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「デジタル看護入門」第18回 〜在宅における点滴管理とICT〜

 前に中心静脈栄養の点滴についてお話ししましたが、今回は輸液ポンプの説明をします。輸液ポンプは人工呼吸器と同様に、ほぼ病院などで使用されますが、在宅療養で決められた量や速度で点滴を行う場合、在宅でも輸液ポンプを使用することがあります。

 輸液ポンプは、ひと昔前までは、機械も大きく、音もうるさく、きちんと点滴のルートを機械につなげても、すぐに「気泡」や「閉塞」などでアラームが鳴ったり、再確認しても、アラームが鳴り続けたりと、なかなか管理が大変でした。いまでは、さまざまなセンサーの向上や、機械のコンパクト化、そして、軽量になり、バッテリーも長持ちするようになりました。

 そして、さまざまな輸液ポンプ使用時のリスクマネージメント、実際に使用する看護師さんからのフィードバックを参考にして、改良が進められています。たとえば、昔の輸液ポンプは、一時停止の状態がしばらく続いても、アラームが鳴りませんでした。点滴があと少しでなくなりそうで、もうすぐ交換だから、ということで輸液ポンプを一時停止にして、そのまま他の用事をしている間に、交換を忘れてしまったり、あるいは、点滴の交換後に、開始ボタンを押し忘れて、そのまま一時停止状態が続いてしまっていたり・・・。私もよくやりました。とくに血圧降下薬の持続点滴や、インスリンの持続投与などのときは、一時停止状態の継続が、命とりになることがありましたので、それはそれは神経を使って、輸液ポンプを操作していました。いまでは、一時停止状態でもきちんとアラームが鳴りますので、そのような事故はほとんど起こらないかと思います。

 あとは最新のICT技術を活用して、輸液ポンプを遠隔操作できると便利になる?と思ったのですが、これに関しては、なかなか大きな問題があるようです。これは別の機会に詳しくお話ししますが、なぜ医療機器の遠隔操作に関する進化が遅れているのか、一番の理由としては、医療機器がネットワークに接続していれば、不正操作のリスクが高くなるからです。実際にICT技術を活用した輸液ポンプである「スマートポンプ」がすでに大きな病院などで使用されていますが、かなり強固なセキュリティを装備して運用をしているです。これらのICT技術を活用した医療機器は、セキュリティがきちんと確保されていなければ、患者さんの生命の危険に関わりますので、今後はより正確な技術の開発や、現場への慎重な導入や運用が必要になってくるかと思います。

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