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坂のある街の筋肉質な猫

日暮里の細い坂道を、
夕陽に向かって、とぼとぼ歩いていると、
いかにも日暮里感でココロ暮れ始める。

気持ち日暮れて、
顔も優しく緩むと、
行き交うひと誰もが、
みな良い人に見えてくる。

駅から続く坂を登りきったら、
向こうに広がりゆく人情の銀河…、
かと思いきや、

ちょい派手な看板。

まあね、
でも、みんな生きているのだから…と、
頭の筋肉ほぐしながら、

お約束通り、
「夕焼けだんだん」を、
一段一段楽しみながら歩く。

う〜ん、
た〜しかに〜、
時間がゆっくり流れてるなぁ〜と、

気持ちが、ちょっと夕焼け、
右側では、ベーグルも夕焼け、
ちょい胸焼けしないか不安な、
ベリーダンスのお店を通り過ぎ、

商店街に入ると、
ふと、何かが脚に当たってくる。

ん……? 

猫だ、

筋肉質の


夕焼けだんだんを、
毎日上り下りしているからだろうか?
肉付きが良い。

どうやら人慣れしているようで、
ずいぶん懐いてくるから、

ウチの猫にやるように、
背中をポンポンと軽く叩いてみると、
やっぱり肉付きが良い。


気持ちよさそうにしているが、
マッスルキャット。
やっぱ筋肉質だ。

僕はその子に
「マッスル」
と名前を勝手に付けた。


ごめんね、マッスル。

ところで、マッスル。
猫って、
柔らかいんじゃないの?

それって、
僕の固定観念?

想念が頭の中で固まって、
筋肉質ってこと?
脳内マッスルじゃん。


猫だって、
柔らかいのも硬いのもいるんだょ。
人間と同じだよぉ。

そうなのかぁ、
固まりかけていた考えが、
ひとつ柔らかくなったかなぁ。
サンキュー・マッスル。


猫は色んなことを教えてくれるよな。

じゃあな、マッスル。
あまりバキバキになると、
犬みたいだぞぉ!


坂の細い道を
言葉探し続けて、
夕焼けの前で出会い、

夜が来る前に、
別れた二人。

名も知らぬあなたに
勝手に名前を付けたね、
マッスル。

懐かしさの一歩手前で、
込み上げる様々な思いと、
盛り上がる筋肉。

夕暮れ時と僕と猫。
坂道と階段と筋肉。


家に帰ると、
冬が来る前に、
夢でもし会えたら素敵なことだね、
あなたに会えるまで眠り続けたい〜、
って言ってるような風情で、

ウチの猫(しじみ)は、
ハウスの中で、
「の」の字に丸まっている。

さよなら
マッスル。

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