2016年、前章で述べたように「ジオトリフ」は残念ながら薬剤耐性により効果は薄まり次の薬として、分子標的薬「タグリッソ」を希望しましたが、使用するに当たり私が該当するかどうかを調べるとのことで、A病院で気管支鏡検査にて肺の細胞を採取することになりました。
病室で麻酔を打ち、手術室に移動。すぐに手術台にて口から器具を押入されたのですが、苦痛とともに「何かおかしい。心臓付近が痛むと感じ、効くはずの麻酔が十分に聞いていないのではないか。」と声を振り絞ってこの異常を訴えました。その後医師たちが周りに集まる気配を感じつつ次に目を覚ましたのは、どのくらい経った後だったのでしょうか。私はICU(集中治療室)のベッドに横たわっていました。病室で待機していた妻も看護士からの異常があったとの連絡に驚き、詳細も判らず不安になり、近隣にいる次男や義妹などに連絡を取ったようで、私はまだ麻酔から覚めやらぬ眼差しで、集まってくれたそれらの顔をぼんやり眺め「何事が生じたのか」との思いとともに今頃効いてきたのか麻酔の影響で再び眠ってしまったようです。
後ほど話を聞いてみると私の「心臓が痛い」という言葉に循環器科の先生が呼ばれ、心臓に何らかの異常が生じたものかと判断し、太ももからカテーテルを押入し、心臓までの血栓の有無を調べたとのことでした。先生からは「どこにも異常は見つからなかったけれど、どうされたのですか。」との質問に「麻酔が効いてなかったのか、口からの器具の押入に嗚咽の苦しみとともに胸が痛かった。」との話をすると「緊張と痛みで自律神経が乱れたのでしょう。一晩ICUで過ごしてください。」とのことになりました。この時の入院は3日間の予定が5日間となり肝心な細胞採取という目的も達成しないまま終わりました。

その後しばらくして「再度生検をする」旨の連絡がありましたが、先日の件もありトラウマとなった私は、当初は拒否の表明をしました。しかし「今度は背中から、目を閉じてもできる先生が、目を開けて行うので大丈夫です。」という冗談のような提案があり、私は痛くないのであればと承諾しました。私は、何の根拠もないのですが、新しい薬であり、効果があり、副作用もさほどないのではと勝手な思いで次の薬として「タグリッソ」の服用希望を強く医師に伝えていました。
「CTガイド下生検査」という手法で、CT画像で確認しながら、皮膚表面(今回は背中)から針を穿取し肺の一部を採取する方法で3日間の入院により無事終了しました。
しかし、その検査結果は「EGFR陰性」とのことで、この新薬の使用は「不可」との結論となりました。
私としては、一大決心をして臨んだのですが、残念な結果となりました。

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