東京都庁における広報改革例(22年〜23年)
少し前ですが、東京都庁の戦略広報担当課長を退職し、キャリアブレイクに入りました!
この機会に、東京都庁の広報改革の軌跡を、公開情報をもとにまとめておこうと思います。
X(旧Twitter)アカウント再編を生活者視点・組織横断で実施
LINE公式アカウントのリニューアルで友だち20万人 → 100万人を達成
行政ではまだまだ珍しい、公式ホームページのパーソナライズ(個別最適化)にチャレンジ
Instagram、Facebook、Google、note…など、デジタルプラットフォーム各社との連携
新型コロナウイルス感染症対策サイトが「オープンソース」「オープンガバメント」を前進
国際的な行政サービスデザインのハブを目指すデジタル庁との連携
データドリブンの第一歩はホームページのアクセス解析から
…など、東京都庁・戦略広報部が推進するデジタル広報改革例(22年〜23年)をまとめた詳細は 1記事目 へ。
この記事はその続編の2記事目です。
創刊70年以上、発行部数約250万部の広報紙「広報東京都」が大幅リニューアルで漫画家や著名人とのコラボも加速
このnoteを読んでくださっている方は、東京都が月に1回、新聞折り込みでお届けし、駅をはじめさまざまな施設にも配架している「広報東京都」をご存知でしょうか。
残念ながら僕は、もう20年近く紙の新聞はとってないこともあって(苦笑)こどもが生まれてからその存在を知りました。
ですが、長男が生まれた6年前からは最寄り駅で毎月受け取ってます。
1950年から70年以上続き、紙の新聞減少に伴って発行部数は減少してきているものの、今でも約250万部!
文科省や港区でも広報紙に関わらせていただきましたが、広報東京都が圧倒的な発行部数です。
そんな広報東京都が、23年5月号から大幅リニューアルしました!
たとえば、先ほどご紹介した「東京都の少子化対策」がテーマの6月号や、以下9月号などは、これまで広報東京都をご存知なかった方々、特に若年層世代の方々にも、かなり多く手にとっていただけたようで、すごく嬉しいです。
とはいえ、広報東京都の改革はまだ始まったばかり。
こんな嬉しい出来事も毎月あります(笑)し、これから先は、ひとりの都民、いち読者として、広報東京都を楽しみに受け取りたいと思います。
参考▼
WEB広報東京都
報道発表▼
広報紙「広報東京都」を大幅リニューアル
スタートアップ・こども分野をはじめとした組織横断・連携強化への挑戦
東京都庁には さまざまな部局 があり、「局が違えば別会社」と言われるほどの規模だったりします。
1記事目の「東京都庁・戦略広報部におけるデジタル広報改革(22年〜23年)」と上記までは、僕が所属していた政策企画局(前 知事本局)の戦略広報部として旗振りをした広報改革の一例なのですが、都庁が現在進行系でチャレンジしているダイナミックな取り組みとして、“縦割り行政”ならぬ“縦割り広報”に横串を通す"横串広報"です。
中でも特に、僕の個人的な興味・関心事項でもある「スタートアップ」「こども」分野の横串広報には数多く関わらせていただきました。
各局縦割りだったスタートアップ部門を統合して新設された「Team Tokyo Innovation」から「City-Tech.Tokyo」、そして「Tokyo Innovation Base(TIB)」へ
もっとも象徴的な取り組みは、宮坂副知事を全体統括リーダーとして、新たに設置されたスタートアップ戦略担当局長のもと、政策企画局、総務局、財務局、デジタルサービス局、産業労働局、港湾局がメンバーとなり、庁内の力を結集して昨年立ち上がったスタートアップ専門部門「Team Tokyo Innovation」でしょう。
これが22年12月の Startup Ecosystem Summit、23年1月の Startup Career Fair、2月に開催された日本最大級のグローバルスタートアップイベント「City-Tech.Tokyo(シティテック東京)」、そして先日有楽町にオープンしたオープンイノベーションプラットフォーム「Tokyo Innovation Base(TIB)」へとつながりました。
残念ながら、TIBのプレオープンには参加できなかったのですが、上記noteとともに、石井さんや藤沢 烈さんの以下投稿からも、その熱量が伝わってきます。
スタートアップシーンが盛り上がるフランスで象徴的な場となっている世界最大級のスタートアップキャンパス「Station F」の話は、宮坂副知事や藤本さんをはじめ、多くのスタートアップ関係者から聞きましたし、いつか自分でも現地に行ってみたいと思っています。
子供政策を総合的に推進するべく、22年4月に新設された「子供政策連携室」
そして、国の「こども家庭庁」に先駆けること1年、縦割り行政を打破して子供政策を総合的に推進するべく、22年4月に新設された「子供政策連携室」では、以下のように都庁一丸となったこども目線の取り組みを進めています。
