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進化と退化~情熱中国大陸〜

FAXからコンピュータ、インターネット、そしてスマホへ

お気に入りのシャツを買った28年前と比較し、我々の生活は、どう変わったのか?東京ラブストーリーの主人公、リカとカンチも、家電話と公衆電話で連絡を取り、もどかしい恋をしていた。当時は交際もメモと手紙が大活躍した時代だ。
私も彼女と日光にデートに行く時、家電話で前日に約束したが、デートの当日、大雪で電車が止まり、各路線は運休や大変な遅れと混乱をきたしていた。
家から出かけてしまっているので、公衆電話でお互いの家に電話をかけても連絡はつかず。当時は当然携帯電話などという便利なものがないので、どうしようもない。
私は、約束したんだから必ず来ると信じ、東京駅で6時間、彼女を探し続けた。
そしてお互いを人混みの中から、奇跡的に見つけた時の感動は、今でもはっきりと覚えている。今の世の中、都市生活において、連絡のつかない人を6時間待つ事など、まずないだろう。
ちなみにその彼女は今、ゴミ箱に向かってありがとうと言っている、我が息子の母親である(笑)

その後「Fax」に使う魔法の紙「感熱紙」に度肝を抜かれ、砂の嵐に隠された、バビルの塔にしかないと思っていた「コンピューター」が小型化して急速に普及した。その次にはノート型のパソコンが現れ、あっと言う間に日本中の職場・家庭に浸透して行った。
小さな薄い、ソノシート(昔のペラペラの塩化ビニール製の安価レコード)
のような物が中に入った10cmサイズの「フロッピーディスク」が登場し、情報が誰でも手軽に出し入れ出来るようになった。世の中には全く凄い事を考える人がいるものだなあ、と思ったものだ。
その後出た、「デジカメ」などは魔法という他ない。当時SONYから発売された、最先端デジカメ、「マビカ」の衝撃は未だに忘れられない。
フロッピーディスクをカセットテープのようにカメラに呑み込ませ、撮った画像を本体とフロッピーディスクそれぞれ両方に記憶させることができる。自動的に画像データが保存されたフロッピーディスクを、カメラから抜いてパソコン側に差し込むと、「ガガガガ、ギー、シュシュシュ」という音と共にデータを読み込み、何とパソコンの画面に、そのマビカで撮った同じ画像が映し出される。
このフロッピーの出現により、写真の価値が激変した。写真は何回でも自由に撮り放題、気に入った画像を選び、しかも大量に保存しておける事になった。不要ならいつでも消去可能、写真屋さんに持って行って現像し、出力した「写真」として保存しなくても良いという、写真屋さん真っ青な時代に突入した。それまではネガフィルムを写真屋さんに持って行って、お金を払い、数日後欲しい写真を追加で現像してもらい、綺麗に印刷されたものを保管するので、「アルバム」が必要で、ずっとそれが売れ続けて来たのである。フロッピーディスクは、人々の今迄の写真に対する習慣と感覚を大きく変化させた。
今では大容量の動画までが保存出来る、自分の爪よりも小さいサイズの「マイクロSDカード」がある。しかしUSBメモリーやマイクロSDカードでさえも、今では既に時代遅れの感がある。
フロッピーの中に画像を保存しておけるだけでなく、当時米国のマイクロソフト社が考えた「ウィンドウズ95」というコンピュータオペレーションシステムを使えば、「電子郵便(EMAIL)」で自分で打ちこんだ文章の下に、フロッピーの中の画像を、何とお土産のようにJPEG画像(非可逆圧縮画像フォーマット)として、くっつけて送れるのだ。当時の同僚Kが、「竹ちゃん見てみろこれ、スッゲーんだぞ!」と目の前でやって見せてくれ、しかもそれを「インターネット」を通じて、EMAILで香港に飛ばして見せたのである!正にびっくり仰天、ひっくり返りそうになった。
興奮した私は「明日朝早速香港に国際電話をかけて、届いたか聞いてみようぜ!」というとKは、「30分で向こうに届くよ」と笑って教えてくれた。FAXの時以上にビックリした。

そもそもインターネットとは一体何なのか?「青春漂流」「臨死体験」などの著書で有名な、立花隆氏の「インターネット探検」という本を、すぐに買って勉強した。
   その後、「移動式携帯電話」の急激な台頭で、犬の首輪のような「ポケベル」はあっという間に世の中から姿を消し、各社がこぞって販売したPHSや、移動式小型携帯電話が、どんどん小さくなり、薄くなり、軽くなり、そして今度は逆に急に画面が大きくなったりを経て、変化して行った。そしてアメリカのアップル社の「アイフォン」が世界に登場し、世の中を言葉通り一変させた。今の「スマホ」の時代を迎える事になったのである。

