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ミドルキャリアの自己変革実践方法~新卒入社した大手企業に16年勤め上げて課長目前だけどいまだに確固たる自信がない~【解説編④】

こんにちは。堀内猛志です。
前回のnoteでは『ミドルキャリアの思考方法とは?~新卒入社した大手企業に16年勤め上げて課長目前だけどいまだに確固たる自信がない~』というキャリアストーリーの解説編③を書きました。

ここまで、ミドルキャリアに起きる事象、その要因とメカニズム、及び、思考方法について解説してきました。今回のnoteでは、ミドルキャリアの悩みをぶち破る実践方法について解説します。


実践①すぐにオプションを整理して可能性を狭めない

太郎のように真面目で優等生、新卒入社の1社経験の人に多いのは、労働市場におけるリテラシーが低すぎるという事実です。結果、以下のようなフローをたどります。

①自分のことが客観視できていない
ゆえに、
②自身の市場価値を正確に測定できない
ゆえに、
③自身の中で考え得るキャリアの選択肢が少ない
ゆえに、
④盲目的にエージェントを頼る
ゆえに、
⑤短期的に希望が叶う場所にぶち込まれる

まさにカモが葱を背負って現れる状態で、人材エージェントからするとよだれが出るような人材です。エージェントの仕組み上、相談で終了するとタダ働きです。なので、①②に向き合って何度もコーチングやキャリア相談に乗ってくれることはありません。1回目の面談後すぐに候補企業を複数社を紹介し、早めに転職を決定させることでコストを抑えたいのです。「求職者に寄り添ったエージェント」と銘打っていても実際はそんなことはほぼありません。そもそも、エージェントのカウンセラーを名乗るほとんどの人材はキャリアコーチングやティーチングの能力を持っていないのです。

あまりにも強引に転職を勧めてくるエージェントであれば、あなたもさすがに気づくでしょう。しかし、自身の中で整理しようとしても③の状態で、選択肢が多くないことに気づきます。

求職者の頭の中でつくられるキャリア選択ストラクチャー

太郎君の場合、社内に残り「新規事業を創る」という選択ができるのであれば一番良いと本人は考えています。一方で、その選択がなくなったときに、「今の業務を続ける」「他部署に異動する」という選択はしたくないので、必然的に「社外に出る」という選択の中で次を選ぶ必要が出てきます。

しかし、「複業」は社内規定で禁止されているし、個人事業主や起業も今は勇気がでていません。そうすると必然的に「転職」しか選べなくなってきます。

そこでほとんど人が自分自身に問いかける質問があります。
『自分は何がしたいのか?』
ということですね。

一番やってはいけないのは速攻で次の企業を探すことです。性格さえよければどんな人でもいいから彼氏が欲しいと言っている人を想像してください。そういう人に本当に性格が良い人を紹介してうまくまとまった経験はありますか?一度会った後に「なんか違う」「くちゃくちゃ食べる人はダメ」「前の彼女と別れた理由が~」とか色々言い出す人が多いはずです。これは転職活動も同じで、軸を決めないまま選考に行くと、must条件とwant条件がごっちゃになり、自分でも気づかないうちに変な選択をしてしまいます。本当は大事じゃないのに「ビルがめっちゃきれいだった」みたいな理由で興味が急上昇したりします。

そうならないために下記のような4つのPに企業の魅力をまとめる人もいます。

企業の魅力整理の4P

そして、合理的な人ほど候補企業を以下のようなマトリクスに当てはめて評価します。

対象企業の魅力比較

すごく合理的ですが、どんどん自分の選択が狭まっているのに気づくでしょうか?そもそも転職という手段でいいんでしょうか?A社~E社だけでいいのでしょうか?評価軸は4Pのみでいいのでしょうか?

人間には、選択肢や情報が多ければ多いほど選べなくなるという「選択過剰負荷」または「情報過剰負荷」というバイアスがあることが行動経済学で証明されています。負荷がかかることを脳は嫌がるので、思考停止、または少ない選択肢や情報のみで早めに処理しようとする力学が働きます。

20代の転職ならそれでもいい場面もあります。以前のnoteで解説したように、そもそも「仕事」ステージにいる人は、自分のタレントが磨かれていないわけで、自分を選んでくれる企業も多くはないのです。選択肢が少ないからこそ悩まずに選びやすいとも言えます。

しかし、様々なスキルを持っているミドルキャリア人材は違います。スキルも経験もあり、「志事」ステージにいるのですから、残りの人生についてもっと向き合う必要があります。

実践②自分に正しい問いを立てる

重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない。

ドラッカーの『現代の経営[下]』の一文

人生に迷った人が返って欲しいのがこの言葉です。さすがドラッカー先生、浸みわたりますね。そもそも選択肢が狭くなるきっかけは自分へのある問いでした。

『自分は何がしたいのか?』

これですね。この質問が太郎君を含めたミドルキャリアの視野を狭めるのです。「自分は何がしたいのか?」とは、『やり方』への問いです。なので、4Pなどの報酬の整理や、キャリアオプションの整理しか頭に浮かんでこないのです。

『やり方』も大事です。しかし、ミドルキャリアが残りの人生をかけて問いかけるべきは、

『自分はどうありたいのか?』

という『あり方』です。

「あり方」と「やり方」の概念的違い

世界で一番「HOW・TO」本が売れている国が日本です。この事からもわかるように目先の方法論に振り回される人が多いのです。以前のnoteでも書いたように、正解が1つだった時代は成功者の真似をする、つまり「方法のコピペ」は有効だったと思います。しかし、VUCAの時代、多様性の時代では、羅針盤は自分の外ではなく、自分の中にあるのです。

