才能なのか、環境なのか、努力なのか、運なのか

ソフトバンク、日本シリーズ制覇、2年連続9度目。強いですね。私は22年間優勝していないオリックスファンなので、うらやましい限りです。シリーズMVPは甲斐捕手。6盗塁すべてを阻止した活躍は素晴らしい!このチームのすごさは選手層の厚さで、その要因の一つは育成選手から一軍に上がって活躍する選手がものすごく多いことです。今シーズン活躍した千賀、石川、甲斐、モイネロ4選手、すべて育成出身です。甲斐選手に至っては2010年育成ドラフトの6巡目。この年97人がプロ球団から指名を受けますが、甲斐選手は94番目だったそうです。

育成から入団して一軍で活躍する選手が多いのは、どうしてなのでしょうか? スカウト陣の「才能」を見抜く力なのか、ホークスの「環境」要因なのか、本人の「努力」なのか、はたまた「運」なのか。ホークスのスカウト陣は活躍する選手の特性・先行要因を見抜く力があるのかもしれないし、練習・指導環境や、スゴイ選手がたくさん周囲にいて常時優勝争いしている「環境」が良い影響を与えているのかもしれません。また、もちろん本人の努力という要素も大きいでしょうし、「運」という要素もあるでしょう。「運」と言えば、甲斐選手は甲子園には縁がありません。2年夏の大分県大会では、現在チームメートの今宮擁する明豊高校に準々決勝で敗退し、3年夏は初戦敗退しています。高校野球引退後、野球を続けようか辞めようか迷っていた甲斐を見かねて、当時の野球部監督が旧知のホークスのスカウトに一度見てくれと電話で依頼をしたそうです。これがきっかけでプロ野球選手につながっていきます。もし、スカウトがこの依頼を断っていたら、見ても見どころがないと思っていたら、スカウトがいいと思っても球団が指名しなければ、・・・。様々な縁が今につながっていきます。加えて、入団の年からホークスに「3軍制」が導入され実践の機会に恵まれたのも、甲斐選手の「運」かもしれません。ちなみに、千賀投手は、地元スポーツ用品店の店主からの推薦で、育成ドラフト4巡目で指名されたそうです。それが今や、球界を代表する投手の一人です。

才能なのか、環境なのか、努力なのか、運なのか。もちろんすべての要因が関係しているのでしょうけど、一番の要素は「努力」、やり続ける力であってほしいですね。願望ですけど・・・。この要素だけは、主体的に自分でコントロールできますから。生まれ持った才能があっても、環境に恵まれても、やり続けない人間が成功するってことはないでしょうからね。

だからと言って、普段学生や若手ビジネスパーソンに、巷にあふれている言説「努力すれば、必ず叶う」「がんばれば、夢はかなう」的なナイーブな言葉を吐かないように気をつけています。現実に、一生懸命努力をしていても努力が実らないことはありますし、必死にやり続けていても夢はかなわないケースが少なからずあるからです。

「努力すれば必ず叶う」的言説をする人の多くは、次のような推論をします。しかし、根本的に間違った推論です。

・育成出身の甲斐選手は、ものすごい努力をした。

・なので、ものすごい努力をすれば、育成選手でも甲斐選手みたいに活躍できる。

正確な推論は、こうです。

・ものすごい努力をすることなしに、甲斐選手みたいに活躍することはできない。

https://www.nikkei.com/article/DGXLSSXK60538_T01C18A1000000/

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