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契約書の基礎固め #4 契約書ではこんな誤字に注意!

契約書の「基礎」を確認するための記事です。契約書についてこれから詳しくなりたい方はぜひ読んでください。重要なポイントが「一気に」学べます。

契約書の基礎を短時間で身につけたい人のために、

「どこから学べばよいかわからない」「契約書がチェックできるようになりたいけど、読んで何が分かればいいのかもわからない」

といった疑問にこたえます。

本記事の内容

・契約書で特に注意が必要な誤字はこれだ
・チェックのしかた
・契約書で気を付けたい法令用語はこれだ

こんな誤字に注意しよう

個人的にもよく間違えてきた、絶対に気を付けたい言葉を紹介します。


異議/意義  とき/時

これは本当に良く間違えます。「異議がある」というべきところを、「意義がある」としてしまうのです。意味がとおらなくなりますね。

「とき」という言葉も、漢字で「時」とすれば時間的タイミング(ある時点)を指しますが、ひらがなで書くときは「条件」をあらわします。つまり、「とき」といったら「〇〇の場合は」という意味です。音がおなじなので間違っていてもかろうじて意味は通じますが、それでも契約書においては、どちらの意味で使っているのか意識しておきたい言葉です。

ちなみに「場合」と「とき」は同じ意味(仮定的条件)になってしまうのですが、条件がふたつかさなる場合に、大きい方の条件には「場合」、小さい方の条件に「とき」を使うことになっています。仮定的条件がふたつ重なるというのは意外とよくあります。

簡単にいえば、「やっては見たけどダメだったら」という意味のことを→「やってみた場合において、ダメだったときは」というように接続するということです。

表記の揺れも多い

誤字というか、契約書の文中で表記が変わってしまうことが良くあります。異なる書式を組み合わせて使うと良く起こる表記ゆれです。

なかでもよくあるのは、業務委託契約書で対象の業務となるものを、「本件委託業務」と呼んだかと思うと「本サービス」あるいは「本件サービス」のように略したり、ごちゃまぜになるのです。まぎらわしいし、別の業務を指しているのではないか、といったあら探し的な解釈を招く恐れもあるので気を付けたいところです。

漢字とひらがなが混ざることもあり、あまり見栄えの良いものでもありません。たとえば「または」としたり「又は」とする、「および」としたり「及び」とするなどです。これによって契約書が無効になったりはしませんから、神経質になることはありませんが、なるべく表記はそろえましょう。

主語が抜けていることが多い

 「乙に支払う」とあるだけでも何となく前後の文脈から意味はわかるのだけれど、やはり「甲は、乙にたいして支払う」と、省略せずに書かなければなりません。契約書の条文というのは誰が読んでも同じ意味に解釈できるのが理想だからです。

「必要と判断したときは」も同じことが言えます。誰がそれを判断するの? となり、解釈がわかれてしまいます。

 
条文番号のミスをみつけよう

書式の段階では条文の番号は正しかったとしても、加除修正するうちに番号がずれていくことはよくあります。仕上げの際に上から順番に数えて、条文番号がずれていないか確かめる必要があります。

このとき、条文の見出し部分だけ見るのではなくて、文中で「第〇条の規定は・・・」などと前後の条文を指定している部分がないか、そしてそれらが指している条文番号が違っていないかをよく確認しましょう。

チェックのしかた

確認には必ず検索機能を使いましょう。目で追いかけているだけだとどうしても見落とします。Wordなら検索機能を使って、たとえば「条」「項」「号」を検索し、マーカーで色をつけて強調します。そうやって条文番号がずれていないか、指している条文数に誤りが無いかを、すぐに探すことができます。

検索語句だけにマーカーを入れて強調表示する方法は、ワープロソフトやそのバージョンによると思いますが、参考までにWordでは、以下の操作をします。

・control + H で 「検索と置換」というのを出し、
・「検索」タブに行き、
・検索したい文字を入れ、(たとえば「条」とか)
・「オプション→書式→蛍光ペン」の順にクリックして検索をかけます。

これで、検索した語句だけマーカーで目立たせることができます。とても便利です。他のチェックにも応用できますから、やってみてください。

法令用語にも注意しよう


法令用語にもさまざまなものがありますが、特に「又は、若しくは、及び、並びに、その他、その他の」、の各用語だけは正確に使い分けられるように、確認しておくべきです。なぜなら、契約書を作成していく中で、頻繁に登場する表現だからです。


又は / 若しくは


A又はB とはいいますが、A若しくはB とはいいません。「若しくは」を使うのは、「(A若しくはB)又はC」などのように、又はで分類したものの中にまた小さな意味のまとまりがあるときだからです。シンプルに2つの事柄を or でつなげたいときは「又は」の方をつかうと覚えましょう。


及び / 並びに

A及びB とはいいますが、A並びにB とはいいません。「並びに」を使うのは、やはり大きい接続と小さい接続とがあるときの、「(A及びB)並びにC」というように区別をするためだからです。シンプルに2つの事柄をつなげたいときは「及び」の方をつかうと覚えましょう。


その他 / その他の

これも間違いやすいです。しかも頻繁に使います。慣れましょう。

「その他」=「の」がついていたら、前の部分は例示だよということです。例示とは「たとえばの話」です。「Aさんその他良い人」とあれば、Aさんを挙げたのは良い人のたとえだということ。「たとえばAさんのようにね」という意味です。つまりAさんは良い人である意味になります。

「その他」=その他、で止まっている場合(「の」がつかない場合)、これは並列です。つまり単に前後の言葉を接続しているだけであって先ほどのような「例示」ではありません。だから「Aさんその他良い人。」といったならば、Aさんを挙げたのは良い人のたとえではなく、単に言葉を並べて接続しているだけ。よってAさんは良い人かもしれないし、良い人ではないかもしれません。

まとめ

以上注意したい語句を紹介しました。実務で間違うことが多かったものに絞っていますので、最低限の出発点として覚えておきたいものばかりです。逆に、これらを覚えると格段に契約書を読むのが得意になりますよ。

クイズ

下記の文中になにかミスはありますか?

本契約に基づき相手方から開示を受けた秘密情報を含む記録媒体、物件及びその複製物(以下「記録媒体等」という。)は、不要となった場合又は相手方の請求がある場合には、直ちに意義なく相手方に返還するものとする。
2.前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体等に含まれている時は、当該秘密情報を消去するとともに、消去した旨(自己の記録媒体等に秘密情報が含まれていない時は、その旨)、相手方または相手方が指定するものに書面にて報告するものとする。

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