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東京芸人逃避行 バベコンブかわぞえあきひろ



フィッシュマンズの映画を見て感動した僕はすぐに物販のカセットウォークマンを買った。


手元に届いたそれは愛おしく、唯一家にある中島みゆきのカセットを大音量で聴いた。


良いヘッドホンやイヤホンを持っていない僕は、付属していた粗末なイヤホンで聴いたが、それも悪くなかった。
悪くないがやはり気に入ったヘッドホンで聴きたい。
そして他のテープも欲しい。

僕はかわぞえさんに連絡を取った。



2021年9月23日




僕らは御茶ノ水で待ち合わせた。


雨が続く9月。
しかしこの日は天候に恵まれた。
気温も高くとても暑い。

僕は以前友人に貰ったコンバースを初めておろした。



ピンク色のスウェードのそれは気に入りすぎて中々外へ履いて行くことができなかった。
最近買った安物のリーバイス517との相性も良く、僕の心は弾んだ。


友人に改めて礼を言うと「靴紐はギュンギュンに締めた方が良い」と言うので僕はギュンギュンに締めた。


ギュンギュンに締めているのを何も言わず遠くからかわぞえさんは見てた。
着いてるなら一言声をかけて欲しかった。




『まずディスクユニオンでもしばこうか』

と僕とかわぞえさんはディスクユニオンに向かった。


御茶ノ水は楽器屋やレコード屋が多い。
歩いているだけでワクワクする。

そして歩いてそのまま神保町や秋葉原にも行ける立地は僕みたいなミーハーにはとても嬉しい。


御茶ノ水のディスクユニオンは広く品揃えも豊富で、
またバンドTシャツやアーティストグッズなんかも多く音楽の知識があまりない僕でも楽しめた。
レコード屋で革ジャンを試着してるのはその時僕だけだった。


店を出た僕らは酒を買い歩いた。




『こっちに良い公園があるんだよ、そこ行こう』

と慣れたかわぞえさんはズンズン前を進んだ。
聞くと昔養成所が近かったらしく、この辺は庭だと言う。



良い公園である。
決して広くは無いが子供たちがボール遊びをしており、それを見る親たちには美しい生活があった。






『銀杏クセェな。ここ出ようぜ』

「…」


少し歩くと昔貸しCD屋だったという店の前に着いた。


『もう今は閉まっちゃったんだけど、とても希少なCDが借りれる店だったんだ』

と、かわぞえさんは教えてくれた。

何も知らない僕はアホみたいに相槌を打った。一度は行ってみたかったなと、これもアホみたいに思った。





『よく行く雑貨屋があるんだ』




(元)鶴谷洋服店。
入り口に掲げられた文化屋雑貨店は聞いたことがあった。

調べてみると文化屋雑貨店の創業者の方や元スタッフの方が作っている雑貨なども取り扱っているという。

店名は三代続いたテーラーの店舗を利用しているからと言うことだった。


狭い店内に所狭しと並んだ雑貨や古着、アクセサリーや古本などは心をくすぐるものばかりであった。


僕はそのまま古本や古着や雑貨を買った。


そうして秋葉原まで歩いた。

電気屋でヘッドホンを見て色々聴き比べた。



かわぞえさんがお勧めする中から一番気に入ったものをそのまま買った。

そしてブックオフでCDを何枚か買った。
カセットウォークマンの出番前にCDプレイヤーを重宝しそうである。




店を出て再度神保町から電車に乗って帰ろうと言うことになり来た道を戻った。

陽が落ちるのが早くなった。
外はすっかり夜である。



お互い最寄りの駅まで共に帰り、手を振って別れた。


家に帰り着いた僕はすっかり酔っていた。
空きっ腹でずっと歩きながら酒を飲んでいたのだ。
心地の良い酔いである。


僕は風呂に入ってベッドに潜り込んだ。
良い日だった。

そう思って眠りに就こうとすると携帯が鳴った。

ランジャタイの伊藤さんが発起人のこうちゃんライブのグループラインにかわぞえさんが写真を送っていた。
僕がトイレで立ち小便する写真だった。


コイツは1日一緒にいてこの写真しか撮ってないのかと目眩がした。


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