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「たった ひとつぶの涙を」

僕の大好きなお姉さんの病室には絵本がたくさんあった

だけどみんな「うさぎ」の絵本ばかりだった

いつも僕にいろんなうさぎの絵本を読んでくれたんだ

とても素敵な声で

そしてお姉さんが最後に読む絵本はいつも同じものだった

その絵本は「ビロードのうさぎ」


それは 

優しい 悲しい 物語だった

僕は いつも泣いたんだ

悲しくて 嬉しくて

そして

お姉さんはいつも 最後に泣いていた

塞がれていない 左の目 から

ひとつぶの涙を

きれいな 白いその顔に

たった ひとつぶの涙を



それは

だいすきな おとこのこのために

ほんとうの うさぎになりたかった

ビロードの うさぎのものがたり

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