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【映画コラム】映画館という場所 、 ミニシアター・名画座という場所の存在

 
ミニシアター・名画座の存在が必要な理由

 緊急事態宣言の中、小さいミニシアターや名画座と言われる単館・小規模系の映画館にも休業要請が出され、特に都心やデパートなどの大規模施設内にある映画館は、休業に追い込まれています。今回は、短期間ということもあり、観る側にとってみれば、緊急を要する訳ではないですし、映画自体は動画配信サイトで見ることができるので、映画館に行くのを我慢することはそんなに難しいことではありません。また、非常事態ですので、一市民として協力したいとも思います。ただ、他の業種やエンターテイメント業界にも多いと思いますが、ミニシアターや名画座においても特殊で個別な事情があります。それは、特に利益優先の上映プログラムになっていない点です。もともと、急に人が押し寄せることは、比較的少なく、逆にそのことで、急に経営環境が改善する見込みが少ない業態であると想像できます。少しの休業要請が、存続の危機に繋がるのは、容易に理解することができます。

僕がそのことについて強調したい最大の理由は、ミニシアターや名画座の存在意義を、改めて昨年強く実感したからです。僕たちは、ある意味社会という現実の一部に安住するために、世界の一面しか見ないように生活をしているわけですが、映画館は、その息苦しさから僕たちを解放してくれるための最高の空間と言えます。そして、何よりもミニシアターや名画座が絶対に必要な場所と言えるのは、特に、何よりも、僕たちが見えていない世界や現実に偶然遭遇(体験)させてくる空間であるからです。それは、電子書籍が、確かに便利で、利用の頻度が増えたとしても、偶然手に取れる紙の本がある街の本屋やブックカフェ、図書館が必要なのと同じです。たとえ、世界の名画がオンラインで見られたとしても、絵ある空間を体験できる美術館が必要なのと同じです。特に、現代社会においては、検索エンジンの選好ありきの誘導ループの軌道から外れるために必要な偶然を提供してくれる貴重な空間です。そしてそのようなことは、僕たち人間が、人間らしく生きるために必要な活動であると僕は信じています。

日本ヘラルド映画


中学高校時代によく通っていたヘラルドシネプラザという映画館が、かつて名古屋の中心部に存在していました。その映画館のおかげで、映画を好きになることができ、多くの知らない世界を体験することができました。ヘラルドシネプラザは、シネコン型の映画館でしたが、ボーリング場やゲームセンターがあるレトロな映画館で、何よりもミニシアター(単館)系の映画がたくさん上映されていました。もともと、KADOKAWAにのちに吸収された日本ヘラルド映画の関連会社で、同じ関連会社の原正人さん創設のヘラルド・エース(現アスミック・エース)とともに、ミニシアターブームを牽引していました。ミニシアターが、減少すればそれだけ偶然遭遇する世界や現実が減ることになります。(旧ヘラルドグループの映画館は、伏見ミリオン座、センチュリーシネマ、恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座などに引き継がれているようです。)

  学生の頃当たり前のように存在していた名画座の早稲田松竹が一年間休館した時にも感じたことですが、生活の一部、人生の一部として必要になっているミニシアター・名画座が、これからも存続できるように願うとともに、少しでも、応援できたらなと思います。

以下は、昨年偶然で遭遇できた映画の作品の中で、特に心に残っている映画です。


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映画館の思い出

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