!瞬間があると思います。これは閃いた瞬間なので、感動体験ですね。ですが、デザイナーはここでアイデアを大量に出していきます。無数の点を出していくイメージです。するとどこかで点と点が結びついてアイデアになります。そしてそれが面になると初めて企画になります。

アイデアをインパクトがある企画にするには?

アイデアの企画化

そしてアイデアをたくさん集めて、編集加工していくことによって、企画が出来上がっていくイメージを持っています。デザイン思考や付箋ツールなどを用いると、このようにアイデアを企画化するためのプロセスを大なり小なり経験したことがある人がいるのではないでしょうか。

これらのアイデア出しやブレストなどは、遊びをしているようなもの、だというと怒られるかもしれないですが、でもやっぱり楽しんでアイデアを出していくと楽しいアイデアが出ますし、面白いアイデアをスケッチで描くと、面白いアイデアであることが伝わります。アイデアや絵は正直だと思います。

共感を与えるデザインや企画はその人自身が色々なものに感動して共感して、その体験をカタチにするからこそ共感されるものになっていくのだと思います。だから皆さん、是非ともAI時代ですが、自分の感情に素直に向き合っていくことをお勧め致します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?