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【感想文#6】キリストの受難を現代的に解釈してみた ~劇団四季 ジーザス・クライストを観て

劇団四季のジーザス・クライストを見て来ました。

ユダの密告で十字架にかけられ殺されてしまうキリストの最後の7日間を描いた作品です。

四季作品の中では、かなりマニアックかつかなりチケットが取りにくい作品らしく、四季ファンの弟が「今までで一番チケットを取るのに苦労した」と申しておりました。

宗教に関わる話なので、少しセンシティブかなと思いつつ、色々学びや気づきがあって個人的にはかなり面白かったので、思ったことを書いておきます。

ちなみに当方はキリスト教に対しては何の立場もとっていないことと、ここに書いていることはあくまで「劇団四季のジーザス・クライスト」という作品の感想であることを先に書いておきます!

また、話自体が「キリスト最後の7日間」という、ある程度知られた聖書上のファクトに基づいたものなので、あんまりネタバレとか気にせず書きますがご了承ください。


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4つ思ったことを書きます。


①意図せぬバズと民衆の一方的な盛り上がりにキリストは戸惑ったんだろうな

元々、私はキリストに対して「むっちゃすごい人!色んな良い話や奇跡で人心をつかんだカリスマ!」みたいな理解をしていました。(言葉が軽くてすみません)

が、観ている中で、キリストは「ザ・カリスマ」という感じではなく、本人が為すべきと考えることを淡々と為していた人、という感じがしました。

それを地道に愚直に続けていたら、彼の良さをわかる人が増えてきて、いつからか一気に思わぬバズりが発生した、それに戸惑っていたという感じに見えます。

例えば、劇中には、キリストに周りに民衆がわらわらと救いを求めて集まり、キリストが困惑する様子などが描かれています。

「キリストは何でもできる、何でもしてくれる」というように話が広がり、「何かしてほしい人(今でいうところのtaker)」が沢山集まったのでしょう。でもそれは、キリストの伝えたいことではないし、やりたいことではなかった。だから困惑したのではないでしょうか。

本当の意図を理解されないまま発言の一部を切り取られ
→拡大解釈されてバズ発生
→(バズ自体はまあ良いとしても)バズ内容が本意ではないので困る
というのは現代に通ずるものを感じました。


②為政者は宗教的カリスマが現れたらそりゃ困るよな

キリストが捕らえられ十字架にかけられた理由については、あまり考えたことはありませんでした(すごい人がいたら脅威か、となんとなく思う程度)。

が、劇中でキリストの登場に熱狂する民衆を見ていると、為政者としては、圧倒的カリスマがいたら確かに厄介&脅威だろうな、と感情的に納得できました。

宗教の「見えないものを信じる」という特性や「人を熱狂させる」という力は、国を統治する上では、「邪魔」「脅威」と感じる場面もあるのでしょう。

そういう意味では、現代でもいくつかの国で行われている「信教の自由の制限」の道理も一定理解できるような気がします(それが良いよね!とは思わないけど)。



③民衆の心は移ろいやすい。キリストは世論に持ち上げられ、そして最後には殺されたんだなあ


序盤は、民衆はずっとキリストを崇め奉り、熱狂しています。(同時に、本意ではない熱狂にキリストが戸惑っているのは先述の通りです。)

しかし、キリストは民衆の世論(その場の熱狂、の方が正しいかも)によって十字架にかけられ殺されてしまいます。総督のピラトがキリストを釈放しようとしたにもかかわらず、です。

民衆の不満はイエスが「ローマからのユダヤの解放」をちっともしてくれないじゃないか、という所のようですが、そもそもキリストは「ローマからユダヤを解放します!」なんて言っていません。

先ほどの話の繰り返しになりますが、おそらくキリストが勝手にカリスマ化され、伝聞の中で話に尾ひれがついて熱狂がうみだされたのでしょう。

「キリストは何でもできるし、何でもしてくれる!」「ユダヤを解放してくれる救世主だ!」となっていた所、そうではなかった絶望と裏切られたという気持ちが憎しみに代わり、「あいつを殺せ」といううねりになっていったんだと思います。

多かれ少なかれこのモデルは現代でもそうだよなあと感じます。怖い。怖いよね。



④密告したユダはそんなに悪い奴じゃないんじゃないか?コミュニケーション不足のベンチャーみたいな感じでは?

私は今まで、キリストを裏切ったユダのことを「金目当てでキリストを売ったむちゃ悪いやつ」と認識していましたが、劇団四季の舞台を見て認識が変わりました。

彼は単なる強欲な人ではなく、「今すべきはそれじゃないのでは?」というような疑問をキリストに対して持った真面目な人だったのでは、と思ったのです。

劇中では、キリストの行動に対してもどかしい気持ちを抱いているユダの姿が描かれていますし、彼は報奨金をもらう際には「お金はいらない」と強く言い受け取りを拒否しようとしています。

だからなんだか、彼は結構まじめに考えちゃうタイプ故に苦しくなってしまったんじゃないかと思ったりしたのです。


さらに言うと、「ベンチャー企業内のいざこざだったはずがえらいことになってしまった」というのもイメージに近いです。

キリストのメイン弟子は12人しかいません(十二使徒)。ラフに言うと、その12人で「キリストのトーク」というかなりの影響力を持つ人気コンテンツを運営してたんですよね。

今で言うところの、新進気鋭の伸びてるベンチャー企業みたいなもんなんじゃないかと思ったりするのです。
※表現が雑ですみません、気を悪くされる方がいたら申し訳ないです

で、そんな中急成長中のベンチャー企業の中で、キリストのやり方に不満があったのがユダです。色々な説がありますが、ぐぐってみると「ユダはキリストとの個人的関係が欠けていた」「キリストがローマを倒すと信じていたがそうではないと知って失望した」というようなことが言われています。

なので、コミュニケーション不足に端を発した、「向かう方向性の不一致」によるベンチャーの内紛みたいな感じでは、と思ったりしたわけです。

うーん、そう解釈するとなんだか身近な話に思えてくるぞ。

※福音書によっては「金目当て」と強く推察されるような書き方になっているものもありましたので、上記は一説に基づく推察です


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こんな感じです。

キリストのお話は、かなり昔のことかつ宗教というあまりなじみが薄いジャンルではありますが、現代に引き寄せて解釈してみると身近に感じられ面白かったです。

また、付け足すような書き方で申し訳ないですが、歌や演技素晴らしかったのはもちろんです!弟いわく「歌が難しい作品だから、かなりレベルが高い人たちが出演している」とのことですよ。


ちなみに、今後観劇したいと思われた方向けのコメントですが、歴史上(聖書上)のファクトを知らないと、内容理解自体が難しい部分があるかもしれません。

私は中高カトリック校で聖書について学んだこともあって割と大丈夫だったのですが、一緒に行った方は(とても賢い方ですが)「これ何してるんだっけ」ってなった部分も割とあったようです。

というわけで、観劇される場合、キリストの受難の経緯やキリスト周りの登場人物については、ちょいと予習することをおすすめします。


今日は以上です~!


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