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愛憎芸 #7 『LUUPでツーリング・土曜の体感時間を延ばす最善の方法』

 完全週休2日制のもとで働いていると、とにかく土曜日を充実させることに力を注ぐようになる。充実させるということはつまり、後から思い出したくなるような日にすること、そして仮に一人で過ごすとするならば、何より体感時間を延ばすことが寛容である。「え?!まだ〇〇時?!」という感覚は多大なる救いである。「楽しい時間はあっという間」というのは誰かといるときの話で、一人で過ごす時間は長いからこそいい。それは迫りくる月曜日への最大の抵抗になり得るから。その先にある決して長くない人生を一日でも長く生きようとする努力に似ているから。そう言いながら久々の幡ヶ谷「ウミネコカレー」に行き、幡ヶ谷から神山町のSPBSまで歩いた。意外とあっさり歩けるのは下り坂になっているからだろうか。

 さて、ようやくLUUPに乗った。友達が三軒茶屋~下北沢間の行き来に使用していたが、怖さもあってなかなか手が出なかったのだ。しかしながら、車よりは操作性楽に決まってるだろ、と思い直しとりあえず登録した。iPhoneのカメラも直ったことだし、免許証のスキャンが迅速だ。そう、前試みたときはiPhoneのリアカメラが壊れていて、免許証のスキャンに難儀し断念したのだった。時の流れは速い。

 試走である。富ヶ谷のロストロで久々のスペシャリティコーヒーを楽しみながら空きを探して、パルコに行きたかったので渋谷まで。奥渋の、いつも歩く道をキックボードで駆ける。まだ面白みが感じられない。センター街に入るととても乗れたもんじゃなくて、降りてキックボードを押す。道行くJDに「出た」と笑われる!こちらはテクノロジーだというのに!パルコのPOPEYEポップアップストアにお目当てのもの(THE ENDLESS TALKのグッズ)はなく退散。渋谷→下北沢間をLUUPで移動することも考えたが、井の頭線で秒なのでさすがにメリットがなく断念。 

 下北沢はすっかり変わってしまった、という話は何度もしたので割愛する。本当は唐田えりか主演の「の方へ、流れる」をK2に観に行きたかったが、なんとご本人が舞台あいさつに出席とのことで当然ながら満席、これも断念。よくぞここまで、戻ってこられた。大ファンだったのですもともと。

 B&BでZINE「VACANCE」を探す(今泉力哉監督の短編小説や島口大樹さんのエッセイ収録とのこと)が取り扱いなく、ここでも収穫はなく、久々にライトアップコーヒーへ行き、ブラックフライデーで半額になったコロンビアの豆を買った。スペシャリティコーヒー。家でコーヒー淹れるなら、わざわざインスタントなぞ選ばずにきちんと金をかけよう。最近のもの足りなさの要因の一つに、やっすいコーヒー、があると思うのだ。

 高円寺に行きたい。ここだと思った。下北沢から高円寺への直通電車はないのである。いや明らかにお高い買い物なのだが。LUUPで行くことにした。

 終わってみれば7キロを電動キックボードで走った。途中、環七や甲州街道が走行禁止区域だったり甲州街道の横断歩道がなかなか見つけられず、歩道橋のエレベーターにLUUPと同乗するなどあったが、小回りを利かせて住宅街を縦横無尽に駆け巡り、無事に高円寺へとたどり着いた。なにより東京の東側に住む私は、こうやってLUUPで移動でもしない限り、世田谷区や杉並区の普通の日々が営まれる場所の空気を感じることはなかっただろう。時折漂ってくるのは家の和食の匂いだった。そういえば関東に来てからほとんど自転車に乗っていなくて、だから日々の匂いを感じる機会が少なくなってしまっていた。こういう時に思い出される景色があることになぜか安堵した。それにしてもLUUPツーリング、楽しいです。ちょっとオススメ。

 高円寺の蟹ブックスで「今夜すきやきだよ」を買い、小杉湯に浸かって久々に温冷交互浴を3往復。北口のロータリーのベンチで父親が高円寺にいるかどうかの連絡の返事を待つ。連絡がこない。お茶の水まで戻り焼肉ライク。この街も大好き。まだ20時。一人で遊んだのは久々だったが完璧だった。浪費をしていないのも良い。焦燥感でざわつく心にすこしだけ与えた癒しの時間だった。

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