A.I の台頭

テクノロジーは日々進歩、天文学的量のビッグデータと、計算式の無限に近い組み合わせで、人間の思考・行動パターンを統計的に分析、そして個別化し、そこから応用発展させながら「学習」して行く、「人工智能」=AI の爆発的進化は、今やとどまるところを知らない。
現段階では、AIの定義はかなり曖昧ながらも、世界各国、各企業は、この未曾有の巨大市場を見据え、AIを使って何が出来るのか、何をさせるのか、どの分野に投資するのか、を試行錯誤しながらまっしぐらに進んでいるといえる。
因みに中国は、アメリカに次ぐ世界第二位のAI大国と言われている。間違いなく今後の世界をリードして行く事になる。中国のAI産業の市場規模は、現在全世界の約25%を占めると言われている。
「AIに関する研究報告書」の数では、中国は10万件以上に上り、アメリカの8万件を大きく超えている。日本は約4万件。
「AI産業全体の投資額」でも中国は圧倒的に世界第一位である。
中国に於けるAI産業の驚異的成長の背景には一体何があるのだろうか?
1、急激な高齢化
2、深刻な労働人口の減少
3、人件費の高騰

簡単に言うとこの三つである。2050年には25%が老人、出生率も激減し1%を切るのではないかと言われている。14億の人口を抱える大国の高齢化は、本当に深刻な問題である。実は、上記3つの問題を抜本的に解決すべく、中国は国を挙げてAI産業に力を入れているのだ。政府牽引型のAI産業市場は拡大の一途で、非常に幅広い分野でAIスタートアップ企業が乱立し、様々な相互共有がなされ、エコシステムも充実し、活況を呈している。2025年までには中国が世界のAI市場の50%を占めるのではないかとまで言われている。

実際に今、AIの世界で進められている事というのは、大きく分けて、
①可視化
②データ分析
③社会実装

この3つである。
「画像分析」や「言語学習」、「繰り返し学習」と「パターン化学習」そして「切り捨て作業」と「関連付け」。膨大な「ビッグデータ」を材料に、人間の脳のアルゴリズムを分析し、「ロジックの複合体」を、統計的、体系的に「ディープラーニング」(深層学習)させ、それをどの分野のどの部分にフォーカスし、更に周辺とどう相互リンクさせて広げていくのかを考えながら、みんなで進めている、という事だと私は理解している。
これらによって一体何をしようとしているのかというと、簡単にいうと、
「人間の代行」を出来るようにしているのである。

中国でAIが圧倒的に浸透している分野は「セキュリティ」である。顔認識は中国では社会全体に浸透しており、電車に乗る時まで顔スキャンが行われている。街を歩いている姿勢や癖で本人特定が可能であるというし、車を運転している時も、常にカメラに道路状況と「前科」と共に監視されている。私も生活していてその「監視の目」をはっきりと感じる。

因みに、2018年の深セン市だけの、交通違反の案件数は9,110,000件。
そしてその違反に対する「罰金総額」は何と「22.93億元」である。
日本円ではない。中国元だ!深セン市だけで、この金額である。この恐るべき「売り上げ高」は、AI監視システムによって叩き出されているのである。
こんな売り上げ高、しかも強烈な高利益率の商売は、そうない。監視カメラ君は、毎日微々たる電気代だけで、365日24時間文句も言わず。物凄い売り上げを稼いでくれる。給料も経費もかからず、会議も不要、文句も一切言わない。
範囲を拡大して見よう。2018年の1年間の、「中華人民共和国全体の交通違反の罰金総額」に至っては、気絶してしまうほどだ。我々一般人は多分、一生、見る事も数える事もない金額である。言いますよ、心の準備はいいですか?その金額は、何と何と
「6,000億元」である。。。。
これがたった1年の交通違反で、国が国民から徴収する金額である。興味のある人は、自分で今日の為替レートを元に、是非日本円に換算してみて欲しい。普通の電卓では、桁が表示できなくなる。

AIによる管理は圧倒的だ。
私という人間は、「いつもの交差点を、いつもALIPAYを使い、10元でレモンアップのレモンティーを購入し、それを持って、まだ信号が青になっていないのに、後ろを振り返りながら渡っている日本人」と確実に認識されているだろう。各ATMでの出入金額と頻度、DDタクシーの利用傾向と鉄道利用との関連性、時間帯、などが、私の携帯電話番号、銀行口座、身分証番号、顔写真、「全ての個人情報がセットになって」管理されている。行動は全て筒抜け、いつどこへどのような交通手段で移動し、どこで何を買っているかまで、神様に見られているかのように、多重的に確実に認識されている事は疑いない事である。
この社会管理システムは、犯罪率の低下に圧倒的に貢献している。別に悪いことをしているわけでは無いので、何のやましい事もないのだが、ちょっと気持ちが悪い。でもどうしようもないのだから、「便利さ」に身を委ね、気持ち悪い感覚は薄れて行き、快適に管理され馴染んで行ってしまうわけだ。
「キャッシュレス」の進歩は日本のニュースでもよく話題になっているが、最近の中国に来た事がある人は、皆ハッキリと実感出来るはずだ。「うわー凄い、本当にそうなんだ〜!」とみなが皆、必ずそう言う。とにかく現金を出す機会が殆どない。個人のお金の流れ全てを管理下に置く、この企み策略に対し、たまにふと目が覚め、軽い抵抗をしてやろうと、現金での買い物や食事を試みるのだが、例えば売店で水を買う時に、携帯電話ではなく「財布」を取り出すと、「え、何?現金出すの?」とあからさまに面倒くさい顔をされる事が良くある。嘘ではない。金額丁度ならまだしも、お釣りが必要な時にはちょっと顰蹙なくらいである。現金はどう考えても明らかに不便だ。今では全てキャッシュレスで、無人のコンビニが出て来ているのも有名だ。

