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SFとの向き合い「SFマンガ傑作選」

最近SFがマイブームである。

元々読んでいたジャンルではあるのですが、SFに関しては掘っても掘っても新しい定義が見つかるのでもうキリがなくなりました。
そんな中で、どうせならSFに対する気持ちを整理して読む本を絞ろうとしていたところ、こんな本に出会いました。

手塚治虫、松本零士をはじめとするSF黄金期を彩った1970年代短編漫画の傑作選だそうです。
人によっては懐かしい名前かもしれませんが、20代前半の自分からすれば一周まわって目新しいものばかりでした。
アトムに至っては本編も見たことないのにいきなり最終回から見てしまいました。

まあアトムに関してなんとなくは知ってましたし、調べてみるといくつかの最終回が用意されてるみたいなので、順を追って楽しみたいと思います。

備忘録

ここでは、この本を読んで思ったことを簡単にまとめておきたいと思います。

SFは遊び尽くされた

この漫画を読むまでの自分は、SFというのは土台がないことが魅力なのだからもっと振り切ったものが読みたい、と思ってました。
しかしこの本を読んで、ざっと数十年のSFの歴史をさらったところ、どうやらSFに関してはもう無茶苦茶に荒らされ終わった後みたいです。
筒井康隆とか、SFって言えば何やってもいいと思ってそうなのが透けて見えてます。
しかもそういうのがまた面白すぎるからタチが悪いです。
僕たち世代はいったいどう楽しめばいいのか、まだ遊び方が残っているのなら探してみたいものです。

結構な頻度でロシア名が出てくる

ミハイロフ、イワノフ等々。
これはおそらく時代背景が理由にある気がします。
1970年代と言えば宇宙競争の真っ只中、東西冷戦の真っ只中。
SFに精通する人間であればロシア名に接する機会は多かったに違いありません。
そこで報じられる名前の響きのかっこよさに惹かれたのではないか、という自分なりの仮説です。

SF少女漫画の方が物語は美しい

少女漫画の核は「愛」なので、その土台としてSFが使われている、という印象を受けました。
逆に言えば、百パーセントのSFはぶっ飛びすぎて愛とかないです。
SFとひと口に言っても様々で、どの成分をどれくらいに割り振るかで作家性が分かれそうなところですね。

SFの好み

ここからは、この本を読んで判明したSFの好み、もしくは受け付けなかったところを論っていきたいと思います。

設定第一

自分がSFに期待していることは「新定義」です。
優先順位をつけるのであれば

  1. 設定

  2. キャラクター

  3. 物語

こういう順番になります。

ジョージ・オーウェルの「1984年」で一番面白かったのは「ニュースピーク」という政策です。
カート・ヴォネガットの「タイタンの妖女」で一番面白かったのは<徹底的に無関心な神の教会>という新宗教です。

SFの物語性は二の次であって、まずは目新しい世界と設定とオチを用意してくれ、というのが読者としての正直な本音です。

殺風景な絵であってほしい

先ほども述べたように、SFに関しては設定の奇抜さが見たいです。
逆に言えば、それ以外のものが見え過ぎてしまうと冷めます。

人の顔のズームアップとかはやめてほしいです。
細い線でキラキラな瞳とかサラサラな髪とかを描かれると気が散ります。
たくさんの協調線を使われると「うへ」と思います。

要するにSF少女漫画がちょっと受け付けなかったです。

SFマンガ傑作選BEST3

以上の観点から、この本を読んでのBEST3とその感想を簡単にまとめたいと思います。

  1. 筒井康隆「急流」

  2. 高橋葉介「ミルクがねじを回す時」

  3. 石ノ森章太郎「生物都市」

筒井康隆「急流」

たった8ページの短編漫画ですが、こういうものが読みたくてこの本を手に取ったといっても過言じゃありません。
時間の流れがどんどん早くなるという設定、淡々とした情景描写と移り変わり、そして無茶苦茶なオチ。
全てが癖に刺さるものばかりです。
特に好きだった描写は、早すぎる時間の流れの中で対面している二人が
「あのどちらさまで お顔がちらちらしてよくわからないのですが」
と言っていたところです。
朝昼夜の流れが早過ぎて顔が見えないという独特過ぎるセンスがたまりません。

高橋葉介「ミルクがねじを回す時」

ミルクという可愛い少女が世界の中心にいる物語です。
この年頃であれば一度は考えるであろう「自分が世界の中心説」ですが、本当にそうなっている世界で淡々と生きる少女が可愛くてたまりません。
最近のアニメ「スパイファミリー」の中でもアーニャというテレパシー能力者が出てくるのですが、これも可愛くて仕方ないです。
幼いながらに清濁併せ呑んだ子供がもしかしたら好きなのかもしれないです。
この漫画に関して言えばそんな生半可な話ではないのですが。
あとは、少しハルヒっぽさもありますね。
逆ハルヒといったところでしょうか。

石ノ森章太郎「生物都市」

世界が金属に溶けていく話です。
このいかれた設定を引っ提げながら、通り一辺倒で話を貫き通したのがすごく好きでした。
こういうのはお笑いの趣味とも似てくるのかもしれませんが、一つの設定で遊び尽くすのはたまらないものがありますね。

その他アトムの最終回や、宇宙戦艦ヤマトの作者である松本零士の短編も面白かったのですが、ここでは上記3作品を挙げさせていただきます。
ただ全部面白いのでおすすめですよ。
SF黄金期という呼称も伊達じゃないです。

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