スタートアップ施策と同様、こども関連施策についてもこれまでは、複数の部局がそれぞれ独自に取り組みを進めていました。
そんな中、子供政策連携室が旗を振っている #こどもスマイルムーブメント の一環として、こちらに注目いただいた方も多いのではないでしょうか。
また、ちょうど先日も「こどもスマイルムーブメント大賞」表彰式があり、僕もオンラインで視聴していたのですが、優秀賞の「キッズスター」「ベビカル」にはお世話になっているものの、最優秀賞の「夢★らくざプロジェクト」は恥ずかしながら知りませんでした。
受益者に届けるべき情報は本当にたくさんあるので、こども分野もスタートアップ分野も、組織横断型の取り組みには今後も1人の都民として注目していきたいと思います。
事業所管の現場の広報を支援する局支援の取り組み
他にもたとえば、以下のような他部局の施策広報にも、微力ながら関わらせていただきました。
【1】明るい未来の東京を切り拓くための「『未来の東京』戦略」の主要プロジェクトの1つ:東京ベイeSGプロジェクト
これはまず、この動画をご覧いただくのが一番わかりやすいかと思います。
ワクワクする素敵なイメージ動画です。
その一環で開催された「未来のエアモビリティ体験フェス」では
空飛ぶクルマで東京の空を飛ぶ「VRシミュレーター」
試乗&記念撮影ができる空飛ぶクルマの実機展示
などもあり、僕もプライベートでもこどもたちを連れて、羽田空港で体験したりしました。
【2】引っ越しの際、水道に関する各種手続きがスマホから24時間いつでもできる「水道局アプリ」
また、水道局アプリの登場によって、水道に関する各種手続きがスマホで簡単スピーディに完結できるようになりました。
10年で計10回引っ越したというのがちょっと多いのかもしれません(笑)が、引っ越しの際にスマホから24時間いつでも手続きができるこのアプリ、ひとりの都民としても、とてもありがたいと感じています。
しかも、アプリストアのレビューには一つ一つ返信(500件以上!)し、ご意見を受け止めてアプリの改善に着手するなど、リリース直後から継続的に改善を続けている様子は、この「ユーザーの声に耳をすませて。東京都水道局アプリは改善を続けています」のnoteにまとまっています。
また給水人口は約1,367万人、ロンドン・ニューヨーク・パリなどの各国主要都市を上回る規模で、安全でおいしい高品質な水道水を24時間365日、休むことなく供給し続けている都の水道事業については、宮坂副知事の上記noteがとても勉強になりました。
まさに、都市インフラですよね。
【3】自殺予防キャンペーンのスペースに東京都公式X(旧Twitter)アカウントが出演
自殺予防キャンペーン「#いのち支える」の関連イベントとして開催されたトークイベント「#いのち支える 夏休みの終わりに語ろう」に担当課長が出演する際には、Twitter Japan社(当時)の広報や公共政策の皆さまと連携させていただきました。
フォロワー数100万以上の東京都公式X(旧Twitter)アカウントが、X(当時はTwitter)スペースに出演したのはおそらく初めて!?笑
Twitter Japan社と東京都が連携した情報発信として始まったこのプロジェクトは、残念ながら第1段の防災のみで止まってしまいました(この件で…苦笑)が、宮坂副知事がいつもおっしゃる「直接話法」の広報として、少しずつでも前進できたと思っています。
【4】パーパス・バリューの都庁版:デザイン思考のための「デジタル10か条」
一般的な対外広報というよりは、まずは都庁職員向けのインナー広報の色合いが強いですが、デジタルサービス局の「デジタル10か条」も少しずつ浸透し、実践に繋がっているのではないかと思います。
ちなみにこの件では、20年末まで所属していた会社で10年近く担当させていただいた経営改革コンサル案件での経験が、非常に役立ったと思っています。
従業員数1万5,000人の民間企業と、総計約17万人もの巨大組織・都庁とではもちろん勝手はまったく違うのですが(苦笑)
スタートアップ&こども分野とともに、どの部局のどの事業・取り組みについても本当に素晴らしく、より多くの方々に知っていただきたいものばかりです。
広報冥利に尽きるなぁと、とてもありがたく感じています。
世界中のスタートアップと世界各都市の首長級が同時に東京に集結!「City-Tech.Tokyo」を初開催
東京都庁の戦略広報部に在籍した濃密な時間の間に、本当にさまざまな案件に携わせていただいたのですが、もっとも印象的な案件を1つ挙げるとしたら、僕にとってはこちら、先ほども少しだけ名前を出した「City-Tech.Tokyo(シティテック東京)」です。
目標として10,000人の参加(オンライン含む)を掲げていましたが、事前の想定をはるかに超え、リアル会場に来場いただいた方だけで10,000人以上、オンラインを含めると計26,000人以上の方にご参加いただきました!
