激動の2020年を7冊の本でふりかえる

新型コロナウィルス感染症のパンデミックで、世界中が震撼した激動の2020年も今日で終わり。いろいろと暗いニュースが多い一年でしたが、科学技術やライフスタイルの進化を通じて、人類はコロナパンデミックの苦難を乗り越えようと努力しており、明るいニュースも少なくありません。

今年はステイホームで家族と一緒に家にいる時間が長かった分、例年より多くの本を読みました。その中から、思い出に残る7冊を紹介して、2020年のnote納めとします。

1. 安宅和人, 『シン・二ホン』

Yahoo! Japanのチーフストラテジストオフィサー(CSO)の安宅和人さんが『イシューからはじめよ』以来、9年ぶりに書き下ろした『シン・ニホン』が、ダントツぶっちぎりで「今年のマイベストブック」でした。

グローバル化する世界の中で停滞する日本を憂い、著者が3年の歳月をかけて書き上げた本書は、現代版の『学問のススメ』と言っても過言ではないでしょう。地球温暖化や食糧問題、地域格差など、人類社会の持続性を脅かす問題が表れていることを、数々のデータに基づいて、具体的な証拠を示すとともに、具体的な対策にまで落とし込んだ力作です。

今や「withコロナ」という言葉はかなり市民権を得ていますが、これは実は本著の発刊記念イベントで安宅さんが作った造語です。彼の洞察力、戦略構築能力は抜きん出ており、「現代の知の巨人」から学ぶことは多いです。詳しくは以前のnoteに書いたので、そちらをご参考ください。

2. 宇田川元一, 『他者と働く』

コロナ禍の中、4月に会社内で別の部署に異動しました。テレワークがデフォルトの状況下、新しい人間関係と役割にフィットするのにかなり苦しんでいたとき、この一冊に救われました。

立場の異なる他者とともに、一つの目的に向かって業を成すには、まずはお互いの立場や目的に違いがあり、認識のギャップ(谷)があることに気づくことから始める。次に相手の視点に立って状況を観察し、認識のギャップを乗り越える橋を構築することを心がける。平田オリザの『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』などの文献にも触れながら、実践的なアプローチを説いている点が秀逸です。

『シン・ニホン』に続くNewsPicksパブリッシングの書籍をリストアップしましたが、今年は同社の本に当たりが多かったと思います。創刊1周年を迎えたばかりスタートアップでありながら、井上慎平編集長を中心に異彩を放つ同社のラインアップに来年も注目です。

3. アンディ・プディコム, 『頭を「からっぽ」にするレッスン』

マインドフルネスはビル・ゲイツなど、多くの著名人やビジネスマンが実践していることで注目を浴びています。本書は世界各地の寺院や僧院で修行したイギリス人が、10分間の瞑想を基本とした、マインドフルネスの実践方法を指南する入門書。

この本を読んで、マインドフルネスを実践したら、心が強く(strong)なるというよりも、柔軟でしなやかになった(resilient)になったように思います。そういった意味で、長谷部誠の『心を整える。』に近い印象でした。コロナ禍でストレスの多い今だからこそ、価値のある一冊でしょう。

4. 寺村輝夫, 『吉四六さん』

硬派なビジネス系の本に続いて、やわらか系を2冊紹介します。

幼い頃、寺村輝夫のとんち話シリーズが大好きで、『吉四六さん』『彦一さん』『一休さん』の3冊は何度も読みました。みなさんも小学校の図書館で見覚えがあるかも。とんち話の面白さを小学2年の息子に共有したいと思い、夜寝る前にベッドで読み聞かせしたところ、大ウケ!親子でゲラゲラと笑いながら、楽しく読みました。

この3冊はいずれも私が生まれた1976年に発刊されたもので、児童書のなかではかなり古いクラシックに当たりますが、なかでも『吉四六さん』は120刷を超える超ベストセラーになっています。昔の庶民の生活が伺えるお話しは、日本の文化を伝える要素もあり、世代を超えて愛されています。

5. 井上雄彦, 『SLAM DUNK』

コロナ禍の影響で、小学生の息子二人は数か月以上に及ぶ休校となり、家の中で一緒に楽しめるコンテンツがほしいと思い、『スラムダンク』の新装版全20巻を大人買い!

30年以上前の漫画だけれど、その面白さは今でも色褪せず、バリバリの現役でした。「あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?」などの名シーンを、親子で共有できたのは望外の喜び。ちなみに次男のお気に入りキャラは高宮ですw

https://www.amazon.co.jp/dp/4087925315/

6. 夫馬賢治, 『ESG思考』

今年、日経などのビジネス系メディアで、とくに注目を浴びたキーワードの「ESG経営」。「CSR(企業の社会的責任)」に代わって、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)は企業の持続可能な経営に欠かせない3つの要素です。

石炭火力は安価にエネルギーが得られる発電方式ですが、二酸化炭素を排出して、地球温暖化を助長することから、多くの機関投資家が石炭火力事業に携わる企業から投資を引き揚げていることは顕著な事例です。

SDGs(持続可能な開発目標)との関連や生い立ちも含めて、コンパクトに一冊の新書にまとまっている点がありがたい。副読本として、南博・稲場雅紀『SDGs―危機の時代の羅針盤』、渋澤健『SDGs投資—資産運用しながら社会貢献』もおすすめです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4065196108/

7. クーリエ・ジャポン編集チーム, 『オードリー・タン 自由への手紙』

コロナパンデミックで世界中でマスクの在庫が欠乏した頃、オードリー・タンは台湾のデジタル担当大臣として、薬局にあるマスクの在庫を確認して、予約・購入ができるアプリを開発するプロジェクトに携わり、世界中から評価されました。

クーリエ・ジャポンのインタビューに答える形で記された本書は、21世紀の現代が抱える課題と対策について、オードリーがフラットに語る文体が読みやすいです。

バイリンガル教育を奨励し、複数の言語に通じることで、人々が異なる文化に対して理解できれば、ジェンダーや人種などの違いを認められる包摂的(Inclusive)な社会が実現できる。言葉は英語や台湾語などのオーラルな自然言語に限らず、JavaScriptやPython、Scratchなどのプログラミング言語も含み、テクノロジーによる交流も認めている点は、プログラマとしての彼女の一面が見え、ユニークです。

『シン・ニホン』『ESG思考』などSDGsに関連した書籍と合わせ読みすると、20世紀までに蓄積されてきた社会課題に対して、21世紀に生きる私たちが生存していくための心構えができる心地がします。まだ読んでいませんが、『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』などの近著も合わせて読みたいです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4065220955/

まとめ

2020年はコロナパンデミックに翻弄された一年でしたが、今年も読書を通じて、心を成長させることができました。おおみそかの今日になって、東京では1300名を超える新規感染者が発生し(日本経済新聞記事)、まだまだパンデミックの状況は落ち着きませんが、2021年が良い年になることを願って、今年のnote納めとします。




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