12.抗がん剤と副作用と葛藤

 この時期、腫瘍マーカーCEAの数値は、8.2と再び上昇傾向にあり、希望する薬「タグリッソ」が期待できなくなり、替わりに「アリムタ」と「カルボプラチン」という薬剤を点滴するという話で経過観察のため、一週間ほどの入院となりました。
投与後のレントゲン撮影の結果は数日で以前より腫瘍は小さくなっていましたが、最初の「ジオトリフ」の時とは違う副作用として、悪寒、10秒間隔で数時間にも及ぶ辛い「しゃっくり」の繰り返しで、段々と胸のつかえから吐き気、食欲不振、そして倦怠感へと繋がっていき、体調不良の日々を過ごすことになりました。

一方、福岡のフジ養生クリニックでの特濃ビタミンC等を中心に免疫力の向上に向けた点滴と、いつもの先生との会話による励まし、心のケアによって、その後の数日間は不思議に行動ができる状態を保つことができていました。また、同時期には大学時代の下宿での友人の紹介で鳥栖市にある重粒子ハイマットのセンター長にも診断と今後の治療のあり方を聞く機会を得ることができ「今の新たな2種類の薬で効果は出ている状況。また次の段階で「ジオトリフ」の再使用も考えられる。肺以外の他臓器への転移がなければ重粒子線治療も可能」との見解を頂いたのですが、この時点では残念ながら私の身体には他の部位(脳と骨)等への転移が存在していました。
その後、同センターを訪れる機会はありませんが、治療実績も積み重ねて公的保険の適用部位箇所も徐々に増やされてこられています。結局A病院での「アリムタ」等による治療はマーカー数値の一時的低減効果はあったのですが、厳しい副作用による体力の低下と再びの薬剤耐性により半年間6回程の短期使用で終了となりました。

 副作用も人それぞれに異なり、その強弱も各人で違います。それは脱毛、倦怠感、腎肝機能障害、出血、白血球減少、そして間質性肺炎など全身の様々な箇所でみられます。辛いのですが、何ら処置をしなければ私は短い余命となるでしょう。それを選択する余地はないので厳しい抗がん剤に頼るのですが、その苦しみは何とも言えないものがあります。「真綿で首を絞められる」と言いますが、じわじわと身体に忍び寄り、体力が落ちていくさまを実感します。そのように副作用で苦しみ床から這い出ることも困難な時に、他の人から励ますつもりの言葉なのでしょうが、「病は気からです」とのメール着信。常日頃はその言葉も糧に過ごし、また自分が頑張っている時に「頑張って」と応援されるのは私自身励みとなったのですが、その言葉を超越した苦しい環境状態の中で言われると、私の気持ちは「感謝から怒り」へと変わります。精一杯、病に対し頑張っている人に、次元の違う言葉は如何なものでしょうか。苦しい状況の患者に対するありがたい励ましもTPOと言葉を考えて欲しいものです。その他の言葉が見当たらないのですが。

 癌は死の前に抗がん剤との戦いとなります。A病院の担当医には抗がん剤の減量を申し出るのですが「規定の量を使用する」と何度も断られた経緯もありましたが、副作用の状態で量を調整し、またはその他の薬剤で補うことも可能かと思います。患者の気持ち、体調を聞き入れるかどうか、いろいろな考え方もあるのでしょうが、医師の裁量の問題かと感じます。

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