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イノセンツ(2021)

エスキル・フォクト監督の2021年作品「イノセンツ」を観た。第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、地元ノルウェーではアマンダ賞で4冠。世界の映画祭で16映画賞を受賞したというサイキック・スリラー作品。

緑豊かな郊外の団地に引っ越してきた9歳の少女イーダと自閉症で口のきけない姉のアナは、同じ団地に暮らすベン、アイシャと親しくなる。ベンは手で触れることなく小さな物体を動かせる念動力、アイシャは互いに離れていてもアナと感情、思考を共有できる不思議な能力を秘めていた。

それぞれに訳ありな家庭環境で育つ4人が自分たちに備わった不思議なパワーを遊び感覚で使っているうちに、その能力はどんどん強まり、恐ろしい影響力を持つようになる。育児放棄により歪んだ精神を持つベンが他人を自在に操れる能力の発達と共に起こす暴走と、それを阻止しようとする他の子供たちとの静寂の中の(超能力による)闘いは観る者を圧倒する。

大友克洋「童夢」のオマージュと言うにはそのまんま過ぎる映画後半の団地、子供、超能力の表現が良くも悪くも気になるところが本作最大の特徴。「童夢のまんまやん!」って半分怒りが湧きつつも、「童夢がついに実写化された!!」という感慨深さもあり、ワクワクしてしまうのも事実だったり。

4人の子役たちの演技がとにかく素晴らしく、「童夢」まんまだと思いつつも超能力が発揮される場面の(大袈裟な特撮に頼らない)演出は見応え満点で、ノルウェー郊外の醒めた印象の風景と共に強い印象を残す。再見したくなる魅力に溢れた作品です。

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