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目の前の Well-doingが生活のWell-beingに繋がる:ICF(国際生活機能分類)からの考察

テクノロジーとWell-beingがどう繋がるのか?という答えがあるのかないのかも分からないことを考え始めて約1年くらいが経ちました。そういえば、過去に同じようなことを考えたことがあった気がしたなぁと記憶を遡っていると、「そうだ!!」と思い出したのは、「介護・リハビリロボットは暮らしを良くするのか?」ということを考えたときでした。このときには、ICF(国際生活機能分類)というWHOが定めた分類が思考を整理するのに役立ちました。今回はこのICFという考え方が実はWell-beingというものを考える上で、結構大事なんじゃないかと思い、全く学術的根拠はないですが、少し考えてみたいと思います。

ICF(国際生活機能分類)とは何なのか?

ICFとは、International Classification of Functioning, Disability and Healthの略で、日本語では国際生活機能分類と言われています。ICFは、WHO(世界保健機関)が2001年に国際障害分類(ICIDH:International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps;)の改訂版として採択、加盟国に勧告している「健康状態、心身機能、障害の状態を相互影響関係および独立項目として分類し、当事者の視点による生活の包括的・中立的記述をねらいにする医療基準」です。

国内で中心的な立場にいらっしゃる大川弥生先生の表現を借りると、『「生きることの全体像」についての「共通言語」』と表現されるように、生きることをどう理解するのか、そのために生きる、生活する、健康であるということをどう分類するのか?ということを考える上でとても役立つものです。

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ここでは、ICF の詳細な紹介は省きますが、「生活機能」の分類と、それに影響する「背景因子」(「環境因子:建物・福祉機器、社会制度など」「個人因子:年齢、ライフスタイルなど」)の分類で構成されています。大事なことは、生活機能は、以下の3つの階層で表現されること。

・心身機能・構造【生物・生命レベル】:心と体の働き、体の部分
・活動【個人・生活レベル】:生活行為(身の回り行為、家事・仕事上の動作など)
・参加【社会・人生レベル】:家庭・社会・地域への関与・役割など

そして、それぞれが単独に存在するのではなく、相互に作用し合い、更には「健康状態」・「背景因子(環境・個人)」からも影響を受ける、ということだと思います。

これまでの医学というのが、主に心身機能・構造にフォーカスを当てて、そこのマイナスをゼロに戻そうという考えであったのに対して、それだけではなく、『本人の普段の生活(活動)とか人生(参加)というヒトおよびヒトの生活機能の全体像を理解した上で、必要な手立てを打っていきましょう。そして、その時には環境の個人の状態をしっかり考慮しましょう!』、という考え方だと思います。つまり、同じ病気・障害だからといって、すべきことは画一的ではなく、したい「活動」やしたい「参加」に応じて、やるべきことは異なってくることになります。

このような考え方は、大学時代にリハビリロボットや生活支援ロボットを開発しているときに教えてもらったものです。例えば、一概に歩行支援ロボットの開発と言っても、『その人がどんな日常生活を送りたいのか?どんな風に社会に参加したいのか?によって、そして、その人の生活している環境によっても、必要な「歩く」というものは違うのではないですか?坂の上に住んでるのか?どんな仕事をしているのか?によっても違いますよね?評価する時も麻痺の改善度合いだけを評価するだけでなく、その人の生活や社会参加がどう変わったかということを評価しないと行けないのではないですか?そこまで考えてますか?』という指摘を受けた記憶があります。

実際には3つの階層でめちゃくちゃ細かく分類され、更に点数を付けながら評価できるようになっていますので、興味ある方は下記を参照下さい。

私の考えるICFのポイント

ICFに関しては、大きく二つポイントがあると思っています。専門家ではないので違っていたらスイマセン。

一つは先にも述べたように身体的な状況だけではないこと。生命レベル、身体レベルだけではなく、生活レベル、人生レベルで人を捉え、理解しようとうとしていること。更には、それらは個々人の環境や価値観などの状況にも相互的に影響を受けるという考えのもとにヒトの全体像がモデル化されている点。

そしてもう一つは生活・個人レベルの活動に関して、能力と実施状況に分けて考えることだと思っています。つまり、活動はできるだけでなく、している状況になってこそ意味がある、canだけではなくdoingが重要、ということだと思います。

現在、我々が取り組んでいるAugmentation技術に関する取組みは、何を拡張しているのでしょうか?もちろん、心身機能を直接的に拡張することを目指している取り組みもありますし、活動レベルにおいて出来ることを増やすということもあるでしょう。ただ、「何気ない日常をより豊かに」ということを掲げているのは、もしかすると出来ることとしていることのギャプをなくす、つまり、出来ることをしている状態に持っていくのをサポートすること、ポテンシャルをしっかりと引き出してあげることなのかもしれません

ICFとWell-beingの関係性

ICFはWHOが健康の構成要素を分類したものである一方で、WHOは「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)」とも言っています。いずれも健康に関して言及しており、単なる身体としてのマイナス面だけでなく、精神や社会レベルまで考慮した概念であり、非常に近い考え方のような気もします。

ちょっと違うような気もするなというところは、ICFは活動や参加というような行為、すること(doing)に焦点が当たっている一方で、well-beingというのは、文字通りあることというか状態のことを指している気もします。

良い状態のためにしたいことをするというような関係でしょうか?

おそらく目の前にあることを良い形で行う(Well-doing)が、生活、人生、社会を良い状態(Well-being)にすることに繋がる、ということなんだと思います。

この辺りはまだまだ勉強不足、思考不足なところもあり、是非専門家の方々にも色々と教えて頂きながら、自分の中でもブラッシュアップしていければと思います。

では、また来週。

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