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漢文の海で釣りをして【第3回】わずかな変化をとらえられるか

「一葉の落つるを見て、歳のまさに暮れなんとするを知る」

≪訳≫桐の葉っぱが一枚落葉するのを見て季節が変わりゆくことを知る
≪出典≫『淮南子』説山篇

『淮南子(えなんじ)』は前漢の時代に淮南(わいなん)の王がお抱えの学者集団に編纂させた本です。日本でも有名な「塞翁が馬」という故事成語はこの本が出典。

さてさて。
アレンジされた「一葉落ちて天下の秋を知る」という句の方が膾炙していますが、オリジナルはこちらです。
秋なのに歳の変わりというのはおかしい気がしますが『淮南子』が成立した頃は10月を正月とする暦だったので間違いではありません。

落葉が早い桐の葉っぱ一枚が落ちる様子を見て、その後に起こるであろう季節の移ろいに気がつく。些細な兆候から未来の大きな変化に気がつくさまを自然の営みから読み解かせる。
実に漢文らしい典雅さを備え、かつ無駄のないスマートな一文です。いつかこんな文をものにしてみたいものです。


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