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土地を個人に、建物を法人に売却したケース

(建物を法人に移転するときの注意点)
https://note.com/takeuchiasset/n/n6d401cd101ca

の続きです。

今回の取引では、ある物件を土地と建物に分けて売買しました。

取引自体難しいわけではないのですが、とても手間がかかりました。

まず、なぜ買主は土地と建物を分けて購入したのかといえば、それは個人に賃料収入を集中させないためです。

下記、計算過程は本題には関係ありませんので、省略して読み進めていただいて結構です。

年間600万円ほどの賃料収入が得られる物件なので、GPI600万×{1-(空室損+OPEX)20%}=NOI480万。減価償却が年間約200万なので、280万が課税所得。実効税率25%すると、税金は年間70万が税金。つまりATCF=410万円。4年間×410万=1650万。5年後には減価償却が切れ、税金は120万になるためATCF2=270万。6年間×270万=1620万。

だいたい10年間で3200万ほどキャッシュが溜まる計算になります。賃料下落や修繕コストの増加、大規模修繕の必要性、空室率増加などは簡略化のため省いていますが、実際に物件を購入検討される際は細かく算出しましょう。

キャッシュが溜まるのは嬉しい一方で、現金が溜まった分だけ課税評価額が上がり、(対策をしなければ)相続税をその分多く支払わなくてはならなくなります。

そのため資産管理法人を設立し、賃料収入が法人に集まる仕組みにしました。

特に買主がご高齢の場合は、この手法は大変有効です。

ここで取引上で大変だったのが、土地と建物の価格を建物引渡時までに確定しなくてはならないことです。

内訳は固定資産税の按分で決めるのが最も容易ですが、なにせ都心の築古アパートなので、土地:建物=94:6と建物割合が極端に低く、固定資産税按分はベストな選択肢ではありませんでした。

根拠なく建物割合を大きくすると税務署から指摘を受ける可能性があったため、不動産鑑定士に不動産鑑定評価を依頼しました。

それでも6%→14%に上がった程度でした。固定資産税評価で按分した場合と大きく変わらなかったので、鑑定士と相談して鑑定費用を割り引いてもらっちゃいました。これは特別です。

築古でも大規模修繕や耐震補強を行う場合は、建物評価額を上げる根拠になりえるのですが、時間的制約があったため今回はそこまでできませんでした。

さらに神経を消耗したのが、法人設立と法人口座開設に時間がかかることです。

法人設立は慣れているので1週間~10日間程度の認識で問題ありませんが、三菱UFJ銀行で口座開設しようとすると、法人設立して(履歴事項全部証明書を提出)から2週間丸々口座開設に時間がかかります。

しかも、「お約束はできません」みたいな曖昧な返事なので、気が気でないわけです。

特に今回は抵当権の抹消が絡んでいたので、期日までに決済を行うには全く時間の余裕がなく、一つのミスも許されない状況でした。

そして、法人口座で振込する際に気を付けてほしいのが、銀行により待ち時間が全く異なることです。

みずほ銀行の口座から抵当権抹消のために銀行に振込みしようとしたら、「90分待ち」と言われました。どの銀行よりも長いです。

その時、時間が13:00を回っており、15:00の着金に間に合わないかもしれないということで、急いでタクシーで別の支店に移動し、なんとか所有権移転まで無事に終えることができました。

みずほ銀行に限らずですが、以前より送金手続きに時間がかかることが増えたように思います。東京シティ信用金庫は、売買契約書の提出を求められました。

決済はこのようなトラブルを念頭に少し早めにスタートします。

今回のようなトラブルを経験すると、12:00スタート+みずほ銀行+法人口座の組み合わせは恐くてできないです。遅くとも11:00スタートにしましょう。

一方、ネットバンキングを利用する場合は、前日に送金金額の枠を上げる手続きが必要ですが、窓口で振り込むよりもよっぽど早いです。早いと30分で決済が終わります。

最後に売主買主間で引き渡す領収書ですが、これも土地と建物を別にしている関係でその分多く領収書を作成しなくてはなりません。

明確に項目と金銭を分けておかないと、確定申告や決算の時にごちゃごちゃしてしまうからです。1取引に買主が2者いるため、1物件でも名義や金額が異なり、何度も間違えたりして領収書の作成が結構手間でした↷

振込依頼書を記載するときも同様ですね。2名同時に書き方を説明しなくてはならないので、労力2倍です。

手続きが単純2倍になり、名義や金額が微妙に異なるのもミスを誘発します。

更に税金が大きく関わる取引なので、不動産経験が浅い会社や担当には任せない方がいいですね。仮に仲介手数料が安くなったとしても、それ以上の損失を被る可能性が大いにあるからです。



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