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日記;20230708 フランシス・ハ

 昨夜、映画特集が組まれているPOPEYEを購入、読みながらFilmarksに次々とチェックを入れていき、そういう安直なこともたまには良いのだと何を言い聞かせているのかという感じのことをしていた。最近のPOPEYE、なんか微妙だなと思うことが多かったのだけれど今年の映画特集はとても良かった。ミニシアターに着目したり、三宅唱と柄本佑に対談させたり、なんだか中の人の顔が見えるような感じもしたけれど、それも良い。愛しの菊川Strangerも載っていた。良い映画館ですよ、あなたの好きな監督の特集もきっと組まれることでしょうよ。

 そんなこんなで『フランシス・ハ』を観ようかと思ったしなんなら久々にチルアウトドリンクも購入して準備は完璧、なはずだったのに眠りについていた。最近のあるある。こういう時中途半端な時間に目が覚めて、腕が痺れていたりして金縛りを疑似体験する、というかこれが金縛りなのかもしれないな。結局、11時過ぎくらいに起きて『フランシス・ハ』を観た。主人公は27歳、わたしと同い年、っていうかグレタカーウィグやん。グレタカーウィグ『ストーリーオブマイライフ』はまだ富山にいた頃、緊急事態宣言が解除されてから初めて公開された新作映画の一つで、もう3年も会っていない富山の同期と一緒に見に行った映画だった。彼は洋画の王道作品を全て抑えており、大学時代に実はさほど数を見てこなかった私は圧倒された。そんな出会いはもうないと思ったから、あれは奇跡的な出会いだったのだ。そして2人とも、「良い映画だった」と言える映画で幸せだった。イオンの映画館の帰り道、富山の国道を走る、その助手席。通常より長くなった研修期間、富山での暮らしもようやく終わるという期待と焦燥感とともにみたあの映画のことを時折思い返しているが、そういえばグレタカーウィグは俳優もしているのだった。

 周りが大人びていく、というか明確に大きな流れの一部になっていく中で足元が浮遊していく感覚であるとか、フランシスの恋愛についての考え方であるとかがまんまいまの自分で、あちゃ〜この映画が刺さる27歳になってしまいましたか、とテヘペロ、という古い言葉を用いてみたりした。恋愛は「瞬間」のことでありそれ以外は何もいらない、ってまんま自分の考え方で、だから恋愛がうまくいかないのだよな〜と思ったらフランシスがセリフでそう言ってました。もう長いこと人を好きになっていないけれど、またそういう「瞬間」は訪れるのでしょうか。そんなの期待しているうちに死んでしまったらそれはそれで嫌なのだけれど、つくづく人生の目的が「最高の景色を見ること」であるよなあと思って、ロマン主義否定派の友人が苦い顔をするところを想像する。

 映画を観ながらウーバーイーツでマクドナルドを頼んだが、配達員がやけに遠回りして、少し冷めたのが届いた。俺はUber Oneに入っているのに!とか喚きたいがこんな暑い中走り回る人たちにそんなこと言えないわい、そもそもなんか最近のウーバーイーツは配達優先ボタンみたいなのあるし、課金しないわたしが悪いのだ。

 しばらくダラダラして、小説のプロット作り。書きたいテーマは決まっているし最初の300文字も書けたのだが物語だけが依然浮かんでこずう〜ん外に出よう、と思った頃には16時。奥山由之さんの個展が今日までだったことを思い出して慌てて準備する。最近は土曜の夕方に外出することが多い。

 滅多に降り立たない六本木の地に降り立つ。全部がギャラ飲みのためのお店に見えるなあ、と思っていたらハードロックカフェの本店みたいなのがあって、ギャラ飲みではないなあと思う。それにしてもアウェイな街だ。

 奥山さんの個展は「窓」がテーマで、西洋では窓は開放のイメージだが日本では閉めるものでそこに違いがあるという序文が面白かった。それを踏まえて、彼が撮影した磨りガラスたちを見る。その奥にある生活はぼやかされ、それこそ今わたしが書いている「他人の人生を全て見ることができない」という主題をまた反芻する機会となった。

 六本木ヒルズのビームスに靴を見に行ったが店員に怯えて退散した。私が?なぜ?六本木〜麻布十番を散歩する。意外にも人が暮らしているであろうマンションやキャンドゥのような廉価店も立ち並んでいた。一方でヒルズ近くのタワマンの麓にはモンクレールやバーバリーがあってウケた。あそこに住む彼らはどこで生鮮食品を買うのか。高級店で呪文を唱えると奥に通され、闇マックならぬ闇西友、闇成城石井、闇OKがあるというのか…他人の暮らしは、わからないことだらけである。

 六本木蔦屋書店がおもんなくてすぐに出た。新宿経由で初台に行って、フヅクエ。10ヶ月ぶりくらいで最近の生活の逼迫を思い知らされた。あくつさんがいらっしゃる日だった。コエドビールとカレー。おいしい!フヅクエは本を読むための場所となるよう様々徹底されているが、なによりごはんがおいしい!これはすごいこと。ずっとあってほしい。やっぱり初台フヅクエが大好きだよわたしは。河合隼雄『大人の友情』を読了。様々な感情を肯定してくれた。江國香織『ホリー・ガーデン』も読み始め、実は江國香織を読むのは初めてなのだがわたしのためにあるのですか?と思うほど好きな文体で、どうして今まで…となり、こちらはまだ途中。最近愛しのくどうれいんさんの選書本があったので買って(「フヅクエ文庫」)初台から新宿を、新宿中央公園を経由して歩く。クソでかい都庁が聳え立っていて、わたしは都会が好き、目の保養、と思った。珍しい人類。

拍手したくなっちゃった

 1人で歩きながらプロットの考えを巡らせ、とにかく「ある時間がなかったことになってしまった人」に寄り添える話を書きたい、とまた思いが固まってきた。ゆるり電車に乗って帰る。ラランドが「お母さんヒス構文」の実写化とも言うべき映像コントをYouTubeに載せていて、それが秀逸だった。日々の感謝を伝えてもヒスってしまうリアリティ!それを観て家路について、洗い物をして、河合隼雄さんの他の著作はないものか、と探したら村上春樹さんとの対談があるではないか!買わねばならぬ、買わねばならぬ。

 わたしは都会が好き、高い建物が好き、それが多ければ多いほど好き、安心する、うれしい。絶対東京にいた方がいいと思う。

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