たけトンボ(ステージ4肺がんと暮らす)

たけトンボ(ステージ4肺がんと暮らす)

最近の記事

26.マーカー上昇

 2018年8月には腫瘍マーカーの数値はCEA117(前回88)、シフラ10.1(前回8.4)と、また高くなってきました。「キィトルーダ」再開後3回目(計7回)を終了しましたが、相も変わらず、倦怠感、咳は続いています。 また癌細胞にしか存在しないネオアンチゲンをターゲットとした癌免疫療法が可能かどうかを調べるとのことで、同意し、A病院にてCT検査がありましたが、結果として、治療は不可とのことでした。以前の生検した細胞で調べられたのか、詳しい説明もなく不明です。  この時期、

    • 25.整える

       一方この頃から毎月2回程のペースで友人の紹介もあり、アメリカ等でも研修を受けられ多くの患者さんを抱えられている「カイロプラクティック」の西先生に自宅まで来て頂き、家内とともに施術をしてもらうことになりました。 「カイロ」は西洋医学を基礎として、アメリカで発祥した手技療法で、身体の歪みなどをもたらす、大元の原因を探して矯正し、身体の回復能力を引き出す効果もあり、私自身4年以上に及ぶ施術で、自分の体調維持とともに、心の維持にも有効と感じています。一方「整体」は主に東洋医学を基礎

      • 24.キイトルーダへの挑戦

         この時期、A病院では、免疫チェックポイント阻害薬の「キィトルーダ」を3週に一度のタイミングで点滴投与することになりました。 腫瘍マーカーであるCEAは32、シフラは4となっています。 しかし残念ながら最終的には4回のみの投与で中断することになりました。それは投与後の副作用として、息切れが激しく、また長い期間、咳が止まらず続き、それとともにホルモン分泌異常も生じ、甲状腺数値が0.01(基準値は0.5~5)と低く、代謝の低下で倦怠感も酷くなり、内分泌専門医の診察、治療を受けるこ

        • 23.脳幹転移

           3年目の最初の変異は8月に脳幹部分に、4.5ミリ及びその周辺に3ヶ所の新たな腫瘍が発症し、脳への圧迫も生じていることが熊本での定期検査で判明しました。 脳幹は生命、生活維持の根幹にかかわる大切な箇所であり、手術も困難との説明もあり、これまでの脳腫瘍治療期間よりは長く、早々に翌月から熊本放射線外科にて10回程の治療をスタートすることになりました。  まずは私の顔、頭部に合わせたマスク作りから。それはフェンシングの競技で使用するフェースガードのようなメッシュ模様となっており、

          22.3年目の出発

           悪戦苦闘の丸二年を経過。2017年8月3年目のスタートです。この一年もまた色々な波が押し寄せてくるのでしょう。あと半年位は何とか生きていられる自信はあります。でもこれから一年になると、誰かが頭の中で「無理、ムリ」とつぶやいているのです。  強い倦怠感と共に、身体的にも中々、先々の計画を立てづらい毎日を送っていました。    当時の手帳には「与命を生きている。私は常に頭のどこかで「死」を考えている。街中の健康な人は「生」を考えているだろう。その違いくらいで、どちらが先に亡く

          21.福は内、鬼は外

           これまでの7年数カ月の間、私の心を癒し、穏やかにしてくれたものの一つには家族や友人達との旅があります。  病になる前は仕事を休んでの旅行など考えもしなかったこと。せいぜい休日を利用する小旅行以外は実行する心の余裕さえも持っていません。 しかし与命がいつまでか、残りの時間が有限であることを考えると時間の使い方、作り方に変化が生じ、できうるなら自分のやってみたいこと、未知の領域に触れたいというこれまでにない生活スタイルを取り入れる必要性を強く感じるようになってきました。  

          20.限りなき備え

           まだまだ準備不足の点がたくさんあるのでしょうが、肝心なことは本、ネット等で癌という病(向かい撃つ鬼の本性)を少しでも知ること、そして良い治療法を選択していける目と病に立ち向かう心の準備を少しずつでもできるようになるような気がします。  現実には度々の体調不良や言葉による失意などで心も落ち込みます。 それは時には夏の初めの僅か10日間程の命で短い命を閉じる蛍に。 そしてまた夏の終わりに、ツクツクボウシの鳴き声を聞き「まもなく最期を迎えるであろう」とそれらに我が身を重ねて過ご

          19.クリスマスに西本願寺

           また大好きな町、京都を訪れた折には、何故かキリスト教のクリスマスの日に我が家の宗派である浄土真宗西本願寺様より「釋(しゃく) 値(ち)真(しん)」というありがたき法名を頂きました。 「入涅槃門値真心必獲於信喜悟忍」の一文から頂いたもので涅槃の門に入りて、真心に値へばかならず信、善、悟の忍を獲。大変難しいのですが、七高僧の一人、善導大師の明かされた教えを讃嘆されたものとのことです。 生きているうちに次の世の名前を知るのも不思議な気持ちですが、これも準備の一つと考えていたことで

