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魔改造の夜に発起人・事務局として参加して学んだこと。

「魔改造の夜」というテレビ番組をご存じでしょうか?
月に一度、NHK総合の19:30~約1時間にわたるナイスな時間帯に放送している番組で、「おもちゃ」や「家電」を大人たちが本気で改造して、モンスターマシンにし、3つの組織がその性能などを競い合うという技術開発エンターテイメント番組です。

今回のnoteは、事務局として参加した私が、一連の取り組みの中で、何に気づき、学んだのかを書いておこうと思います。

お題は、トイレとスケーターの魔改造

魔改造の夜という番組自体は、ソニーさんなどの電機メーカーやトヨタさんなどの自動車メーカーの大企業から町工場、大学など様々な立場の人たちが、限界まで技術力を注ぎ込む姿が結構面白く、よく見ていたのですが、今回は『Pナソニック』として参加させて頂きました。

我々が参加させて頂くことになった競技としては、2つあり、ひとつは「おトイレ ゆか 宙返り」ということでトイレのおもちゃを体操の床競技のように助走させ、宙返りして、5メートル先に着地させるというもの。

そして、もう一つは「キックスケーター綱渡り」ということで、いわゆるキックスケーターを綱の上をバランスをとって25メートル走らせ、タイムを競うというもの。

どちらも絶妙な制約条件が課せられていて、技術的な難易度が高い競技。

1月末、2月末と放送があり、私もデカデカと顔を映して頂いたので、お前もロボット開発者としてガッツリ参加したのか?という連絡を何名かの方から頂きました。

が、今回は、開発者としては全く参加せず、この番組に会社として参加しましょう!!という発起人として活動させてもらったのと、参加が決まってからは事務局の代表という形で番組側との調整や開発メンバーを可能な限り開発に打ち込めるように全力でバックアップするという形で参加させて頂きました。

ロボット開発者という肩書もあり、開発メンバーとして参加するかは結構迷ったのですが、今回は敢えて開発側には入らないことにしました!!

開発したマシーンなどについては、開発メンバーがめっちゃ頑張った成果をまとめていますので、是非以下のサイトを見てください。


そもそもなぜ参加したのか?

「エンジニアをヒーローに」。

これが魔改造の夜という番組そのものが目指すところです。
これに共感し、参加したいなと思ったというのが想いです。もっと言えば、「生産技術者をヒーローにしたい!!」という想いです。

私自身は今のPナソニックという会社に入社して以来、生産技術、生産革新、マニュファクチャリングイノベーションと名前は幾度となく変わっていますが、基本的には「生産技術」ということを生業とする部門で活動をしています。

生産技術という言葉は、馴染みのない方も多いと思いますが、ざっくりいえば、「製品を大量に安定して作るための技術」とでも言えるのかもしれません。

小学生の頃に、社会科見学とかで工場を見に行ったら、モノを製造するラインとか設備とかを見たことを覚えている方もいるかと思いますが、そんなラインとか設備とかを作ったり、実際に安定して稼働させるための仕組みづくりをしたりする仕事と言えるかもしれません。

そんな生産技術の部門にいながら、私自身はガッツリ生産技術という仕事には携わっておらず、工場自動化で培ってきた技術を新しい分野に展開する、特にサービスロボットという新規事業を立ち上げるという仕事をメインにしてきました。

そういうロボットの仕事をしていると、比較的メディアなんかにも取り上げて頂くことが多いのですが、一般的には生産技術という仕事はなかなか日の目を見にくい仕事でもあります。やはり製品をどのように製造したかということよりも、製品自体の方が注目を浴びやすいということがあるんだと思います。だからといって、生産技術の方が価値が低いかというと全くそんなことはありません!!

むしろ、生産技術がなければ、商品が世の中に出ることがないという観点では、非常に意義が高いとも言えますし、まさに「縁の下の力持ち」とも言えるでしょう!!

そんな生産技術の研究開発を行っているエンジニアや実際に製品を大量に作り出す設備、ラインを設計しているエンジニアに、キラキラと光を浴びてほしい、そして、文字通りヒーローになってほしい!!

そんな想いで番組に出たいと思いました。なので、サービスロボットの開発者である私は裏方に回り、バリバリの生産技術をやっている人たちにガッツリ開発メンバーになってほしかったのです。

思ったとおり大変だぞ、魔改造。

そんな訳で発起人、事務局として全力で動くぞぉ〜と心に決めたのですが、改造するお題が発表されてから40日後には撮影現場でモンスターを発表!!という、結構なスピード感を求められる取り組みです。大変なのはわかっていたのですが、まぁ思って通りに大変だったというのが、素直な感想です。

もちろん、事前に会社に出ても良いですか?的なお伺いを立てるというような決裁とか社内稟議を通すのは大企業サラリーマンとしてしっかりこなし、参加メンバーを募り、集めるというのは、想定の範囲内の苦労(笑)で実現できたわけですが、想定通りに苦労したのはここからです。

今回の競技のルールをもう一度振り返ってみると、
おトイレゆか宙返りは、10メートルの助走路を走り、5メートル先の的に着地。
キックスケーター綱渡りは、25メートルの綱を渡るスピードを競う。
というものです。

冷静に考えてみましょう!
いきなり5メートル先におトイレがビタッと着地するわけもないですし、25メートルを全速で走ったらスケーターだって急には止まれないわけです。

会社の中で、
・10メートルの助走して、5メートル以上飛んでも良い場所
・25メートルを全速力で走って、安全に止まれる場所
かつ
・他の人にはバレない場所
・40日間使い続けられる場所
なんてものは、そうそうありません。
そのような場所があれば、皆んなこぞって開発とかに使いたいと言いますよね。

