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円安、経済安保で日本回帰 敗れざる工場 2023.02.13 2/3




日経ビジネスの特集記事 68

円安、経済安保で日本回帰 敗れざる工場 2023.02.13 2/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

CONTENTS

PART 1 日の丸半導体、復権ののろし 盛り上がる国内投資経済安保が背中押す 

COLUMN 人材不足、細る物流、ハードルは多い

PART 2 九州シリコンアイランドで占う未来 TSMC特需に沸く熊本 経済効果は4兆円

PART 3 海外生産に勝つ国内強化策 令和版ものづくり改革 強み伸ばす3つの策

PART 4 ファナックに学ぶ国産哲学 「完全無人化」真の狙い ぶらすな技術信仰



第2回は

PART 2 九州シリコンアイランドで占う未来 TSMC特需に沸く熊本 経済効果は4兆円


を取り上げます。


国内製造業の復活の行方を占う「九州シリコンアイランド」が熱い。半導体受託生産大手TSMCの進出で特需に沸く熊本。人材も取り合いに。サプライチェーンを築き、人材を育てられるか。


PART 2 九州シリコンアイランドで占う未来 TSMC特需に沸く熊本 経済効果は4兆円

台湾のTSMC(台湾積体電路製造)とソニー、デンソーが共同出資して熊本に半導体製造工場を建設することが決まったことは、耳新しいことです。

この報道により、熊本の労働者の賃金が上昇し、熊本は大変賑わい、活気に溢れているということです。


TSMCが1兆円超を投じ、熊本県菊陽町に建設する熊本工場。
県内外から多くの半導体関連企業が集積し、
熊本に大きな経済効果をもたらしている
(写真=下:共同通信、右上:ロイター)
円安、経済安保で日本回帰 敗れざる工場 2023.02.13


建設中の熊本工場の概要を伝える記事がありますので、ご紹介します。

熊本県中部・菊陽町に建設中の工場は、24時間・3交代制で建設工事が急ピッチで進む。熊本の大自然・阿蘇連山を背景に、未完成の鉄骨群は圧倒的な存在感を放っていた。
この工場は、台湾積体電路製造(TSMC)子会社の製造拠点となる。敷地面積は約21ヘクタール(東京ドーム約4.5個分)もあり、2024年末までに稼働予定だ。スマートフォンなどに使われ、回路の線幅が10~20ナノ(ナノは10億分の1)メートル台のロジック半導体を月5万5000枚(直径300ミリメートルウエハー換算)量産する計画。TSMC子会社には、ソニーグループやデンソーも出資しており、投資額は総額86億ドル(約1兆1000億円)。同工場の雇用予定者は1700人を見込む。

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日本政府もこの半導体工場建設に補助金を投入することを公表しています。

「大きな経済効果・雇用創出が見込まれ、経済安全保障の要となる半導体には、今後特に力を入れる。この分野に官民の投資を集める」。岸田文雄首相は22年10月の所信表明演説でこう力を込めた。その言葉通り、政府として熊本のTSMC新工場に投資額の半分近い最大4760億円の補助金を投入する予定だ。国内生産拠点の再強化と、それに伴う地域と関連産業の再活性化。日本が目指す経済再生の姿が、ここ熊本にある。

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日本政府が1工場建設に対し、最大4760億円の補助金を投入することは異例の出来事と考えられます。それだけ重要なプロジェクトであることが窺われます。

ただし、製造する半導体は最先端半導体ではありません。4ナノとか2ナノといった極微細な半導体ではなく、現在需要の多い半導体の製造に限定されるようです。

米国でも半導体工場の建設がスタートしていて、こちらでは4ナノや3ナノの半導体を製造するそうです。


Yahoo! JAPAN ニュースに次のような記事が掲載されていました。 

12ナノ半導体を26年製造開始…TSMC「熊本第2工場計画」の詳細

台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県・菊陽町付近で検討する第2工場計画の詳細が明らかになった。2024年4月に着工し、26年末までの生産開始を目指す。主に回路線幅12ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体を手がける。米中対立がますます深刻化し、半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手にとって日本や米国の重要性が高まっている。第2工場の詳細が判明したことで、地元などでは早くも第3工場への期待が膨らみそうだ。

第2工場の規模はTSMCが現在ソニーグループ、
デンソーと合弁で菊陽町に建設中の第1工場と同程度になる。25年秋ごろに建屋が完成し、その後に製造装置などを順次搬入する見込み。 第1工場は建屋が23年内に完成し、24年末までの生産開始を予定。12ナノ―16ナノメートル、22ナノ―28ナノメートルプロセスを採用する。設備投資額は約86億ドル(発表当時の為替レートで約1兆円)で、そのうち日本政府が最大4760億円を助成する。第2工場への投資額も第1工場以上の規模になりそうだ。 日本政府は30年に国内で半導体を製造する企業の合計売上高を20年比約3倍の15兆円に増やす目標を掲げる。

TSMCの投資拡大はその目標達成に向けた大きな追い風となる。 TSMCは米国アリゾナ州
フェニックスでも半導体工場を建設中だ。第1工場は24年から4ナノメートル品、第2工場は26年から3ナノメートル品の生産を始める。ただ、現地の人手不足などから工事が当初想定より遅れているといわれ、TSMCとして海外で初めての最先端工場の建設に苦労しているもようだ。

ニュースイッチ 7/12(水) 11:20配信  


TSMCの存在は業界でどのように考えられているのでしょうか?