世界の都市が集まり、共通の課題を解決するために議論する国際的なネットワーク「G-NETS (Global City Network for Sustainability)」の首長級会議「Leaders Summit」も並行して開催されたのですが、行政(東京都)が主体となってこの2つのイベントを同時に主導することで、東京を舞台に、政治・民間(スタートアップ)のシナジーが生まれるというダイナミズムを、これほど感じた瞬間は他にありません。
さらに進化させて24年に開催される「SusHi Tech Tokyo 2024」も、今から楽しみです。
「アジャイル行政」への変革を着実に:四半期ごとに進捗状況を公表、3か月で320か所の改善など
他にも、東京都庁に入る前からひとりの都民として注目していた「未来の東京」戦略 や「シン・トセイ」なども、当事者として広報戦略に関わらせていただいたのは、個人的にも非常に勉強になりました。
戦略の内容はもちろんなのですが、「作って終わり」になりがちな計画を定期的に見直してアップデートしていることは、中に入ってみなければ、ここまで意味を実感できなかったと思います。
そしてなんと、シン・トセイの「都政スピードアップ・制度改革プロジェクト」として、その進捗状況を四半期ごとに公表!
1記事目の「東京都庁・戦略広報部におけるデジタル広報改革(22年〜23年)」でも紹介した新型コロナウイルス感染症対策サイトをきっかけに、先日の水道局アプリにつながり、今では以下のように、「3か月で320か所の改善」するまでに至っています。
(もちろん、まだまだ課題が多いというのは、宮坂副知事がおっしゃるとおりだと思いますが)
東京都アジャイル型開発に係るプレイブック も公開されましたし、行政の「無謬性神話」からの脱却 という意味でも、この動きにはもっと多くの方々に注目いただきたいと思っています。
採用・組織基盤強化、そして改革のうねりを区市町村全体へ
このまとめの最後にご紹介したいのは、広報ではなく「採用」そして「組織基盤強化」についてです。
広報・情報発信とは別途、自身の強みの1つとして挙げられるのはこの分野だと個人的に思っています。
新卒で入った会社はリクルート系の上場企業だったり、前々職のコンサル会社では経営改革案件に約10年関わったり、本業外でもNPO法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)のパートナーとして、社会起業家・ソーシャルベンチャーの皆さんとご一緒させていただいたので…
なので、民間人材「最初の3人」のうちの1人として、今では総勢100人を超えてなお 積極採用を続ける戦略広報部 の立ち上げ期に、微力ながら貢献できたのではないかと思います。
また、1記事目の「東京都庁・戦略広報部におけるデジタル広報改革(22年〜23年)」でも紹介した GovTech東京(ガブテック東京)立ち上げまでのプロセスについて、デジタルサービス局の皆さんとご一緒させていただいたことも本当に勉強になりました。
僕がもともと事務局長をしていた日本GR協会(代表理事:吉田 雄人・前 横須賀市長)の上記イベントでも赤裸々に語られましたが、デジタルサービス局がすごいスピード感で進めてきた区市町村支援。
そして22年から開催されている「区市町村DXアワード」も、9月に立ち上がったGovTech東京も、本当に素晴らしいと思います。
一方、本来はDXのみならず、広報という文脈で、僕がもっと旗を振っていきたかった分野です。
個人的な広報つながりは各区市町村とありましたが、業務としては残念ながら、ほとんどありませんでした。
(力不足を痛感…苦笑)
実現できたことよりも、できなかったことの方が圧倒的に多く、正直なところ、心残りばかり、後ろ髪をひかれる思いです。
だからこそ今改めて、宮坂副知事や、Google → アメリカ政府デジタル・サービス(USDS)の動画を見てみました。
僕のパブリックキャリアのスタートは、民間で働きながら文科省に飛び込んだ官×民 複業。
その後の国 × 地方の公務員複業もとても貴重な経験だったと思いますし、キャリアのみならず、人生における視野が大きく拓けたと強く感じています。
そういう意味でも、宮坂副知事がおっしゃっているとおり、「職業人生の中の一部を公共部門で過ごす」という選択をする仲間が、もっと増えるといいなと思っています。
デジタルマーケターも含め、戦略広報部の採用もちょうど始まりました。
部長級はもちろん、課長級も年収1,000万は超えるはずですし、ご興味をお持ちになる方はぜひ。
そして改めて、日本を代表するテック企業・ヤフー株式会社の代表取締役から、行政のフィールドに2019年に転身された宮坂副知事の2期目も9月から始まりましたし、これまでの改革とともに、これからの東京都庁の広報・デジタルマーケにも、注目いただければ嬉しいです。
ということで、すでにお声がけいただいている官公庁や自治体の研修・講演や審査委員・評価委員等はいくつかあるものの、キャリアブレイクに入ってこれからしばらくは、少し時間ができる予定です。
ここ数年はSNSでもあまり近況報告もできてないので…よろしければ以下もご覧いただき、SNS経由でお気軽にメッセージいただければ幸いです。
皆さん、ご連絡をお待ちしております〜!
近況報告・情報交換させてください!
▼SNSアカウント▼
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世界最大級のオンライン動画学習プラットフォーム「Udemy」で最高評価
そういえば、個人のSNS等では特にお知らせできていなかったのですが、世界最大級のオンライン動画学習プラットフォーム「Udemy」でこんな講座をやったところ…
22年に最高評価をいただくことができました!
(23年に入ってからは、事例等が少し古くなってきてしまったたからか、評価も若干下がってますが)
東京都庁で仕事をする前なので、都庁の事例は「新型コロナウイルス感染症対策サイト」のみですが、よろしければ以下ご覧ください。
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