見出し画像

2020年後半の3つの展示

2020年も残り少なくなってきた。今年はコロナ禍で世界が一変したが、私にとってもコロナの影響は大きくて前半は展覧会の中止に次ぐ中止だったりした。しかし、だからこそか、人生にとって重要な展示がこの11月に集中した。それぞれが異なる意味で大切だった。

東京好奇心2020渋谷

画像7

東京のBunkamuraでのグループ展。その代表イメージとして作品を展示させて頂いた。母体となった「東京画」との縁は約10年くらい前から始まった。アートディレクターの太田さんが当時お台場で運営していたギャラリーを訪ねて「展示したいんです!」って言って微笑まれたのが2011年くらいだろうか。その後オーディションを経てこのプロジェクトに加わることになった。この「東京画」というアートプロジェクトは東京を100人の写真家が撮るというコンセプト。

「東京画」は海外での展開に積極的だ。特にパリはルーブルに近い区役所のギャラリースペースで展示を開催している。展示を近い場所で見ていた人間として、パリの人は東京が好きだし、興味深いんだなというのをよく感じた。そういえばパリに移住したての時に何気なく歩いていて、ギメ美術館に行き着いたら丁度魯山人の展示をしていて、それを太田さんが仕切っていてびっくりしたものだ。料理も写真もいろいろな繋がりがある。

画像6

そして今回の「東京好奇心2020渋谷」
ハレの場というか、10年近いプロジェクトの一つの帰結点の展示に私の作品を使っていただいたことは嬉しかった。「希望を見出せるから」と選んでくれた理由を言われた時は、もっと嬉しかった。ポジティブなことを素直にポジティブに捉えられる様になったのは時間の流れだろうか。100人の写真家はいろいろな写真家がいる。ものすごいキャリアの方もいれば私のような者もいる。スナップの写真もあれば作り込んだ写真がある。それらがモザイクのように合わさって展示空間を作っている。それ自体が東京というcityの本質を体現しているようにも感じる。その一つのピースとして、太田さんが伝えたかった東京好奇心に寄与できたことで、一つの役割を演じられたように思う。

画像3

画像5


世界と溶け込むに至るまで

画像8

大阪のギャラリー展示は本当に久しぶり。その大阪で西村大樹さんとの2人展を11月に行った。西村さんとはパリのギャラリーで出会った。本当に偶然の出会いだったのだが、その後連絡を頂けるようになり共同展を提案してくれた。展示を終えての結論から言うと、刺激的な取り組みが始まったように思う。始まったと言う書き方は、今回の2人の活動をcompassというアートユニットという形で継続させていくことになったからだ。

西村さんは画家で、私は写真家。私はポートレイトからの作品の一方で彼はランドスケープや自然から作品を作っている。でも一緒の空間に置いて違和感がない。今回はお互いの作品から共作を作ったが、西村さんが私の作品に手を加えたものはおもしろかった。こういうifもあるのかと言う感じで考えさせてくれた。気づきの多い取り組みになったように思う。

私も西村さんも政治的なことに関心が強い。一方で、お互いの政治的な立場は完全に一致ではない。どう反映させていくかも違う。それが良い。同じことを尊ぶことも大切だが、差異を喜ぶ視点が好きだ。彼との差異を緊張感を持って楽しむ。compassは世界を均一なものにするのではなく、いろいろなifを通して多様なものにするためにあってくれたらと感じる。

画像9

画像10

画像11

Re Fantasy

最後は個展。場所はいつもお世話になっている京都のgallery Mainさん11月終わりから12月頭まで行った。この個展は自分の作家の歩みの一つの区切りとして展示させてもらった。私が多摩美を卒業して大体10年。その間の初めての個展から始まる活動やフランスでの生活、そして来年大台に乗る自分の年齢。新しい出会いや思考、見出した技術や技法。そう言ったことを区切り、新しいものを取り入れステップに行くための区切りとしての個展をさせてもらった。会場には最初の写真集の作品や、多摩美の卒業制作を起点に作った作品、作品を表紙に起用してくれた本、ポートフォリオなどを展示した。

画像1

私は何かを捨てるということがとても苦手な人間だ。それが良い時ももちろんあるが、時には突き放す勇気がいる。突き放すには、その突き放すべきものは何なのかを確認する必要がある。そのための展示でもある。

突き放すと言っても、一方で技術的な進歩で前から作っていたものがやっと満足いくものになることもある。今回展示した中で、モノクロの作品は初めて納得できるクオリティーの作品にできたと嬉しい。紙がハーネミューレのパールの恐ろしく分厚い紙。そして恐ろしく高価。それをちゃんとした大判プリンターで印刷してもらえたからこそできる美。ちなみに新しいフィルムスキャナーでスキャンしなおしたと言うこともある。スキャン、紙選び、プリンター、どれ一つ欠けても良いものができない。特にモノクロはそれがシビアなのだが、やっと満足できるものができた。そしてその作品が今回の展示では嫁に出てくれた。昔村上隆さんが「自分が納得できないものはやはり売れない」と言うようなことを言われていて、本当にそうだと思う。自分が一番自分に厳しく入れる。その声から本当に満足できるものを作っていけば結果もついてくるのだと感じる。

あと、数ヶ月前から取り組んでいる、ライトボックスを作るものもだいぶん板に付いてきた。日本はDIYがしやすい。自分が満足する展示環境を整えるタイミングだ。

画像2


そんな感じでしょうか。まだまだまだまだ。
この個展で今年は最後かと思っていたら、ご縁を頂いて年末年始にかけて京都の町屋を改装した場所でも展示を始めている。東京での展示が2月から。有難いことに機会を多く頂いているからこそ、来るたびに変化や進化を見せていきたい。
生きているのだから、それが使命と勝手に決めている。

画像11


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?