          18.家族へ託す

           息子達を含め家族にも手紙を書くべきかと考えるのですが、何を伝えるべきか。私としては常日頃からコミュニケーションは取っているつもりなのですが、各々に頑張って人生と向き合っている様子。 敢えて言うなら、「健康で、仲良く、それぞれの道を進んでほしい」との思いです。私が考える準備は90パーセントほど。残りを埋め、万全となると、すぐにでも、そこに別れの日が来そうで敢えてそこを埋めることを避けているような気がします。 またコロナ禍でなければ、通常の通夜葬儀にも多くの方達が弔問して頂ける

          17.母への手紙

          さて、私の最初の準備は、母への手紙です。 父を亡くし80代後半となっても一人で炊事、近場への買い物なども難なくこなしていました。もし私の癌の病のことを伝えると、おそらく人一倍心配性の母は、日夜、仏壇に向かい、更には夜も眠れない日々を送ることになるであろうと思われ、それ故、母には私のことは内緒にすることにしました。 しかしある日に私の命が尽きたときに「何故話さなかったのか」と残る家族を責めることになるのではと不安になりました。そこで私は最初に母宛の手紙(それを遺書というのかも

          16.心の準備

           癌は他の急性期の病と比べ、心の準備(大変難しいのですが)身の回りの準備などにある程度の猶予時間を持つことができます。(その間に何とか鬼から逃れようと努力をします) ピンピンコロリを理想という方も多いようですが、それはある程度の心の準備と周辺の準備が既に整えられている方ではないでしょうか。働き盛りの人が何ら家族に対し言葉も残すことなく突然に朝、布団の中で亡くなっていた等々、本人もさることながら周囲の方達の心境はいかばかりなものでしょう。 一方で癌はそれなりの猶予時間に準備

          15.標準治療

           標準治療とは安全性と有効性が臨床試験等でしっかり証明された推奨レベルの最も高い最良の治療とされており、大半の病院の中で医師たちはこの基準を守り外れることをタブーとする体系の中で仕事をされています。そして多くの患者達も救われています。しかし医者達は何度となくこの標準治療だけでは助けることに限界があり、目の前で自分の患者の死を見守ることもあったであろうと思います。特にまだ未知の分野が広がる癌治療においては。「標準治療は終わり、もうあなたにはすることがないので次のホスピスへ」確か

          14.丹毒と肺炎

           抗がん剤の使用による副作用は各人で部位や出方が違うことを述べましたが、毎日の生活の上で感じる様々な自覚的違和感とは別に、自覚しにくいところで白血球の減少、ホルモン分泌の異常など採血等の検査をして初めて分かるものもあり、徐々に身体に影響を与えてきます。  この年2017年1月には私の身体に異常が生じました。高熱とともに倦怠感とリンパ痛そして、右眼が腫れ、塞がる状態となり、A病院の休日外来を訪ねましたが、初日は待たされた上に解熱剤を渡されただけの医師対応で帰宅。翌日も我慢できず

          13.脳腫瘍

           2017年1月にはA病院でのMRI検査で脳に2ミリから5ミリの腫瘍が3か所に再発との診断です。私は勝手に肺腫瘍を主たる鬼と思い込み、またこれまでの薬剤により肺以外の脳など他の腫瘍も同時に良くなるものと思い込んでいました。しかし脳にも、また骨にも別の鬼が住み着いていたのです。 フジ養生クリニックの藤本先生からは「放っておいたら、肺より先に脳腫瘍で死を招くことになる」と告げられ、その旨をA病院の担当医師に伝えると、「えっ、脳も治療するの」という驚きの返答に啞然。この医師は専門で

          12.抗がん剤と副作用と葛藤

           この時期、腫瘍マーカーCEAの数値は、8.2と再び上昇傾向にあり、希望する薬「タグリッソ」が期待できなくなり、替わりに「アリムタ」と「カルボプラチン」という薬剤を点滴するという話で経過観察のため、一週間ほどの入院となりました。 投与後のレントゲン撮影の結果は数日で以前より腫瘍は小さくなっていましたが、最初の「ジオトリフ」の時とは違う副作用として、悪寒、10秒間隔で数時間にも及ぶ辛い「しゃっくり」の繰り返しで、段々と胸のつかえから吐き気、食欲不振、そして倦怠感へと繋がっていき

          11.新薬

           2016年、前章で述べたように「ジオトリフ」は残念ながら薬剤耐性により効果は薄まり次の薬として、分子標的薬「タグリッソ」を希望しましたが、使用するに当たり私が該当するかどうかを調べるとのことで、A病院で気管支鏡検査にて肺の細胞を採取することになりました。 病室で麻酔を打ち、手術室に移動。すぐに手術台にて口から器具を押入されたのですが、苦痛とともに「何かおかしい。心臓付近が痛むと感じ、効くはずの麻酔が十分に聞いていないのではないか。」と声を振り絞ってこの異常を訴えました。その