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マイケル・ウィンターボトム監督『バタフライ・キス』(1995)『ひかりのまち』(1999) 【映画監督の初期作品】【動画未配信の映画】

マイケル・ウィンターボトム監督と言えば、今では、ドキュメンタリー映画の名作が多い印象ですが、90年代は、ロバート・カーライル主演のラブ・ストーリー『Go Now』や長編デビュー作の『バタフライ・キス』など、虚無感が漂う美しい映画を撮る印象が強く、とても好きな監督の一人です。


  特に、『バタフライ・キス』は、内容が少し過激でインパクトがあるため、個人的に1990年代のBest10本に入る作品です。



映画の大まかなの内容は、連続殺人犯のユーニス(ユー)に、恋をしてしまったミリアム(ミー)の女性二人による逃亡劇を描いたものです。狂気に満ちたユーニスを演じているのが、アマンダ・プラマーです。アマンダ・プラマーは、『人生はビギナー』などの名優クリストファー・プラマーの娘としても有名ですが、やはり、『パルプ・フィクション』の強盗犯のティム・ロスの恋人役としての印象が強い女優です。それでも、僕のなかでは、こちらの印象の方が勝っています。

 そして、脚本は、マイケル・ウィンターボトム監督の前期作のほとんどの作品を担当しているフランク・コットレル・ボイスです。マイケル・ウィンターボトム監督作以外に、ダニー・ボイル監督の『ミニオンズ』(2004)や、最近だと、『グッバイ、クリストファー・ロビン』(2017)などがあります。多くの作品に共通するのが、社会の異常さを浮かび上がらせる鋭い手法です。

  この映画でも、一見、ユーニスの方が異常者のように見えますが、能く能く考えると、社会の歪みに苦しんでいる人物のように捉えることができます。社会の鋭い刀のような存在であるユーニス(ユー)は、ミリアム(ミー)との二人の世界では、純粋無垢な存在です。そして、最後の場面のミリアム(ミー)の行動は、その二人の世界を永遠にするための印象的なラストになっています。



  そして、もう一つ大好きな作品が、『ひかりのまち』です。映画は、よくラストで名作かどうかが決まると言われますが、この『ひかりのまち』も、主人公がロンドンの街を走る最後の場面がすごく心に残る作品です。

  原題は、『Wonderland』で、こちらの方がしっくりくるような気がします。セドリック・クラピッシュ監督『猫が行方不明』もそうですが、日々、少しだけ世界に違和感を持ちながら生活していて、都会の街で、もがきながら居場所を見つけようとしている様子が描かれており、多少なりとも、誰もが共感できるものです。

  そして、タイトルにあるように、都会のまちのひかりは、人々を魅力的にも、不安定にもさせる不思議な存在で、この映画『Wonderland』に必要不可欠な要素になっています。

  【映画監督の初期作品】実力派監督の初期作品の中から、個人的に大好きなものを取り上げています。

  【動画未配信の映画】TSUTAYA渋谷のシネマコレクション(VHSコーナー)にあるような、動画配信がほとんどされていない名作の中から、個人的に大好きなものを取り上げています。

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