工場のオートメーション化、車の自動運転、病院や高齢者の福祉、農業、通信、銀行や証券、保険会社、DDなどのネット配車サービス、などの部門では、すでにAIは大活躍しており、人件費の大幅な削減が急速に進んでいる。

身体特徴と病歴、薬歴で次の予防を促すAI医療。お金をすぐ返す人か、なかなか返さない人かの、人格信頼度を予測計算し利子を決めるAI融資。年齢性別と収入、家族構成と預金高、消費傾向からの住宅、金融商品、保険の提案、などへも既に当たり前に運用されている。銀行、保険、不動産、車、通信などの会社から頻繁にかかって来る電話があるが、電話口で話しているお姉さんが、本物の人間なのかロボットなのか、なかなか判断出来にくいレベルにまでなっている。

余談だが、私は、日々掛かってくる電話番号や時間帯、繋がった瞬間の向こうの電話口の背景の雑音などで、電話口で話しているお姉さんが、本物のお姉さんなのかAIロボットなのか、かなりの確率で見抜く事が出来る。
度重なるやり取りの中で経験的に学習したのだが、実は判断する方法はいくつかある。例えば、
1、プログラムに想定される筈もない、全くずれた話題を話してみて反応を聞く。
2、ずっと黙っている。
これでほとんど見抜ける。
今日、先ほど本当に掛かって来た電話のやり取りがこんな具合だ。

女性
「もしもしこんにちは。私〇〇銀行投資課の者ですが、最近当行では、資金運用の新しいシステムの導入に伴い、あなた様は私どもの条件を満たしていらっしゃいますので、融資と理財商品を合わせてご案内、紹介させて頂きたくご連絡差し上げました。」

「。。。。。(無言)」
女性
「一回50万元からの融資を、すぐに受けることが可能になっております。」

「。。。。。(無言)」
女性
「もしもし聞こえますか?。。。。はいそうなんです。1回で50万元の融資なんですが、最近資金運用の必要や興味はございませんか?」

「。。。。。(無言)」
女性
「もしもし、すみません良く聞き取れませんが」

「。。。。。(無言)」
女性
「もう少しゆっくり話して頂けませんか?」

「。。。。。(無言)」

プーップーップー。電話が切れる。。。。

私は一言も声を発していないが、もう少しゆっくり話してくださいという。これではっきりロボットだという事がわかる。普通の人間は、誰かから何か話しかけられたら、話し返すのが普通なので、そしてその話し返す内容は、相当数予想、パターン化されており、何か喋ると、その単語の種類傾向から会話を自然に繋ぎ、話して行くようにプログラムされているのである。
本物の人間なのかロボットなのか、私は見抜く事が出来る、と偉そうに言ったが、タネ明かしをしよう。

タネ明かし1)
実はこのような電話は、最近では殆どがロボットが行なっているのである。(笑)

タネ明かし2)
私は中国移動の携帯電話番号を使っているが、中国移動側の「AI君」が、「迷惑電話、システム営業電話などの可能性がありますのでご注意下さい」と見抜いて画面に表示して教えてくれるのだ(笑)

因みにこの電話は、本物の銀行が行なっている営業などではなく、「詐欺集団」の手先の「AI嬢」が私にかけてきてくれたものである。

ロボットは人間よりも圧倒的に処理能力が早く、怒鳴られても罵られても、無視されても、嫌な思いもすることなく、文句を言う事もなく、トイレ休憩も無しで、24時間フルに働けるから、非常に役にたつのである。
今や様々な場所での清掃、アンドロイド恋人、老人に寄り添う介護ロボット、企業やホテルなどの受付、有名人のそっくりロボットでイベント集客、等等、巨大な需要に向けて時代は動き出している。

このような劇的な進化のうねりの中に、我々は好むと好まざるとにかかわらず、居る訳である。この流れをどう感じ、どう捉えるかが重要だ。そしてその中で

自分は何をしたくて、何が出来るのか?

何が嫌で、何がしたくないのか?

をよくよく考えて生きていかなければ、ただ流されて、バカになって、「自己満足」さえも自由に得させてもらえずに、飲み込まれていく事になる。

つづく

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