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27・スメタナ「わが祖国」より「モルダウ」 友人アテネとスパルタの話


高校時代  体育の授業で「スメタナの‟モルダウ”の曲で 創作ダンスを作る」というのがあった。
そのとき、友人アテネとスパルタの組は、頭から黒のストッキングをかぶり(たぶん)、すごく個性的なダンスを作った。
私はこの2人の個性にはとってもかなわないと心底感心した。


そしてそれから35年後(今から十数年前)、アテネやスパルタたちと感激の再会の温泉旅行。子供たちが大きくなって やっと私たちにそのゆとりが出来たのだ。そのとき高校の先生をしていたスパルタの話が面白かった。


生徒「先生、オレたちのこと 好きだべ」
スパルタ「キライだよ」
生徒「え~~ うそぉ~ オレ達のこと好きだべ?」
スパルタ「だから キライって言ってんだろうが!」

生徒「先生、化粧くらいしてくれば?」
スパルタ「一応してんだけど・・・」

生徒「先生、この書類パソコンでやっといたよ」
スパルタ「いや~ありがとう! お前が卒業したら先生どうしよう?」
生徒「先生、また新入生が入ってくるよ。そいつらにやらせればいいよ」
(決して、スパルタに「先生、パソコンくらい覚えなよ」とは言わない)

生徒「オレたちの高校って、どうしてこう規則がきびしいんだよ。
他の高校のやつらなんて、気楽にやってるよ。」
スパルタ「お前、この学校に入る前、体験入学ってなかったか?」
生徒「あったよ」
スパルタ「そん時、うちの学校で変なかっこうしてるやつら、いたか?」
生徒「いなかった」
スパルタ「そうだろ。うちの学校は規則がきびしいんだ。そんなことも気付かず、この学校に入ってきたお前がバカなんだ。それがイヤだったら、他の高校に行けばよかったんだ。まっ、お前が他の高校受かればの話だがな。」
生徒「ちぇっ」

スパルタ「それに、ここは工業高校だろ。工業高校ってのは、機械がいっぱいある。ちょっとした気のゆるみが事故を起こすんだ。きまりを守る習慣をつけることが大事なんだよ。気楽にやってても事故なんか起こさない普通高校の生徒とはちがうんだ。」

―――すごい説得力。

スパルタ「私も、よく生徒が私のいうこと聞くと思うよ。まあ、演劇部でつちかった演技力かな?」

いや演技力なんかで人は動かせません。真剣に 本音で でもユーモアをもって子供たちと接するスパルタの心が伝わってるんだよ。


あまりの楽しさに、また会おうと約束した。
翌年は会えず、その次の年 年明けそうそう「三月○日、温泉を予約したから集まれ」と、スパルタからの指令が。


いや~ またもや しゃべった しゃべった。

アテネ「うちの亭主、仕事辞めたの言ったっけ?」
スパルタ&私「え~~~!? 聞いてないよ~」
アテネ「うち、この前会ったとき、亭主が仕事辞める辞めないで冷戦状態だったじゃん。そんなにイヤなら辞めろって言って辞めさせた。」
私「でも、アテネんとこって親戚一同でやってる仕事じゃなかったっけ?」
アテネ「そーだよ。だから、大変だった。で、今は母親と冷戦状態。
  でも、母親より、亭主じゃない?」

スパルタ「で、今は何してんの?」
アテネ「亭主が趣味で作ってるものを、息子と私でインターネットで出したらさあ 売れるのよ、これが。(アテネはコピーライターだしね)
で、それ仕事にしてる。私も仕事がんばってるよ。」
私「す、すごい!」


さらにスパルタの話の続き

スパルタ「今年、生徒が卒業でさ」
アテネ「どーだった?みんな卒業できた」
ス「できたよ」
私「えっ?中退する子いなかったの?」
ス「今年は、みんな、卒業できたんだよ!」

ス「2年のとき、高校やめて通信高校に入りながら好きなことやるって 
グダグダ言うヤツがいてさ。
『お前の人生なんだから、辞めてもいいけどな。
とりあえず、お前、親といっしょにその東京の通信高校見に行ってこい』
って言ったんだ。
行ってみたら、通信はやめる子も多くて続けるのがたいへんだってわかってさ。 学校やめるのは、あきらめたんだ。

そいつが、3年になって、またグダグダ言い出したから
『お前は、2年のとき、学校辞める勇気がなくてあきらめたんだ。
やめるならあのとき辞めてればよかったんだ。
今ごろになって、グダグダ言うの許さん。 ちゃんと卒業するんだ』
って言って全員卒業だよ」

私「すご~い! このご時世に 全員卒業とは!」

ス「卒業式の前、返事の練習したんだ。
『お前たちの親が、きょうの卒業式に、校長の話聞きたくて来ると思うか?
親は、お前たちの「はい」っていう返事聞くためだけに、忙しい中 仕事休んで学校に来てるんだ。その親に聞こえるように「はいっ」って返事しろ!
お前たちの後ろには在校生がいる、さらにその後ろにいる親に聞こえるように、おっきな声だせ ! 今から練習!』
『○山○男』
『はい』
『だめだ 声が小さい!遠くにいる親に聞こえないぞ。もう一回!』

私「すごいね。スパルタは、生徒の心に届くことが言える」
ア「それで、どーだった?」
ス「すごくよかった。
 まず 一番返事しそうもない子が、最初に大きな声で返事したんだ。
 後は、もうバッチリ。
 生徒も父兄もとっても喜んでくれて いい卒業式だったよ」


アテネとスパルタはちっとも変ってなくて、私たちは女子高校生のノリで
いつまでもしゃべっていた。

























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