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「デジタル看護入門」第8回 〜脈拍測定とICT〜

 今回は、バイタルサインのひとつであり、循環器系などでは重要な「脈拍」です。おおよそ看護師さんは、患者さんの手首にある橈骨動脈に直接触れて、脈拍を測定していることでしょう。自動血圧計や酸素飽和度測定器(サチュレーションモニター)などでも脈拍数が表示されますが、ほとんどの場合は、直接、いまでのアナログで測定しているのが、この「脈拍」かと思います。

 最近、流行しているウエアラブル関連では、腕時計タイプのもので脈拍が測定できるものがあります。「心拍数」と表記しているウエアラブルもありますが、多くは「脈拍数」であり、厳密にいえば、「心拍数」と「脈拍数」は異なることは看護師さんであればお気づきのことかと思います。基本的に「心拍数」は胸部にベルト状のものを装着するタイプでないと測定できませんので、腕時計タイプで測定できるのはあくまでも「脈拍数」となります。

 自動血圧計や酸素飽和度測定器(サチュレーションモニター)で測定できる「脈拍数」も数値のみの測定であり、たとえば脈拍の不整、脈拍の強さなどをデジタルで表現できるICT医療機器はまだ開発されていません。この部分は、看護師さんのアナログな技術に頼っている、あるいは看護師さんの手先がデジタルより正確であるといえる、数少ないジャンルなのかもしれません。

 といいますのも、脈拍測定は、「脈拍数」だけを測定する看護技術ではありません。実際に患者さんの手を取り、自らの手で触れることで、手の温度、皮膚の性状、上腕の関節可動域の確認など、さまざまな観察を同時に行うことができます。そして、脈拍を測定している状態で、呼吸数を測定したりもします。(呼吸数を測定しますね、といって測定すると患者さんは呼吸することを意識して、正確な呼吸数が測定できないため、こっそりと呼吸数を測定する、看護師の一般的なテクニックです)

「脈拍測定」は、患者さんにとっても、看護師さんの手のあたたかさが伝わり、それが安心感などにつながったりもします。ごく自然な形で、患者さんに触れることができる貴重な看護技術です。「脈拍測定」という看護技術の、すべての役割を満たすことができるICT医療機器の開発はなかなか難しいのではないでしょうか。

フライトナースや離島の保健師の経験を還元できるようなバーチャルリアリティ環境の構築およびコンテンツ作成が主な研究分野です。研究のための寄付を募っております。研究の成果はこのnoteで公表していく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。