テーマ発表がないとどれくらいのスペースが必要かの検討が付けられず、発表されてからはそれこそ構内の図面を引っ張り出して、定規をあてて、ここならいけるんじゃない!?みたいな作業が始まりました。

結局、期間中ぶっ通しでの場所の確保はできず、両チームとも一度引っ越してもらうことになりました。それでも、総務メンバー、施設メンバーなどや偉い人も自ら手当たり次第に場所を探してくれたりすることで、半ば強引になってしまいましたが、場所を確保するために玉突き的にモノの移動をしてもらうことになりました。あるタイミングで施設の若手メンバーから『こんな場所見つけました!!』という電話をわざわざ貰い、なんて良い人なんだと感激したのを覚えています。

そして、最も気を使ったのは『安全』です。
開発メンバーの活動は、業務外活動として行なったわけですが、そうなると当然通常業務後から夜遅い時間、もしくは、休日の作業になります。

会社の事業活動のタイミング的に忙しい時期に被ってしまい、ただでさえ疲れている状態で、メンバーは活動をすることになります。

疲れて集中力が落ちている状態で、いつもとは違う完全な非定常業務をする、さらには部品の加工をしたり、より遠くまで飛んだり、より安定して走るために結構なエネルギー状態で機体を動かさざるを得ない、という安全管理側からすると目を細めたくなる状況です。

しかも、スケジュール的なプレッシャーも強い中で、どうして無理をしたくなってしまいます。

具体的な対策としては危ないリスク源があるごとに考えていくしかないのですが、結局はマインドを持ち続けられるように注意喚起していくしかなく、どうか事故だけは起こりませんようにと祈りながら過ごしていました。

結果的に無事故で乗り切れたのは、メンバー自身の日頃からの安全に関する意識やスキルを業務外であっても保てたこともありますし、他のサポートスタッフの現場を回りながらのケアや人事メンバーの作業時間やメンタル含めた負荷のケアなどが総合的なあったからかと思います。

この他、時間的制約、突発的事項への対応が多く、通常の発注段取りとは違う方法での費用の使い方では経理の方の協力を得たりと言い出したらキリがないほど、多くのメンバーの協力がありました。

広報の皆さんにもガッツリ協力頂きました!

そして、社外の方にも見える形で協力頂けたのは広報関係の皆々様です。

期間中も密着頂き、ステキな動画を作ってもらったり、それをベースにしたサイトまで作っていただき、それを各種SNSにも展開してもらっています。

特にTikTokでは関連したコンテンツも作ってもらいました。

@panasonicgroup

「おもちゃ」や「家電製品」が“怪物マシン”に変貌するNHK総合番組、「魔改造の夜」は見てくれましたか?👀✨Pナソニックはキックスケーターを25m綱渡りできるように魔改造したよ!🛴⚒️番組を見た方はコメント欄で感想を。まだ見てない方もこの動画で挑戦の裏側を楽しんでね😊 #パナソニック #技術 #Panasonic #NHK

♬ オリジナル楽曲 - パナソニックグループ - パナソニックグループ

魔改造の夜をテレビで見て頂いた方はもちろん、それ以外の方にも今回の活動を多くの方に知って頂くキッカケになったかと思います!!

結局、何を学んだのか?

いろんなことをツラツラと書いてきましたが、「生産技術者をヒーローに」という想いで始めた私が、裏方として参加することで何を学んだのか。

それは
「みんながヒーローだ」
ということなんだと思います。

当たり前のことなのですが、商品を作っているのは技術者だけではありません。

そんなことは百も承知のはずでしたが、超短期間で無理難題をドライブするためには、もちろん開発メンバーの本気に頑張る姿があった上で、それを懸命に支えてくれようとするテクニカルサポートメンバーの方、施設、総務、人事、経理、広報、企画などなど多くの間接部門の方々の協力なしには中々進まなかったと思います。

『モノづくり』というのはそういうもんだ。
それが今回の最大の学びです。

一方で、ネタバレになるので結果は言いませんが、多くの課題も明確になったと思います。

突発的な取り組みに対応できる組織とはなんなのか?、自分たちの技術を客観的に捉えるとはどういうことなのか?、失敗しても良いというのはどうしたら本当に実現できるのか?などなど、エンジニアとして、組織責任者として様々なことも考えるキッカケになる取り組みでした。まだ答えは持てていないこともたくさんありますが。。。

以前の別の回に参加されていたIHIさんが公開しているステキなレポートがあるのですが、その中では「生活習慣病」という言葉が使われていました。

まさにそうなんだと思います。
長年の歴史、経験の中で培われたものは強みとなる一方で、変えることが難しく、ジワジワとボディにダメージを蓄積する生活習慣ともなってきます。

「伝統は進化して初めて価値を維持できる」
高校の時の国語の先生がそんな言葉を言っていた気がします。

というわけで、伝統は進化させていくしかないんですね!!

最後になりましたが、仕事が忙し中で開発メンバーを送り出してくれたそれぞれのメンバーの職場の上司の方々や同僚、部下の方々、そして、連日夜遅くまで帰ってこない、土日も家にいないということに付き合ってくれた各家庭の関係者(特に小さい子供がいる家庭への負荷は大きかったと思います)には本当に感謝しかありません!!

ありがとうございました〜〜

ちなみにまだ番組見てないよ!!という方には、そのうち再放送もあると思いますので、是非ご覧下さい。
直近では、見れる人は少ないかもしれませんが、NHK BS 4Kで NHK綜合で放送されたものよりも長い90分バージョンが3/20と3/22未明0:45-2:15で放送されるようです。


ということで、また来週~!!
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安藤健(@takecando)
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