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インフィニティ・プール(2023)

ブランドン・クローネンバーグ監督の長編3作目となる「インフィニティ・プール」を観た。

孤島の高級リゾートを訪れたスランプ中の作家ジェームズは、裕福な資産家の娘である妻のエムとともに、ここでバカンスを楽しみながら新たな作品のインスピレーションを得ようと考えていた。

ある日、彼の小説の大ファンだという女性ガビに話しかけられたジェームズは、彼女とその夫に誘われ一緒に食事をすることに。意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。それが悪夢の始まりになるとは知らずに…

最近よく見る"ダメ男"映画で、ジェームズは作家とは言っているが、妻の父親のおかげで一冊だけ本を出版してもらったものの、鳴かず飛ばず。いつまで経っても二冊目が書けずに、妻のお金で暮らしている。そんな捻くれた男が「あなたの大ファンなの!」と声をかけられたのだから、そりゃあ、もう。

この孤島では、犯罪を犯すと即死刑になってしまうが、リゾート観光客のための"素晴らしい制度"があって、どんな犯罪を犯そうと観光客は大金を払えば自分のクローンを作って、そのクローンを身代わりとして死刑に処すことで罪を免れることができるのだ。

敷地外で図らずも地元民を轢いてしまったジェームズは、この制度で自分のクローンを作って、クローンが死刑にされる姿を目の当たりにする。クローンは作られた時点の記憶や感情もそのままコピーされるので、本人と全く同じように必死で命乞いをしながら殺されていく…

「旅の恥はかき捨て」とばかりにリゾート地でやりたい放題に犯罪を犯し、金の力で全て解決。そんな富裕層と、その金で生活する地元の人々。

本人と全く同じに作られたクローンと本人は、その瞬間には同一人物なので、どっちが死刑になっても、殺されていく人間とそれを眺めている人間は等しい。

海辺のリゾートの「インフィニティ・プール」に入って海を眺めていると、プールと海との間には境界線があるのに、その境界線があることを忘れ、自分はその狭いプールという限られた世界にいるのに、外の広い世界とつながっているように勘違いしてしまうのだ。

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