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大前研一 名言集 『ロウアーミドルの衝撃』(13)

『ロウアーミドルの衝撃』(13)

「自分のことを中流」と考える日本人が、かつて多く存在しました。私自身もその一人でした。

しかし、いまや上流と下流だけといった二極分化の様相を呈しています。

派遣社員の首切り、正社員の激減、給与、賞与の大幅削減など従業員には逆風が吹き荒れています。

そうした現況を踏まえて、ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』です。

現実から逃避せず、現実を直視し、少しでも明るい未来像を描けるようになりたいものです。
 
 

私は日本の価格が高いのは、九割は政府と業界に問題があるが、残り一割は消費者の側の偏見に問題があると考えている


私は日本の価格が高いのは、九割は政府と業界に問題があるが、残り一割は消費者の側の偏見に問題があると考えている

まず偏見をなくし、「収入が下がっても、絶対に生活の質は下げないぞ」と決意して、規制の撤廃やむ無用な流通業者の排除を求めていく。

そして、インターネットを駆使して草の根を分けてでもよい製品を安く買ってくる。
 
そうした積み重ねによって、ロウアーミドルクラスでもじゅうぶんに豊かでゆとりのある生活ができるようになるはずだ。

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 1 〈283〉                     



根本的な原因は日本の市場の閉鎖性にある


世界的に見れば高収入なのにもかかわらず、日本のロウアーミドルクラスの人たちが豊かさを実感できないのは物価が高いからだが、その根本的な原因は日本の市場の閉鎖性にある

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 2 〈284〉                             
                                  
         







日本が海外に水田を買うことは、土地を輸入することにほかならない。海外に土地を買い、農地開発を行えば、それが食料安保になる
狭い国土で無理に農地を守っているから、日本はコメも高いし、地価も高いのだ


日本が海外に水田を買うことは、土地を輸入することにほかならない。海外に土地を買い、農地開発を行えば、それが食料安保になる

ベトナムで作る、タイで作る、アルゼンチンで作る、カナダで作る、オーストラリアで作る、というように分散すれば、安全性は格段に上がる。

将来的には、肥沃な黒土で知られるウクライナも有力である。

同国では品種改良によって、短い日照時間(四ヵ月)で収穫できるコメも開発されている。

こういう発想をせずに狭い国土で無理に農地を守っているから、日本はコメも高いし、地価も高いのだ。 

『ロウアーミドルの衝撃』 大前研一の名言 3 〈285〉                                                                     



➳ 編集後記

ロウアーミドル(中流以下)という概念を示しつつ、生き抜く指針を提示している本が『ロウアーミドルの衝撃』です。


🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。

Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。
あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。


大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います。私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。


➔ 大前氏の今回の言葉も、私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。

🔷 アルゼンチンの話が出てきていますが、アルゼンチンというと、FIFA W杯ブラジル大会が開催されているので、サッカー強豪国というイメージが、最初に思い浮かぶかもしれません。

スペインリーグのバルセロナでプレーするリオネル・メッシ選手や、アルゼンチンの英雄・マラドーナを生み出した国ということは
よく知られています。

また、アルゼンチン・タンゴも有名かもしれません。

しかし、大前氏は、私を含め大多数の日本人が知らない事実を教えてくれます。

それは、アルゼンチン産の牛肉は世界最高だ、というものです。

「えっ? なぜ?」

と思いますよね。

日本では松阪牛をはじめ「霜降り肉」が最高と云われています。

ところが、欧米では霜降り肉は脂肪が多すぎて体に悪いという、評価がされています。

つまり、海外では脂肪の少ない牛肉が高評価を受けているのです。

そのようにアルゼンチン産の牛肉は世界最高品質という評価を受けていますが、輸入されていません。

そのため、ほとんどの日本人はアルゼンチン産の牛肉を食べたことがないのです。

ですから、本当にアルゼンチン産の牛肉が、そんなに美味しいのか、確かめることはできていないのです。

もちろん、私も食べたことはありません。
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に、日本も参加しましたが、酪農業や漁業、医療などの分野で日米の歩み寄りが十分でなく、締結には至って
いません。

最終的に、日本は米国に押し切られてしまうのではないかと危惧しています。

杞憂で終わればいいのですが。



2022年5月現在、アルゼンチン産牛肉は制限付きで輸入されています。
いつから輸入されるようになったのかネットで調べてみました。

2018年7月に解禁になったようです。日本とアルゼンチンで相互に牛肉輸入が始まったという記事が見つかりました。


⭐ 参考になるデータは下記のサイトでご確認ください。


日本とアルゼンチン、相互に牛肉輸入解禁へ

この記事によれば、
「アルゼンチンのルイス・ミゲル・エチェベレ農産業相と齋藤健農林水産相は5月14日、東京都内で会談し、2018年7月にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されるG20農業相会合時までに、同国パタゴニア産牛肉・羊肉と日本産牛肉が相互に輸出可能となるよう必要な手続きを進めていくことで合意した」
ということです。

日本の当時の実情はどうだったのでしょうか?
「日本産牛肉はアルゼンチンの市場に初参入となる。現地では既に海外産の「さし」の入った牛肉に「KOBE BEEF」といった名称を付け、複数の現地高級レストランのメニューに登場しており、1人当たり年間60キロ近くの牛肉を消費する「牛肉愛好国」アルゼンチンにも和牛は高所得層を中心に知られた存在になっている。現地高級レストランのシェフに和牛の関心を聞いたところ、是非試してみたいといった前向きなコメントも早速聞かれている」


しかし、実際には日本とアルゼンチン政府が期待するほどには進まなかったようです。

次の記事をご覧ください。2021年の同じくJETROによるものです。

アルゼンチン政府、2021年末まで牛肉輸出の制限を継続


この記事によれば、
「アルゼンチン政府は6月23日、一部の牛肉部位の輸出を2021年末まで禁止し、その他の部位の輸出量を前年比50%までとする新たな輸出制限措置を発表した。5月17日に、牛肉の輸出を30日間停止した措置を代替する」

つまり、去年末までアルゼンチンは輸出制限をしていたのです。


⭐ 出典元: JETRO ビジネス短信



大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。




🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。

『企業参謀』(1985/10/8 講談社という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。

それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。

『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』(‎ 1986/2/7 講談社が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。






🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。



大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。

この元記事は8年前にAmebaブログで書きました(2014-06-13 21:56:11)。「新・大前研一名言集(改)」はかなりの量になりました。私にとっては、いわばレガシィです。
その記事を再編集しました。



✑ 大前研一氏の略歴

大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本経営コンサルタント起業家マサチューセッツ工科大学博士マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長[1]韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授[1]高麗大学名誉客員教授[1]、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役[1]、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長[1]等を務める。    (Wikipedia から)


大前研一氏の略歴補足

大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。

その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。

都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。
大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。










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