上記の図だと概念的すぎてイメージがわかないと思うので、動詞に変えますね。

「あり方」と「やり方」の違いの動詞化

何となくわかってきたと思います。30~40年間培ってきた自分の中にある様々な資本を使い、自分にとって最高の人生にするためのマインドの整理があり方です。僕が尊敬する元LINEの青田さんの著書からの抜粋ですが、下記の図解がより一層わかりやすいと思うので引用させてもらいます。

『キャリアにおける5つの資』青田さんのnoteより引用

青田さんは5つの資を使うことがキャリアには必要だと解説されています。20代~30代前半はまだまだ機会を得たり、強みを磨いたりする期間なので、あり方の前にやり方に特化してもいいのですが、30代後半~40代にはすでに今まで培った資本があります。人生100年時代、その資本だけを使って生きるのは難しいので、リスキリングという形でさらに資格、資源、資質を培う必要はあるのですが、いずれにせよ、ゴールに向けて資産を生み出し続けることを考える必要があるのです。

実践③マインドセットのためのリフレーミング

以前のnoteでも書いたように、創造性研究で知られるスタンフォード大学のティナ・シーリグ教授は「問いはすべて枠組みであり、答えはその中に収まる」と言っています。

問いと答えの関係

ここまで読んでもらえれば、この意味がよくわかると思います。やり方だけを考えている人は、その外側にあるあり方の存在に気づけない思考になっているのです。

自分自身のフレームの外側に気づくためにコーチングを受ける人も多いのですが、今回は自分でできるリフレーミングの実践方法をお伝えします。

大切なのは、自分へ『問いかける事』です。

脳は、「問いかけられると考える」という性質を持っています。テレビのクイズ番組やカフェで聞こえてくる何気ない隣の人の会話を思い出してください。肯定文ならば耳から聞こえてきても素通りするだけなのに、疑問文で聞こえてくると無意識に回答をつくっていませんか?

このように、自身に問いを立てることが自身の中にある答えを見つけるトリガーとなります。では、自身の中にある答えを引き出せる質問とはどういうものでしょうか。細田高広さんのコンセプトの教科書の中にわかりやすいリフレーミングのやり方があったので、そちらを私なりに変更して活用させていただきます。

まず、こちらが元となったリフレーミングのための問いかけです。

リフレーミングのための問いかけ

真ん中に自分の中の重要な問いを置き、それを①~⑧の問いに変えていきます。重要なのは、真ん中に置く問いです。今回は、「30代後半を充実させる仕事の選択とは?」という問いを置いていますが、『30代後半』『充実させる』『仕事』『選択』と分解し、それぞれを最も適切なワードに変えることで自分にとって適切な問いに変わっていきます。

これら8個の問いへの回答イメージが下記です。

リフレーミングの問いに対する回答イメージ

上記の4Pのように自分の軸を考えるやり方よりも、よほど自身の発散に繋がることがわかると思います。これは問いを「仕事」に置いているので、回答はしやすい一方で、思考が仕事というフレームに収まっていることもわかると思います。「仕事」を「キャリア」や「人生」などに変えて問いを立てると、より大きな視野、視点での回答が得られると思います。

実践④早めに脳以外の部分を動かす

実践するのは5人に1人。継続するのは25人に1人だけ。そんなことをよく聞きますが、本当に実践する人はいないです。このnoteを読んでいる人で、実際にリフレーミングのフレームに沿って問いを立てる人も、残念ながらなかなかいないでしょう。

そういう人に伝えたいマインドがあります。それは、

「イマスグ・ゲキテキ・カンペキ」を求めない

ということです。
イマスグに効果を得たい。ゲキテキな変化が欲しい。カンペキな結果が出なきゃイヤ、って思ってしまうことってありますよね。「イマスグ・ゲキテキ・カンペキに変わらなきゃイヤ」という考え方は、変わるチャンスを遠ざけてしまう本当に危険な思考です。一日や一週間でがらっと変化することはありえません。キャリアのことだけではなく、ダイエットでも勉強でもなんでもそうですよね。ごく短期間でカンペキに上達することはありえないのです。

そのために、まずは「脳以外」を動かしましょうキャリア・クラフティングでは動くことから始めるものです。今このnoteを読んでいて動いているのは脳だけですよね。脳は早く動けますが、脳で考えたことを話したり、書いたりするのはなかなかスピードが追い付きません。そのタイムラグによって脳に負荷をかけ、面倒になって思考が止まってしまうのです。

書き出すことから始める人が多いですが、まずは声に出してみることを私はおススメしています。書くよりも声に出す方が早いです。また、書いているとなんだかキレイにまとめたくなってきたりしますよね。書くという行動は、脳を発散よりも収束に向かわせます。だからこそ、一旦、自分の考えをひたすら声に出してみてください。そうするとどんどん脳にある考えが外に出ていくため、思考が楽になってきます。

発散ができたらようやく収束です。そこからは、手を動かし、足を動かし、身体ごと動かし、より大きな「動き」をしてミドルのキャリアを創っていってもらいたいと思います。


太郎君を例にとり、4回にわたってミドルキャリアを解説してきましたがいかがでしたでしょうか。あくまでもひとつの例ですが、これを読んでいる人に少しでも「動く」きかっけになったのであれば幸いです。



自身の常識をリフレーミングしたい方、太郎のようにリアリティショックからキャリアが見えなくなった方は以下よりご相談ください。

自分のタレントを本業以外の場面で活かしたい、キャリアクラフティングを実践したいという人はこちらからご連絡ください。

それでは今日も素敵な一日を!

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