TSMCは、半導体業界で絶対的な存在だ。製造技術で世界最先端を走り、時価総額約60兆円は米インテルや韓国サムスン電子などの世界大手をしのぐ。22年12月期の売上高が約9兆8000億円、純利益が約4兆4000億円で過去最高を更新。中国による「台湾有事」など安全保障も踏まえ、初めて日本進出を決めたとされる。

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TSMCにとっての最重要顧客は米アップル

TSMCにとって最重要顧客とされるのはスマホのiPhoneを製造する米アップルだ。そのアップルにはソニーグループもCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーを供給しており、その工場が熊本にある。TSMCがこの地に工場を造るのはiPhoneが取り持つ縁だったのかもしれない。

TSMCは1月12日に、日本で2つ目の工場建設を検討すると表明した。工場の候補地は明かされていないが、半導体産業が集積する熊本も有力候補地の一つになるだろう。

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TSMCとの取引がある平田機工

半導体製造設備などを手掛け、TSMCとの取引もある平田機工は、熊本県菊池市の自社工場の増築に踏み切る。駐車場などに利用していた土地に、建屋と事務所棟(計延べ床面積約6000m2分)を建築中で、24年中に完成させる計画だ。

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熊本県外の企業も熊本に進出

熊本県外の企業も熊本進出の動きを加速している。半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンは、約300億円を投じて熊本県合志市にある工場敷地内に開発棟を建設中で、24年秋の完成を目指す。富士フイルムは熊本県菊陽町にある子会社の工場敷地内に半導体関連の研磨剤を生産する設備を新設する。熊本県によると、誘致に成功した半導体関連企業数は20年度に7件だったが、21年度は29件に増加。22年度は22年12月時点ですでに43件になっている。

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TSMCによる経済効果はどうでしょうか?

TSMCの経済効果はどれほどか。肥後銀行(熊本市)を傘下に置く九州フィナンシャルグループは、TSMC進出による県内への経済効果が22~31年の10年間で4兆2900億円に上るとの推計結果を公表した。

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私は経済効果という言葉の内容を信用していません。

その理由は、推計値をぶち上げますが、その結果がどうだったか検証されることがないか、公表されることがないからです。

検証されたり、公表される点については、私だけが気付かないだけかもしれません。

しかしながら、経済効果の推計はプロジェクトの規模によりますが、10年間ほどの期間を設定することが多いため、その間に多くのテーマが出現し、当初のテーマへの関心が薄れたり、忘れ去られることがあるからです。

仮に経済効果が検証されたり、公表されたとしても「そんなこともあったかな」という程度の受け止め方しかされないのがおちだからです。

そのような理由で、私は経済効果という言葉を信用していません。

話が横道に逸れたので、戻します。

雇用関係や賃金にも好影響

TSMCの熊本進出は、雇用環境や賃金にも好影響を与えているようだ。22年11月、熊本県内の有効求人倍率は1.43倍で、全国の1.35倍よりも高い。特に「半導体チップ製造工など」の有効求人倍率は、19年度が0.98倍、20年度が0.56倍だったが、TSMCが工場新設を発表した21年度は3.33倍まで跳ね上がった。

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新卒初任給28万円

新卒初任給28万円──。TSMC側がホームページに掲載した熊本工場のエンジニアの募集要項が、地元に大きな衝撃を与えた。23年春入社見込みの大学学部卒の新入社員の初任給は28万円、修士修了で32万円、博士は36万円を提示。熊本県が実施した調査によると、大卒技術者の初任給は500人以上の大規模事業者で約21万円。熊本県によると、県内の30人以上の事業所規模の1人月間現金給与総額(22年11月)の平均は、製造業が約31万3000円、全産業が約28万8000円。熊本のTSMC子会社の社員になれば、熊本県内で働く全世代の平均に近い給与を1年目で受け取れる厚待遇だ。

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賃金インフレですね! 働きたい人たちが集まり、人流が生まれることは好循環と言えます。

ただし、高賃金を支払える企業と払えない企業に2分されることは明らかです。


半導体の産官学連携も

TSMCの熊本工場進出を契機に、産官学が連携する「九州半導体人材育成等コンソーシアム」も22年3月に発足した。半導体産業を核に分厚い連携が動き出した。このスピードを上げ、研究開発を担う人材を育てていけるかが「九州シリコンアイランド復活」の成否を占うだろう。

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PART 2の最後で、日経ビジネスは次のように記しています。

日本経済は30年もの間、デフレマインドからの脱却ができず、国内投資や賃金も伸びない悪循環に苦しんできた。それを一気に、政府が目指す賃金上昇を伴った「良いインフレ」へと転換できるか。今の熊本はそのモデルとなる可能性を秘めている。

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次回は

PART 3 海外生産に勝つ国内強化策 令和版ものづくり改革 強み伸ばす3つの策

PART 4 ファナックに学ぶ国産哲学 「完全無人化」真の狙い ぶらすな技術信仰


をご紹介します。


🔷編集後記

今回の特集は、「Made in Japan」は復活するのかという課題とも密接に関係していると考えています。日本発の製品が再び海外に行き渡るのかというテーマでもあります。

企業の力、その源泉である個人の力を結集し、「これこそ日本製品だ!」という強い思いを取り戻したいと強く感じました。

TSMCの熊本進出が、地元熊本だけでなく、九州全体、周辺地域、さらに日本全体に好影響を与えることができるかどうか、しばらくの間、私たちは注視していきましょう。

日本の半導体産業が復活するかどうかという重要な課題でもあります。


海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。そうすると文献に当たることが必要になります。

日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。

もちろん、ロイターブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。

あるいは『日経ビジネス』『東洋経済』『ダイヤモンド』『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。

あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。

ロイター

ブルームバーグ

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